WELLA
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1997年12月22日(月) 第10話 生き神の少女

それにしてもすごい人である。
地図を見ようにも、ちょっとでも本を広げると「ガイドはいらないか」と声をかけてくるので、わけ知り顔でがしがし歩き回っているうちにすっかり疲れてしまった。
ここで見るべきは生き神がいるというクマリ館とハヌマンドゥカと呼ばれる旧王宮の建物だそうなので、それだけ寄って帰ることにする。
クマリ館に住んでいる生き神はまだ少女である。興味はなかったが、見るべきだといわれたので入ることにする。入口に生き神の絵はがきを売っている幼女とその母親らしき女性がいる。そういえばこの幼女も英語ではがきを買ってくれと言って来る。絵はがきには目の回りを濃く塗って黄色い装束に身をつつんだ 少女 が写っている。
中に入ると西洋人のカップルがガイドらしき男と共に生き神が姿を現すのを待っている。もうすぐだから我々にも見ていけ、という。男が建物の方へ向かって何か声をかけると3階の窓から絵はがきの写真と同じような少女が一瞬顔を覗かせてすぐにひっこんだ。それだけである。それにしても生き神にしては軽々しい扱いである。
男はカップルに「君は彼女と知り合いなのか」と尋ねられると「もちろんだ。よく話をする」という。そしてさらに彼女の顔を見たから気持ちでそこに金を入れてくれ、という。男はそのままカップルを建物内の土産物屋へいざなっていった。なんともいんちき臭い。

あとでガイドブックで見たところ、生き神は氏素性の正しい家系の霊感が強い少女が任命され、初潮を見ると交代するのだという。一日中あの薄暗い建物に籠り神事を行なっているそうだが、生き神の務めを終えたあとは、非運を辿るケースが多いらしい。さもありなん、と思う。

クマリ館のあとはハヌマンドゥカの階楼である。ここは先々代の国王の遺品や写真をおいた博物館でもある。今でも王宮の管轄なのでいろいろと制約も多い、が、日本に比べるとヘのカッパである。最上階からカトマンズの街を見渡す。茶色い。

町全体がホコリっぽい。今日一日で鼻毛がずいぶん伸びた気がする。


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