WELLA
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1997年12月26日(金) 第6話 ホテルにて

ホテルは別世界だった。このホテルはカトマンズでも1〜2を争う超高級ホテルで、一泊の料金がカトマンズの人々の平均月収相当らしい。こうこうと シャンデリアが灯り 、お客は圧倒的に西洋人が多い。
現地の金持ちそうなカップルが入ってきた。女性の方は豪華なサリーを身に纏いアクセサリーをたくさんつけて、すまして歩いていく。さながらネパール版白鳥麗子である。
チェックインを待つ間、ぼーっとしていると佐藤浩市に似たマネージャが愛想笑いをしながら私の前を通り抜けていった。ほどなくウェイターがやってきた。佐藤浩市が手配した様子である。ウェイターは私より背が低く、上目使いに「ようこそ、当ホテルへ、マダム」といいながら私の前に飲みものの入ったお盆を差し出して来た。ウェルカムドリンクらしい。小さなコップに入って上にクリームとチェリーがのっているオレンジエイドである。
人でごった返すロビーで、立ったままウェルカムドリンクというも珍しい。女性だけにサービスされるものなのだろうか、サーにはドリンクが配られなかったようである。ストローでおとなしくすすっていると、準備ができたようで客室に案内される。まだ飲み終えていないので、部屋に持ち込んでもいいのかと聞くと、「勿論どうぞ、マダム」との答えである。コップを持ったままエレベータに乗り込む。
ポーターは終始「どうぞ、マダム」「ありがとうございます、サー」と、至極礼儀正しい。丁重に扱われてこそばゆくなる。

客室 はシンプルだが、壁に古い経典らしきものがかけてあったり、一輪差しに花がいけてあったりして心地よい。マリーゴールドと、針葉樹の小枝が挿してある。そういえば昔高校にヒマラヤ杉という種類の大木があったけれど、これがそうなのだろうか。などととりとめのないことを考えたが日本はもう真夜中である。今日はお風呂に入ってもう寝ることにしよう。

バスタブにお湯を張る。薄茶色である。
洗面台の蛇口をひねる。薄茶色である。
洗面台に水差しがおいてある。沸かして漉した水だという。コップに注いでみる。薄々茶色である。さすがに口に含む気がしない。機内食のミネラルウォーターをガメてきたのが早くも役に立つようだ。
あきらめて茶褐色のお湯に浸かった。もく浴気分である。遠くガンジスに想いをはせる。(ここはインドじゃないって)


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