WELLA DiaryINDEX|past|will
披露宴が行なわれているのは、先日 コンサートが開かれた会場のロビーである。今日は打って変わって現地人ばかりの集まりである。 ちょっと離れたところから遠慮がちに見ていると、次々と招待客が入場してきた。ご婦人方は美しく化粧をして豪華なサリーやアクセサリーを身を纏い、紳士方はいずれも恰幅よくつやつやとして、いかにも上流階級の集まりである。 例によって、皆それぞれ関係者であることを示す花を胸元につけているが、それはとても小さなコサージュになっていてやはり高級感が漂っている。コサージュには赤いミニバラでできたものと、もうひとつピンクの造花でできたものがある。近親者らしいごく一部の男性は、普通の大きさのピンクのバラとパールを組み合わせた、長いレイを首から下げている。 やがて若い女性達が薔薇の花びらを床にまきはじめ、花婿がそのあとを入場してきた。この女性達の美しさがまた格別で、彫像のようである。 それにしても花嫁はどこにいるのか。その場を立ち去り難く、なんとなく立っていると、入口でコサージュを配っていた人が、われわれにも「どうぞ、どうぞ」と中に入るよう、コサージュを手渡してくれる。 さすがに夫は少しためらっていたが、せっかくのチャンスである。私は「日本人に祝って貰えば彼らも嬉しかろう!」と主張し、お言葉に甘えてずかずか入ることにした。 内部はさらにきらびやかである。 立食パーティーらしく、笑いさざめく人々が一層豪華さを増している。日本でいう「高砂」にあたる壇の上に二人はいた。常にビデオ撮影用の照明を浴び続け、招待客の祝福を受けている。花嫁は鼻にピアスをしている。頭にも飾りをつけ、豪華な衣装に身を包んでいる。年の頃は20才前後だろうか、全く見当もつかないが二人ともとても若い。 ボーイが回り、飲み物やスナックをサービスする。当然のように手を延ばす私の横で、夫はさらにためらっている。ほほほ。 「高砂」の前をうろうろしていると、やがて二人の前に出られるだけのスペースが出来た。私のカメラはフラッシュがついていないので、照明だけが頼りである。しかしシャッターが切れるまで時間がかかる。ブレるのを承知で少し離れたところから数枚撮る。もうひとつのカメラは日本を発つ時に空港で買った「レンズつきフィルム」であるので、甚だ具合が悪い。 それでも日本語で「おめでとうございます」などいいながら二人の注意を引く。花嫁は少し戸惑ったようだが、照れたようなはにかんだ笑顔を見せてくれた。 日本の披露宴ならばそろそろ、主賓の挨拶だの二人初めての共同作業だのがあるはずだが、とんと始まる様子もなし。あるいはこれは、もうすでに始まっている状態なのだろうか。 二人の姿をカメラに納めたので、少し会場を回ってみることにした。会場の片隅に白い櫓が立っており、その下に香料が入った数種類の容れ物が置いてある。多分、これが結婚式で使われるお道具なのだろう、などと思うがさすがに聞いてみる勇気がない。 壁際には椅子が並べられ、着飾ったご婦人方がずらりとお座り遊ばしている。皆様の衣装が波のようにきらきらと連なっている。このまま宴はたらたらと続くのであろうか。さすがに場違いな二人であるのでそろそろおいとますることにする。といっても誰に挨拶するでもない。 「高砂」に目を遣ると、相変わらず人々が取り囲んでいる。少し緊張気味の二人は、あまり言葉を交わす様子もない。 昼間見た熱々の新婚カップル達の様子を思い浮かべながら、「どうぞお幸せに」と心の中で声をかけて会場を後にした。
|