妄想更新日記
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2004年06月12日(土) SSモドキ11塚.リョアップ

 

 

 

 

 

病院の理学療法室をのぞいてみると部長はいた。

 

 

ここはおじいさんやおばあさんやもちろんスポーツ等で身体を傷めた人がてんでにいるから俺がふらりと入っても違和感はない。

 

 

ナースに声をかけられる前に、とっととあの仏頂面拝んでやろうかと仕切りの向こうをのぞいた。

 

部長はいつもよりもっとすごみを増した顔で、でかい機械からドライアイスの噴射みたいなのを肩にあてられている。

 

 

見るだけで凍ってしまうような気がして身震いした。

 

その後は熱い枕みたいなパックを肩に押し当てられている。

 

 

それを交互に繰り返してる様をじーっと見つめていると

 

気配を感じたのか顔を向けた部長とばっちり眼が合った。

 

 

 

 

「越前....」

 

「どもっス」

 

************************************

 

 

中学一年生が自力でここに来たというのが酷く驚いたようで何故来たのかとか誰と来たのかとか練習はなど無口な部長にしては珍しく質問を矢継ぎ早にしてきた。

 

 

「ただの見舞いっすよ...」

 

といっても腑に落ちない様子で何かあったのかと尋ねられた。

 

 

まーあったっちゃーあったんだけどネ....。

 

 

 

本当に見舞いだから...と大石先輩からの手紙やフジ先輩からの届け物やらを渡すとどうやら少し納得したらしく

 

 

「大会前の大事な時期に練習サボってくるとはけしからん」

 

と拳骨をもらった。

 

 

「部長、ヒドイ...」

 

 

と抗議したら薄く眼鏡の奥が微笑んだ気がした。

 

 

.......「気がした」だけかもしんないけど....。

 

 

 

 

「本当は俺、部長が回復してたら一セットくらい打ってもらおうかと思ってたっす」

 

病院の庭でジュースを奢ってもらいながら俺の本音を言った。

 

 

 

「そうか....すまなかったな...。わざわざ来てくれたのに。だが半病人のおれでなくとも、もっとマシなのがほかにもいるだろう?」

 

 

 

「うーーん...あんたと打ちたかったのはそれだけじゃないっていうか....」

 

 

勢いできたものの俺にもなんて部長に説明していいものやらわからなくなってしまった

 

 

 

 

「俺ね、本当は部長に相談事があって来たの」

 

 

「ほう」

 

 

そんな事でわざわざここまで来るには余程重要な事かと部長は姿勢を正してこちらを見つめてきた。

 

 

だが実は俺の頭は未だにこんがらがったままだ。

 

 

「上手く言えないンすけど...俺、部長の事すきなのかしらと思って」

 

「はぁ?なんだそれは」

 

突拍子もない切り口に明らかに力の抜けた部長を横目でみつつ俺は続けた。

 

 

「部長とやったあの試合から俺の中で部長の存在がすごく大きくなってずっとあの日の事ばかり考えちまう自分がいて....。アンタやっつけるの絶対おれだって思ってたのにあの猿山の大将なんかに負けちまうし桃先輩は俺の事好きって言うし。でも菊丸先輩とも付き合っていて...あれ?こんなんじゃわかんないよね?」

 

 

「...........うむ。」

 

 

半ばあきれ顔で見つめる部長に俺はすっかり困ってしまった。スポ恨ばりにテニスで会話できれば早いのにとも思ったが相手は病人。それもかなわない。

 

 

「なにやら解らないが俺は恋愛事の相談とかは苦手だ」

 

 

「そうっすよね....」

 

 

 

下らん事に時間は割けないと怒られるかと思ったら

 

 

 

「だがテニスの話なら聞いてやれる」

 

 

部長はジッと俺の眼をみて真摯に言った。

 

 

俺は何だかうれしくなってにっこり笑った。

 

 

そしてちょっと考えて話しはじめた。

 

「部長」

 

「うん?」

 

 

 

「部長はなんで俺に青学の柱を任せたの?フジ先輩とか大石先輩とかじゃなくて...」

 

 

「ふ....む....」

 

 

俺は無口な部長の中々かえってこない返事を辛抱強く待った。

 

 

 

「俺はな越前。テニスは個人スポーツと思っていた。」

 

「違うんですか」

 

「いや...確かにテニスと言うスポーツはそうなのかもしれないな。俺もそう思ってずっと練習していたし。だがな...中学テニスと言うのは違うと思わないか?」

 

