小淵沢,清里,冬青庵,歩゙らり,Y先生宅,帰京

 母の知人が小渕沢でやっているペンションを訪ねる。
しかし母はその知人の名前を知らない。
「ペンションの名前で手紙も来るし、今更聞けないわよね」とのこと。

ペンションの看板のところにある洒落た形の郵便受けにも名前は書いていない。
呼び鈴を押して出て来た人にまたでっかい声で話しているので
私たち3人は外の木陰で待つ。しばらくして出てくる。
名前のわからないその人に「娘の真理、覚えてる?スキーで会ってるのよ」。
その人も私もお互い全然覚えていない。

車に戻って「で、名前はわかったの?」と聞いたら「わからない」。
人に「覚えてる?」などと聞いてる場合かよ。

 お昼までに時間があるので清里のアイスクリームを食べることになる。
「ソフトクリームじゃなくて?」と聞いたら
「アイスクリームよ。私はこの前食べたんだから」と母。
結局母の言ってる事はだいたいデタラメ。
有名なのはアイスクリームではなく、清里駅近くでもなく、清泉寮のソフトクリーム。
「私はソフトクリームは嫌いなの」と言って地ビールを飲む。
「うるさいわね、なんだっていいじゃない」と母。うるさいのはアンタだ。

 Y先生がお昼に連れて行ってくれた「冬青庵」は非常に素敵な店だった。
鮎づくしのお昼のコースは3,500円。私はあまり鮎は好きではないが、美味しく頂いた。

 そこでも母は大騒ぎ。哲学者の話になって、私が中島義道の名前を出したら
「あの馬鹿!学校はどこなの?」「東大」「東大馬鹿!」と叫んでいる。
頭に来たので「中島義道大好き!」と叫ぶ。

雰囲気をぶち壊された隣のカップルが帰ろうとすると
「ごめんなさいね、うるさくて」と母。私は謝らない。
注意されたわけでもなく自分から謝るなら、静かにすればいい。

 「冬青庵」近くのギャラリー「歩゙らり」。松田百合子という陶芸家の作品展。
なかなか素敵。
母はショップでまた服や暖簾用の布をお買い上げ。
松田百合子の水差し15万円も「いいわねえ」と欲しそうにしていた。
「もう行くよ」と叔父が呼びに来たので車に戻る。母は来ない。
もう一度叔父が呼びに行くと、ギャラリーの人が水差しを包んで持って来た。
蓋が欠けているので割引してもらって13万円。

叔父が「買い物中毒だね、中村うさぎと一緒だ」と呆れて言う。
私が「(躁鬱病だった)叔母ちゃんと一緒だよ」と言うと母はプリプリ怒る。

 Y先生宅に戻ると酷く暑い。冷房は無いので汗だくになって少し眠る。
Y先生も「6年いるけどこんなに暑かったことは無い」とビックリ。

4時になってもまだ暑いが、出発。3時間で東久留米に着く。
「随分のんびりした旅だったわ」と母。私は久し振りの運転で疲れた。

母が車線を左に寄れと言うので、「今いっても平気?」と聞いたら
「人に聞かないで自分で確認しなさい」と言う。
「2度と聞かない。絶対に聞かない。その代わりお母さんも全部自分で確認してね。
『どっちだったっけ?』とか『後ろ見て』とか絶対に言わないでよ」と返す。
私は喧嘩旅って感じ。
「Y先生も疲れたでしょうね」と母が言う。間違いない。
2002年08月05日(月)

抱茎亭日乗 / エムサク

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