彼女はサンドイッチを2つと生茶と焼きプリンを買った。 僕はそれらを丁寧に一品ずつバーコードスキャナーに通した。
レジを打ちながら横目で彼女を眺めた。 背は高くなくカジュアルな格好の彼女は、どこかしら僕を弾きつける魅力を秘めていた。 彼女は髪が長く少し背の低い女友達と一緒だった。 2人はそれほど見た目は変わらないが、背の高い彼女のほうが僕は気に入った。
「合計4点で777円です」
僕は商品を全て袋に詰めてレジを打ち終わり、合計金額を言った。
「きゃー、見て見て777!」
お気に入りの彼女は背の低い友達を叩いて言った。
「今日絶対なんかいいことあるわ」
気に入った彼女はほんとに無邪気に喜んだ。 そんな彼女を一層僕は気に入った。 みんなが嫌がるレシートを彼女は大切にきっちり受け取って「ありがとう」と言った。 そして、そのレシートを眺めながら店を出ていった。
そんな彼女を去った後を見ながら、自分まで幸せな気分になってしまった僕は、 しばらくの間ポワ〜ンとしていた。
いかんいかん。仕事をせねば。 と思い直した時に、商品が詰められた袋がしっかりとカウンターに居座っている事に気づいた。
僕はすぐにその袋を取って店を飛び出した。 気に入った彼女が777のレシートを気にし過ぎて、買った商品を忘れて行ったのだ。 100mほど走って彼女に追いついた。
「すっすみませんが。わっ忘れてますよ」
僕は息をきらしながら言った。
「あっ、すみません。ありがとうございます」
彼女はくいっと頭を下げて申し訳なさそうに言った。
「でも、さっそくいいことあったわ」
最後のセリフを彼女がどういう意味で言ったのか今でも解らない。 でも解らなくていいんだ。勝手にうぬぼれてしまうのは僕の悪い癖だから。
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