「はぁ...」

 

 

チームーワークとかそういうのがいいたいのだろうかと曖昧な返事をした。

 

 

 

「昔、俺は少しばかり先輩方より腕がたってそれを口実に腕を攻撃された事がある」

 

 

その話は以前おしゃべりな菊丸先輩当たりから情報を得たのであろう桃先輩から伝え聞いていた。

 

 

「その時まだ未熟だった自分は『もうこんなくだらない部活動という枠組みでテニスをやるのはやめよう』と思った。先輩だの後輩だの些細な事で揉めて自分を高めようともしないこんな場所にいても自分はうまくはならないとな」

 

 

俺に言わせれば今でもそう思っている。ただ青学が予想に反して面白い選手がいっぱいい居るから興味を持っているだけの事で別にクラブチームの大会でも構わないと思っている。

 

 

「だがそんな俺の前に大石が立ちふさがったんだ」

 

 

部長は俯いて噛み締めるようにいった。

 

 

「『こんな程度の事で諦めてどうするんだ』とな」

 

 

 

「あいつとは以前に自分達の代で全国優勝しようと約束をした事があった。...なんというか...俺はそこで自分が「テニスの技術以外上手くなろうとは考えていない自分」に気付いたんだ」

 

 

 

部長は俺の眼を見て話だした。

 

 

 

「俺は大石の言葉とその時の部長のおかげで部に戻る決心がついた。どんな場所でもどんな状況下においても必ずNO1になる。それが上を目指すものの器量と言うものではないかと考えなおしてな。それまでの俺の「全国優勝」の文字はただ単に自分の技量の強さの証でしかなかったし皆が全員それを鍛えれば全国優勝と言うのはおのずとついてくるものだと思ってた。」

 

 

だが、違ったんだな...と部長は薄く笑った。

 

 

 

「大石に俺が辞めるなら自分も辞めると言われた時には『こうして高めたいと思う者がどうして辞めなければならないんだ。』と思った。こんな小さな嫌がらせや野次に負けてしまうような心根でどうして全国優勝だとな」

 

 

確かにテニスはメンタルが大きく左右するスポーツだ。そこに視点を置かず練習してきた自分に初めて気付いたという事なのだろう。

 

 

「幸い俺の代ではかなり実力がある選手がそろっていた。今年こそ、今年こそ俺達の代で青学を優勝させる事ができるかもしれない。そう思いながらずっと他のメンバーと切磋琢磨してきた。そんな中で今まで自分の中に全く存在しなかったものが産まれてることに気付いたんだ。」

 

 

 

「横の繋がりの安心感、信頼感、責任感。これらは俺の中になかったものだ」

 

 

 

これはみんなが俺にくれた財産だ。とまた噛み締めるように呟いた。

 

 

 

 

「じゃぁなぜ俺なんですか?話の流れで言ったら任せるのは俺でなくても大石先輩とか...そう、桃先輩とかの方がずっとそういう気持ち察してくれると思いますよ。」

 

 

そう、てんで俺にはむいてない。「横の繋がり」なんて。そこから産まれる感情の何かなんて....。

 

 

 

 

部長は空を仰いで眼を瞑ってしばらく考えていたが、やがて変な事を言い出した。

 

 

 

 

「越前は国語は得意か?」

 

 

「いや...全然です。」

 

 

「そうか」

 

 

部長はおもむろに携帯を出すと、つらつらと漢字を4つならべた

 

 

「どれも「あつい」と読むが意味が全部違う。」

 

 

「暑い」気温が高い

「厚い」表と裏の距離がある

「熱い」温度が高い

「篤い」思いやりが深い

 

 

最後のは病気が重いという意味もあるそうだと物騒な事をいうので俺はギクリとした。

 

 

 

「何となく辞書をぱらぱらめくってて思い付いたのだがレギュラーにあてはめるとおもしろい」

 

 

なるほど

 

 

篤い....は間違いなく大石先輩だよね あ、でも意外と海堂先輩もそうかも。礼儀正しいし。

暑い....は桃先輩?河村先輩もそうかも...あのふたり暑苦しいし。

厚い...は間違いないフジ先輩だ。あ、乾先輩もそうかな。

熱い...はわかんないな...暑いと似てるし...

