ある朝、急いでお客様がローソンに入ってきた。 彼は青のジーパン、白のTシャツ、そしてその上にジャンパーのMA−1を羽織っていた。
唐突に彼は、レジの中に居る僕に向かって、 「ダ、ダ、ダ、ダンボールを、くっ、下さい!」 と言った。
僕は突然の事にびっくりして、 「こっ、こっ、子猫を捨てるのでは、な、ないですよね!?」 と、何を血迷ったのか口から言葉が漏れてしまった。
「まっ、まさか!、あ、あれです!あれ、あれ、ひっ、引越しです!」 何が災いしたのか、何故か彼もシドロモドロに答えた。
僕は本当かなぁと思いながらも、店長から許可を頂きダンボールを渡す。 彼はダンボールを手にローソンをそそくさと出て行く。
僕は、彼のあとに続いて店を出て、彼の車を覗くと、助手席にノッポさんが座っていた。
「そうかぁ。そうだったのか。納得。納得」
ノッポさんにはダンボールは欠かせない。 だけど、ノッポさんはまともに喋れない。 だから彼に頼んだのだ。
後部座席にはゴンタ君の着ぐるみ一式が置いてあった。 そうなると謎はすべて解けた。
店に入ってきた彼は、今日偶然たどたどしくしゃべってた訳ではないのだ。 当然、彼らは2人だけでその場を立ち去った。
第1線から退いた彼らの後ろ姿は非常に物悲しく、僕は暫くその場に立ち尽くしていた。 この世界における光と影という存在を認識せずには要られなかったからだ。
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