桜が咲いたり雪が降ったり、なかなか忙しい4月になりましたね。 私も体調悪いんだかなんだか、よくわかりません。 時々すごく座っているのがつらくなるけど、ダラダラしてます。 早くスッキリしたいものだ。
さて。今日は久々にアタリだった小説の御紹介を。
どちらも作者は新堂冬樹。 「闇の貴族」(講談社ノベルス/\1300) 「ろくでなし」(講談社ノベルス/\1300) おススメ度 ★★★★☆ 一度、読んでみてほしい
どちらも金融(金貸し)にまつわる人間の暗躍を描く話です。 「ろくでなし」の解説に"暗黒金融ファンタジー"とか書いてありましたが、ファンタジーかどうかは置いておくにしても、かなり暗黒系ではあります。 そして、グロいっすよ。 初期の菊地秀行や平井和正系統が読める人なら大丈夫でしょう。
ちょっと前に馳星周がノワール小説として出てきましたが、彼は「不夜城」以降さっぱりダメですね。持ちネタがひとつしかないのが痛かったのだと思いますが、最近読んだものはどれも全く面白くなかった。 その時ふと気になって手に取ったのが、この新堂冬樹の小説でした。
金融関係の話となると、なんか小難しいんじゃないかとか、専門用語で塗り固められたわりにくだらん話なんじゃないかとか(経済小説のようなものがあるでしょう? あれで面白かった試しがないないので)で敬遠していたんですが、読み始めたらこれがもう、マジでノンストップの面白さ。 文章には時々乱暴な表現("ゴンタ似"…できるかなのゴンタ君に似ているんでしょう)が混じりますが、確かに直感的にすぐ想像できますよね。 何よりストーリーが凄いです。 特に「闇の貴族」は「うっそー、ウヒャー」と叫ばずにはいられない結末が待っていることでしょう。 途中で先の展開が読めてしまっても、よくここまで書ききったなと感心してしまうに違いないのです。
腐女子向けに解説を加えるならば。 「闇の貴族」 主人公の加賀はかつて自分が破滅させた夫婦の子供を引き取って面倒をみています。柴崎というその青年の加賀に対する盲目的な忠誠心、愛情は読んでいて切なくなるほど。 その盲信が欲しいからこそ、加賀は柴崎を可愛がっていたのですが…。 他にも柴崎は犯されちゃったりして、大変。(しかもその相手は…) 「ろくでなし」 かつて凄腕の取り立て屋だった主人公黒木は、今では便利屋に身をやつし、犬の散歩などで金を稼ぐ日々。顧客の一人、元監察医の郷原は妻を亡くした衝撃から男色嗜好となり、黒木を見るたびに「一発ヤラせてくれんかね」と言ってきます。まぁ、言うだけでさわりもしないんですが。 黒木の元部下、速見という青年が、これまた良いのですよ。 すっかり身を持ち崩してジャンキーになってるんですが、どこかで黒木に対する憧れと恐れを抱き続けているのです。 そのふたりが再び出会うまでの無慈悲なまでに最悪なストーリーが、この話のバックボーンになっています。
プロフィールを見ると作者自身も金融業界にいたことがあるらしい。 普通に暮らしていると全く見えてこない裏の世界が、この作品の中には確かに存在しています。 もしかしたら気づかないだけで、本当は現実でもこれに近いことが日夜行われているのかもしれないと思ってしまうぐらいの迫真の描写が続きます。 ヤク中でラリった人の電波な様子や、そこまで追い込んでいく不気味な男たちの様子…。エロい描写もサービス満点。 どちらの話も、かなり盛りだくさんのダークな人間模様とやりきれない結末が待ち受けているのですが、人にすすめずにはいられないのはなぜでしょう? 書いてやるぜ、という作者の意気込みのようなものをヒシヒシと感じます。
三池監督あたりが映像化したら、ものすごいものになりそう。
近頃たるんだ本ばかり読んでいたので、背骨にビシッと気合を入れていただきました。 これからさかのぼってデビュー作を読んでみようと思っています。 最新刊は「カリスマ 上・下」、あの○ウム真理教の話とか。 私としては、このまま暗黒金融系で飛ばしてほしいですね。
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