昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2004年05月22日(土) 時間

 姫路市立美術館で「アンドリュー・ワイエス水彩素描展」を観た。姫路はちと遠いしなあ、などど行くか行かぬか直前まで迷っていたのだが、とても素晴らしい企画展だった。行って良かった。とても感動した。
 ワイエスの生涯の友人、クリスティーナとアルヴァロの姉弟をモデルとした「オルソン・シリーズ」。メイン州の小さな家で、質素でありながら慎ましく誠実に生きたふたりの毎日が描かれている。展示してある絵の最初から最後までが移ろいゆく時間の物語になっており、その強い静けさにただただ心を打たれた。
 
 風でゆれるカーテン、重ねたバケツ、摘みたてのブルーベリー、無造作に置かれた穀物袋、納屋の牛、飛び交うツバメ、光がもれる屋根裏窓、開かれたドア、クリスティーナの墓、誰もいない寝室、煙の上がらない煙突、使われていたままに置いてあるアルヴァロの桶。
 確かにこの手の中にあったのに、今はもうなくなってしまったものたち。

 洲之内徹がワイエスについて書いていたこと。
 『過ぎて行く時間のある瞬間をまざまざと感じさせる光線が、ワイエスのどの絵の中にもさしている。時間という無限なものが私たちに触知させる一瞬ー。移ろい行くもの、そこはかとないもの、過ぎて行く、あるいは過ぎて行った人間の日々の営み、それを、その光線は感じさせないではおかない。』

 阪神電車にとろとろと揺られて、図録をめくっては眠り、めくっては眠りしながら大阪に戻る。堂島地下の中華料理屋さんで腹ごしらえしてから、サンケイホールで「桂吉朝独演会」へ。サンケイホールでの独演会はこれで最後とか。
 
 会場は満員。ひとつおいて隣に座った人が、取引先で受付をしている女性だったので全く驚いた。ちゃんと話したことはないけれど落語を聞きにくるような人だとは思わなかった。もしかして気が合うかもしれないなあ。
 あと、後席のおじいちゃんが、松鶴はいったい誰が継ぐんだろうねえ、としきりに心配していたのがちと面白かった。そう心配せずとも、いつか誰かが継ぐだろう。
 大ネタ『百年目』はもっと「枯れ」が加わってからでないと本当の味は出ないのかもしれないが、品格は充分だと思った。
 その他、『犬の目』と『浮かれの屑より』。『犬の目』で、研修医が「先生、えらいことができました、干しといた目玉があれしませんのです」と言い、医者が「お前、医者にでもなろうちゅうもんが、あれしませんのです、なんて言うなよ」と諭すところがすごく好きだ。「あれしませんのです」、っていい言葉だなあ、私も来週から使おう。

・購入物:図録「アンドリュー・ワイエス 水彩素描展」

・朝食:ごはん、豚汁、梅干し、海苔、ちりめん山椒
 昼食:ヘンゼルのパン、ツナオニオン、豆乳ドーナツ、ミルクティ
 夕食:外食、つぼや(生麦酒、餃子、春巻き、キムチ、枝豆)


フクダ |MAIL

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