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■ 2005年03月30日(水) 歩道橋と共に消えたもの
通っていた高校の前に歩道橋があった。正門の少しだけ東側にあって、私と同じ駅を利用する生徒は、基本的にその歩道橋を利用するか、車の流れを見て片側1車線、合わせて2車線の道路を突っ切るか、ほんの少し離れた横断歩道を利用するかだった。
1年生の時、友人たちと下校しようと門を出て、歩道橋を渡るのが面倒で道を突っ切ろうとしたことがあった。その時、後ろで校長先生がニコニコしながら見ているのに気付いた私が、道路をまさに渡りかけていた友人達を歩道に引き戻したのだ。歩道橋を使わずに車道を横断すると、校長先生が走って追いかけてきて怒られると聞いていたから。私たちは校長先生に「さようならー」と笑顔で挨拶して、歩道橋を渡って帰った。校長先生ももっと笑顔だった。
私たちが入学した頃、高校は新校舎の建設中だった。2年になり、教室が出来たての新校舎に移ると共に、旧校舎解体のため正門は閉鎖され、それまでの通用門が正門の役目を果たすようになった。通用門は歩道橋より更に東の角を折れた所にあり、傍には横断歩道があったので歩道橋は利用しなくなった。 卒業する頃には、新しい正門が完成した。昔より西側に出来た正門の近くにはまた別の横断歩道があり、歩道橋は勿論通学路も、前から利用していた道より西側の道へと変化したらしい。
* * * 昼、偶然見ていたニュースで、その歩道橋が3月中旬に撤去されたことを知った。
私の入学した頃は、多くの生徒があの歩道橋を利用していたと思う。 しかし、校門の位置が変わったことにより、生徒は歩道橋を利用しなくなった。 ニュースでは、ある日の歩道橋の利用者が僅か18人であったことを報じていた。歩道橋の名前は、「●●高校前歩道橋」。うちの高校に用がない人は、歩道橋よりも東側の横断歩道を渡った方が便利だろうし、うちの高校に用がある人だって、今となっては西側の横断歩道を渡った方が便利だろう。 「役目を終えた歩道橋」 アナウンサーに、そう表現された。
歩道橋が撤去されたことにより、まだ整地作業が終わっていないようだけれど、歩道が広くなるそうだ。視界も広がって、きっと街の景観にも良いことなんだろう。テレビのインタビューに答えていた人たち(高校の生徒はいなかったと思う)も、一様に「良かった」と言っていた。
でも、私の、私たちの思い出が、またひとつ消えてしまった。 高校時代の最初の1年間を過ごした旧校舎時代の思い出の遺物は、相当に少ない。それが少し、寂しい。
歩道橋が消えた街の映像は、たかが歩道橋ひとつなのだけれど、私の知っている街とは明らかに違っていたから。
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・過去の「今日」。
2003年03月30日(日) 桜日和 <画像あり> 2002年03月30日(土) 元を取るために
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