 

 

でも残り物でいくと俺になるのかな...なんてぼんやりかんがえてると

 

 

 

「越前。日本語は難しいだろう?同じアツイでも意味が違う」

 

 

「.....。」

 

 

「越前『青学の柱になれ』ってどういう意味だと思ったんだ?」

 

 

 

聞かれて俺は吃驚して顔をあげた。

 

 

 

あれ?俺、どういう意味だと思ってたんだろう....。部長の実力見せつけられてかなわなくて悔しくて....部長に絶対勝ちたくて....だから部長みたいなエースの実力をつけろといわれてるんだと思ってた。

 

 

「越前、同じ言葉でも意味が違う。俺が大石に『青学の柱になれ』っていうのとフジに言うのとお前にいうのとではな」

 

 

 

 

そういって部長は肩をさすってまた空を見上げた。

 

 

ああ....この人は本当に青学を愛してる。

 

 

自分を変えてくれた大石先輩や一緒に思いに賛同してくれた仲間を本当に愛してる。

 

 

全国優勝のためにおそらく自分が足枷になるかもしれない事をわかってて俺とあえて勝負したんだ。

 

俺にそれだけの思いを託したんだ。

 

 

部長は俺に横の繋がりを作れるチームにしろなどと言ってるんじゃない。

 

 

それは俺の役割じゃない。

 

 

 

俺は今まで、ただ部長並の実力をつけて青学を優勝に導けばいいと思ってた。

 

 

誰かふたつ勝ってくれたら俺が必ず決めるから大丈夫みたいな気持ちだった。

 

 

でもそのバックを俺は考えた事もなかった。

 

 

 

部長が感じた喜びを俺にも感じてほしいと願っている事など....

 

 

本当の意味の俺の成長を願ってくれてる事など....。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はどうも....言葉足らずで....すまんな」

 

 

「え?」

 

 

「いきなり試合に誘って徹底的に負かせておいて『お前は青学の柱になれ』と言われたからって俺の本意がくめると思う所が俺の浅はかな所だ。」

 

 

「浅はかかどうか知ンないけどいきなりいなくなるのは酷いよね」

 

 

俺は皮肉を言ってやった。

 

 

 

「手厳しいなほんとに、お前は」

 

 

「だって...ね。」

 

 

「そうだな。きっと俺はお前にエースとしての柱を頼んだ。でもそれは大和先輩と俺の話をしてからでないと解らなかった話だな。混乱させてすまなかった」

 

 

 

そう言った後で

 

 

 

「俺が大和先輩から貰ったものをお前達に返せているだろうか。大石が俺にくれたモノを俺達3年はお前達に伝えてるだろうか....いつも考える。時間は....残り少ない....。」

 

 

 

 

俺は胸が締め付けられるような燃えてくるような感じがして胸元のシャツをキュッと握った。

 

 

 

まず優勝だ。それからだ。

 

 

 

突然黙りこくった俺に

 

「なんだか役にたってやれなかったようですまなかった...」

 

 

と頭をくしゃりと撫でられた。

 

 

 

「部長!!俺!!」

 

 

 

「....ん?」

 

 

 

 

「俺....これが恋かと思ったよ....」

 

 

「.....テニスにか?」

 

 

 

 

 

天然部長の相変わらずの答えにクックッと笑いが込み上げてきて

 

 

 

 

「うん!でも愛だったよ!俺は部長みたいに青学にホットじゃないけどテニスだけは熱く愛してる。俺も部長みたいにどんな場面でも切り抜けてホントに強くなって最強になってあんたに今度こそ勝つよ!!」

 

 

 

「それは....恐いな...」

 

 

まだ同じスタートラインにもたってやしない。この人とは。

 

 

 

「俺は『熱い』はお前をあてはめたが満更間違いでもないだろう?」

 

 

と部長らしからぬくだけた事をいうのでまた笑いが込み上げた。

 

 

 

二人で笑った。

 

 

 

部長の笑顔らしい笑顔を初めて見た。

 

 

 

 

俺は部長が好きだ。

 

 

俺は部長が好き。

 

 

でもそれはきっと恋じゃない。

 

 

愛だ。

 

 

テニスプレイヤーとして

 

 

自分には全く無い発想を持っているものとして。

 

 

俺と部長はきっと昔はよく似たタイプだったのかもしれない。

 

俺も自分の成長以外に興味なんかさらさら無かった。

 

 

 

だけどあの氷帝戦での部長の強さが守るべきものの延長線上にあるのだとしたら、あれを手に入れなければ俺はきっと先にはゆけないのだろう。

 

 

大石先輩や大和さんが部長を導いたように

 

 

今、俺は部長に導かれている。

 

 

 

高みへと。

 

 

 

何かを切らなければ上へ行けないなんてどうして思ったのか?

