いつもの日記

2001年10月22日(月) ボタン vol.4 〜 がんばってください! 〜

スピーカーの中で彼女は叫んだ。

「がんばってください!」

「えっ?」
僕は思わず言ってしまった。言わずには要られなかった。

「がんばってください!」
再び同じ調子で女は言った。ほとんどテンポもリズムも変わらない。

僕は戸惑っていた。何をすべきかも解らないのだ。

「がんばってください!」
再び同じ調子で女は言った。本当にほとんどテンポもリズムも何も変わらなかった。

僕は訳が解らなくなって頭をひどくかいた。

それと同時に、どこからともなくテープが巻き戻されるような「ガー」という音が聞こえた。
その「ガー」は、「ピッ」という音と同時に止んだ。

僕は恐る恐るもう一度横の壁についているボタンを押した。

スピーカーから声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
先ほどと同じように女の声だった。
それはきっちり3度繰り返されて、すぐに「がんばってください」コーナーに突入した。

僕はその「がんばってください」の声を3回聞かぬうちにトイレを出た。
僕の症状などそのシステムのアホサには本当に無力で、既に吹き飛んでいたからだ。

僕の症状は、本当にビックリ仰天するくらい良くなっていた。
なぜなら無意識のうちに「ホリケンサイズ」を小声で歌えるほどになっていたからだ。
しかも「シバケンサイズ」として替え歌しながら。


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