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2002年07月05日(金)    スローに行こう! 〜slow food, slow life, and slow living


一体いつから皆、時間がないと言い出したんだろう。大人も子供たちさえも。

最近「スローフード」という言葉をよく目にしたり耳にしたりしますね。
言葉を聞くだけで、その言葉の言わんとしていることは何となく分かるのですが、
そもそもの起源や具体的な活動内容などまでは分からないままでした。

そんな中、今週たまたまTVでイタリアのスローフード運動協会の副会長である
ジャコモ・モヨーリ氏が出演している番組を見ました。
たしかNHK衛星放送だったと記憶しています。テーマは、ずばりスローフード。
モヨーリ氏が、日本の色々な地域の昔ながらの食材を訪ね歩くという形式でした。

スローフードという言葉は、イタリアでは15年ほど前に生まれた言葉だそう。
簡単にいうと、伝統的な食文化を守ろうということでできた言葉です。
きっかけは、ローマのスペイン広場に有名な某ファストフード店の1号店が誕生
したこと。「ファストフード」の脅威に対して、「スローフード」という言葉が
生まれたことに端を成します。

スローフードの「スロー」とは、単にだらだらと時間をかけて食事をするという
意味ではなくて、「普段何気なく口にしている食べ物を一度じっくりと見つめ
直してみてはどうか?」という提案です。そして見つめ直すと同時に、素材や
料理について考えたり、食事を通して会話を楽しんだり、日々の慌ただしい日常
から離れて、未来を見据えた広い視野で生活全体を見直そうというもの。

実際のスローフード運動は、イタリアのブラ(BRA)という片田舎からスタート。
1986年に始まり1989年に協会を設立。その後、スローフード宣言を発表。
現在では世界38ヶ国に広まり、約8万人以上の人たちが参加しています。

日本に限らず、イタリアでも昔は手作りしていたチーズや生ハム類、サラミなどを
時間がかかるという理由で作らなくなっているそうです。このままだと、それぞれ
の地方で守ってきた伝統の味が失われてしまうという危機感が、こういう運動を
生んだ、つまりは本当に美味しいものを守ろうということなのですね。

具体的に「スローフード」について、イタリアのスローフード協会は、
   1.消えつつある伝統的な食材や料理、質のよい食品やお酒を守る。
   2.質のよい素材を提供してくれる小生産者を守る。
   3.子どもたちを含めた消費者全体に、味の教育を進めていく。
という3つのテーマを掲げています。

ところが、この食について、最近の日本では、食の安全ということを考えさせる
事件が相次ぎました。BSE、いわゆる狂牛病の日本への上陸はもちろんですが、
食品会社の不祥事が相次ぎ、また流通段階での虚偽の表示といった問題が食材の
安全ということについての消費者の信頼感を大きく揺るがせています。

最近になって、盛んに「スローフード」という言葉を目にするようになったのは、
実はこうした事件がキッカケなのかもしれません。
私たちが生活していく上で基本のものとして「衣食住」ということを言いますが、
中でも「食」は、私たちが生きていく上で欠かせないものだと思います。

日本は、ここ数十年より豊かな社会を目指して、スピード・効率・便利などを
ひたすら追い求めてきました。結果、確かに豊かで便利な社会を手に入れました。
日本各地はもちろん、世界中の食材が季節を問わず手に入るようになりました。

しかし、その反面で、食べ物を無駄にしたり、食べるという行為そのものを疎かに
するような、そういう風潮も蔓延している気がします。食卓あるいは台所にも、
スピード・効率化という物差しが大手を振って入り込み、食卓を囲んでの家族の
ゆったりした団欒という情景が減ったと指摘する声もあります。

また、世界中の食材が手軽に季節を問わず手に入ることと引き換えに、その便利さ
の一方で、「私たちは季節感が薄れているんじゃないか?」という寂しさ、或いは
「スピードや効率と引き換えに、大事なものを何処かに置き忘れているんじゃない
か?」という疑問、そういうものを感じ始めている人々もいるようです。

そういう時代だからこそ、今、もう一度日々の生活のリズムを刻む、そして私達の
生きていく上での基本である「食」ということ、「食べる」ということについて、
改めてじっくり考えてみたい、それがスローフード運動の狙いなのでしょう。

自分のために手間暇や時間をかけて料理を作ったり、料理をゆっくり食べたり、
日々の生活をゆったりと過ごしたり。。。
利益やスピードそして効率を追求した行動の選択だけじゃなく、別の道もある。
ようやく日本人の意識も(一部で)欧米に近づきあるのかもしれません。


スローな動きは「食」だけでなく「衣」や「住」にも広がりつつあるようです。
例えば「住」ですが、雑誌『モダンリビング』 2002年7,8月号(No.143)では、
エコロジカルな住まいがいい「スローリビングのすすめ」という特集を組んで、
住宅に対するスローな考え方・姿勢を提案しています。

スローな視点は、食や住に限らず、生活全般に言えることなのでしょう。
そういえば、先日の北海道旅行の際、雨の美瑛で借りたレンタカーでラジオを
つけたら、偶然「スローフード、スローライフ」を扱った番組が流れてきました。
北海道のローカル番組だったと思いますが、その番組は司会者の方がlistnerの
方のfaxや電話によるコメントを紹介しつつ進行していきました。

ラジオで聞いた「スローライフ」という言葉は、初めて耳にする言葉でしたが、
「あぁ、なんだか、そういう生活っていい感じだなぁ」と思いました。
listenerの方のコメントに裏打ちされて、そう感じただけかもしれないし、
聞いた場所が北海道だったからなのかもしれませんが。(笑)


■参考サイト■
日本スローフード協会
朝日新聞社シンポジウム
  「食」ってなんだろう ― おいしく楽しく食べるには(2002年5月11日)


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