 

 

俺はテニスを愛してる。

 

テニスをすると自分が大きくなれる気がする。

 

 

その充実感が大好きだ。

 

 

大きくなればまた違うものが見えてくるのかもしれない。

 

 

 

まずは部長の所まで。

 

 

 

今から全速力で登って行こう。

 

 

 

 

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「すまなかったな、大した観光案内もできなくて」

 

「日帰りっすから。ラーメン旨かったッス。」

 

「これ....みんなで今度部活が終わった後にでも竜崎先生の了解とって食べてくれ」

 

「なに....?『ひよこまんじゅう』?」

 

 

あまりに部長らしからぬ選択に奇異の眼でみつめると

 

 

 

「軍鶏になって勝ち抜けと伝えてくれ...」

 

 

 

と言うのでなるほど。と合点してたら

 

 

 

「本当は今日の自分がこのひよこみたいにピーピー喋りすぎたと恥ずかしくなって眼に留まった....」

 

 

 

と悪戯っぽい眼で笑ったので吹き出してしまった。

 

 

「笑うな」

 

「笑うよ!」

 

 

笑いの止まらぬ俺に拳骨を食らわせて改札で別れた。

 

 

 

包み紙にとぼけた顔で映ってるひよこに向かって

 

 

「まだまだだね....」

 

 

と呟いた。

 

 

 

 

可愛いひよこちゃんは東京に向かい第二次成長期を迎える。

 

 

 

 

 

 

 

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ぐはーーーーーーーーーー!!終わった!

 

 

説明臭いSSだけは書くまいと思ってるのにこの説明臭さはなんですか?!

 

 

難しいよ...てじゅか....難しい....アンタ....。

 

ものすっごい苦労しました!

 

 

手塚で恋愛事は私の中ではかけません。もー無理!絶対無理!っていうか手塚が書けない!

 

 

やっぱり越前はテニスプレイヤーの手塚を愛してます。

 

テニスを愛しています。

 

 

じゃないと!じゃないと!!

 

でも人間くささの無い手塚が本当に熱くて人間臭いなと思わせたのはあの氷帝戦です。

 

あれ程の思いをもつにはどれくらい青学に対して愛情をもっているのだろうか...

 

 

そう思ったらロボット手塚が人間になったのはあの時で....。それを越前につたえたかったんじゃないかなぁーなんて....なんて...

 

 

え?決してSSの補足説明ではないですよ?(....。)

 

 

手塚が全然別人28号ですいません。っていうか越前も妙に頭悪そうですね....。

 

 

あー苦労した。でも王子には答え見つかったよ。後見つかって無い人の答え書いておわれるかなぁー。

 

もう二度と手塚は書けないと思う....。たぶん....。ギャグならまだしも....。

 

おみやげのひよこまんじゅうは実家の父の出身が九州でいつもそれでした。最近他所でも同じ者が売られてるらしいけど、私は絶対元祖は九州と思ってます!!おいしいけど「なごやん」ってまんじゅうをひよこ型にしただけのような....。

 

 

でも顔がめっちゃかわいいのです!ピーピー鳴く手塚!最高じゃねーの!!

 

 

私信

....あきさんの反応がなにより恐いです。スルーだけは堪忍して下さい!
(泣)






そうそう!冒頭の手塚の治療は私が頸腱腕症候群になって病休をとり腕や肩や首が動かせなかった時に使った治療法です。このドライアイスの機械は貴重でそう多くは出回って無いと聞いたのできっと手塚の病院にはあるはず!と勝手に使いました。これと「ホットパック」というアイスノンのあったかいバージョンを交互に繰り返すという治療を受けました。しかしその病気の時はもう痛みどころか痛覚まで麻痺してたので寒いも熱いもあまり感じなかったのを覚えてます。

なんでも経験しとくものですねー。こんなところで使えるとは!


そんでもって「熱い」には「男女の熱情の様」ってのも辞書に乗ってて本当はこれにひっかけて軽くメンタルな塚→リョっぽくしてやろうかとも思ったのですが....玉砕でした...ああん!!



追加私信

あきさん!ビデオ届きました*キャー!!楽しみ!今週中で観ますので少々お待ちを〜*
 


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