海沿いの初めて通る道を走っていた。 もう外は肌寒かったけれど、空気が澄んでいて 半月も星も綺麗に見える。 そこの道はあの街へ繋がっていた。 何となく、行って見る事にした。
近くはないのに、見慣れた街だった。 当たり前ながら、彼はもういない。 彼が働いていたバーにも。 あのコンビニにも。 寒さに背中を丸めて歩いていたりするはずもないし、 一人で映画を観ていたりもしない。 当たり前ながら、彼はもう此処にはいなかった。
街並みもそこにいる人達も何一つ変わってはいないのに ただ彼だけがこの街には、もういないのだ。 あたしはそれが現実だとちゃんと知っているけれど 何だか凄く不思議な感じがした。 それから少しだけ泣きたくなった。
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