WELLA
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1997年12月15日(月) 第17話 王宮通り

一晩ぐっすり眠って体調はかなりよくなった。
カーテンを開けると相変わらず雨がしとしと降っている。今日は木曜日、ガイドブックによると王宮の外国人向け公開日らしい。ネパール人向けの公開日には長蛇の列ができるという。
ネパールの国自体は貧しいにも関わらず、 国王夫妻 は世界でも指折りの金持ちである。いったいこの国の人々はどういう気持ちで豪華な王宮と高価な調度品などを見るのだろうか、なんてことがガイドブックには書いてあった。
午前中はゆっくり休養して午後から行くことにする。王宮はホテルから歩いてすぐ、 王宮通りのつき当たり にある。
もとい、王宮からまっすぐに延びる道を「王宮通り」といい、ホテルはその道沿いにあるのだった。
そのうち晴れてきたので、部屋でゴロゴロしているのももったいなかろう、ということになり、昼食をとりがてら出かけることにした。王宮通りに面した建物の2階がオープンカフェになっているのを見つけて入る。
例によって私はチキンとマッシュルームのクリームスープと、フィッシュアンドチップス、コカコーラを頼む。面白味はないが、まだまだ油断はできない。安全第一である。
こういう小ぎれい店は外国人客が多い。現地人とおぼしき人はほんのわずか、しかも裕福そうである。

食事を終えて外に出る。王宮に向かって歩きだすと、王宮の後ろに白い山々が見えている。これは美しい。おそらくあれがヒマラヤだろう。青空にくっきりと映えている。見るのはカトマンズに来て初めてである。
歩いていると例によって物売りが近付いてくる。仏像、短剣、ジッポ、ひどいのはタイガーバーム。
タイガーバームなら上海で買った ぞ。しかも商品4つだけ持ってどうするつもりだ…。

王宮の手前まで来た。このあたりは宝石店がいくつか軒を連ねている。見学時間まで少しあるので、ショーウィンドウを冷やかしてみる。
宝石のビーズで作ったネックレスが特産らしく、どこの店にもならんでいる。細いネックレスを何本も平に重ねてベルトの様な幅広のものに仕上げてある。丁度織り物のように幾何学的な模様となる。柄がグラデーションになっているのが気に入ってしばらく見ていると、店員が中から顔を覗かせて声をかけてきた。
値段だけ聞こうとすると、見るだけでいいからとりあえず中に入れという。足を一歩踏み入れようとすると、すかさず歩道にいた物乞いが近寄ってきたが、店員が「ダメだ」というような顔をすると大人しく引き下がった。
店内では西洋人のオバサマが現金でバンバンお買い物をしているところだった。ありゃ、アメリカ人だな。

椅子を勧められたが、座ると断りきれなくなりそうなので、立ったまま気に入ったものを見せてもらった。きれいだが、つけてみると案外映えないものである。値段を聞き間違えて一瞬心が動いたが、ちゃんと聞いてみると5万円くらいする。旅先での衝動買いにしては値が張り過ぎる。迷っていると、
「ここはホールセールをやっているので、どれも卸値に近い。いい値段だ」
という。まあ、確かにそうなのだろう。さはさりながら、である。
「とても今決断はできない」
というと
「そうだろう、そうだろう。今すぐには決められないだろう。ま、とりあえず座って、コーラかコーヒーでも飲みながらゆっくり選んだらいい。何飲む?」

ここで飲んでは絶対買わされてしまう…。
何度も椅子と飲みものを勧められたが固辞し続ける。心は残ったのでまた来る、と約束して名刺をもらって店を後にした。

王宮には見学時間の前に着いてしまった。チケットを買うらしいが、時間になるまでは売り始めないようだ。チケット代は一人500円強。わりと高い。
午後の見物客はわれわれの他に、同じ学会に参加しているらしい3人組だけのようだ。週一回の公開日にしては淋しい。


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