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2003年04月05日(土) 織田作之助のこと

 選挙カーからの候補者連呼で起こされた。「手を振ってのご声援ありがとうございます」とかさ、もう止めたら?

 一心寺シアターでの「オダサク映画祭」に行って、五所平之助監督「螢火」を観た。
 織田作之助は私の読書人生に少なからず影響を与え、文楽へ導いてくれた作家だ。この映画は「螢」(ちくま文庫「聴雨・螢」収録)が原作。
 「螢」の書き出しは、

 『登勢は一人娘である。弟や妹のないのが寂しく、生んで下さいとせがんでも、そのたび母の耳を赤くさせながら、何年かたち十四歳に母は五十一で思いがけず妊った。母はまた赤くなり、そして女の子を産んだがその代わり母はとられた。すぐ乳母を雇い入れたところ、折柄乳母はかぜけがあり、それがうつったのか赤児は生まれて十日目に死んだ。父親は傷心のあまりそれから半年たたぬ内になくなった。』

 で、これでぐっと読者をつかまえ一気に結末まで連れていくという、物語を読む醍醐味が味わえる短編だ。
 
 登勢は、度重なる不幸から、自分の行く末について「あらかじめ諦めておく」習性がつく。この後、寺田屋へ嫁にゆき店の大黒柱となり、やがて坂本龍馬をかくまうことになるのだが、人生のあらゆる局面でこの諦観が顔を出し、登勢の人生を良いようにも悪いようにも導いていく。
 原作ではここが私の胸をうったのだが、映画ではその描写が弱いような印象があった。
 淡島千景は熱演だったし、伴淳三郎も沢村貞子も良くて、全体的には満足だったけれども。

 この映画を観るにあたり、2、3編織田作之助を読み返してみて、文のリズム、簡潔な描写やたたみかけるような物語の進行など、やっぱりすごいなあと思う。ちょっと早死にすぎるよな。

 今月号の「新潮」に山田稔の短編が掲載されている!うれしい〜大切に読もう。

・購入物:「新潮」2003年5月号
     「文藝」特集=保坂和志2003年夏号

・朝食:メロンパン、珈琲
 昼食:食べなかった
 夕食:外食、ごはん屋にて鶏おろし定食(千切大根の煮付、味噌汁、漬物付)


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