昨日・今日・明日
壱カ月|昨日|明日
もう一回「D.I.」観に行こうかな、と思ったら、もう上映期間が終わってた。早いなあ。どうでもいい映画は長々とやるくせに。 仕方がないので今日は出かけず、部屋の掃除などをする。
それから読むとか読まないとか、ひとりで悩んでた「苦の世界」を読んでしまった。 もうね、びっくりした。めちゃめちゃ面白かった。 「苦の世界」は売れない画家の主人公がヒステリーの妻に悩まされる話が軸になって展開していく。私は勝手に、「死の棘」の大正版みたいな小説なんだわ、と思っていたけど、これはそうじゃないんだよ、そう思うと読み損なう。 法学部生の鶴丸、ヒステリーの母親に悩まされている本屋の山本、逃げた妻を追いかけている芸者の周旋屋、文学を志す参三、無類の酒好きで天性の嘘つき半田(コイツ大好き!)、などなど主人公を取り囲む友人達が、それぞれとても魅力的なのだ。 とくに2章での鶴丸の独白は、ツルゲーネフの「はつ恋」ばりの身をきられるような切なさで迫ってくる。その後、浅草の花屋敷で男3人がメリーゴーラウンドに乗る場面のなんという哀しさ。 登場人物みんな、気が弱くて、甲斐性がなくて、夢はあっても人生全然ままならなくて、トホホなんだけど、全員ことごとく善人で愛すべき人達なのだ。どんな悲惨な状況におかれても、人を思いやることを忘れない。 たしかにこの世は「苦の世界」だ。でもそれならそれで、せいぜいもがいて、おもしろおかしく生きていってやるんだ、って思う。
思わず興奮してしまったわ。世の中にはまだまだ素晴らしい小説が、いっぱいあるんだなあ。
・購入物:小沼丹「黒いハンカチ」(創元推理文庫)
・朝、昼食:チキンサンド、珈琲 夕食:グリーンボールと卵の炒め物、トマトとズッキーニのスープ、冷奴、麦酒、ご飯
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