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2001年02月17日(土)
日本ファンタジー大賞ってどうなの?


さらに風邪モード発動中。くちびるがガサガサします。
今回の風邪はなぜかお腹に響いてまして、外出もままならないのです。
良い天気なのにな…。

調子は今ヒトツですが、快調に読み飛ばしてます。
今日はちょっと前に出た今年の"日本ファンタジーノベル大賞"の優秀賞受賞作っス!
これがまぁ、なんとゆーか…。


「仮想の騎士/斉藤直子」(新潮社:\1400)
おススメ度:★★☆☆☆
       賞モノは図書館で借りるべし

あらすじ:天使の美貌を持つ女装の騎士デオン、関西弁を喋る山師カザノヴァ、年をとらない錬金術師サン・ジェルマン伯爵、カード狂いのフランス国王ルイ十五世、無冠の王妃ポンパドゥール公爵夫人…。
フランス・ロシアの宮廷を股にかけ、女装の騎士が大活躍する新感覚のピカレスク歴史小説。(帯より適当に抜粋)

予想より悪くなかったのでホッとしました。
大きな出版社の賞取りの作品はどちらかというと興醒めなモノが多い中、これはそこそこでしょう。

歴史上有名な人ばかり出てきて、そのキャラ設定は非常に現代風。
はっきり言ってかなり漫画的です。
"ベルばら"を読んで育った世代なので別に"新感覚"とは思えないのですが、審査員の方々にしてみれば思いきったものに感じられるんですかね。

主人公デオンは騎士ですが、普段の姿の時でさえ女性と見まごうばかりの美貌。彼を育てた謎の"先生"。
とくれば、なんだかどこかで聞いたことのあるような…というかヤオイ系の香りがしますね。
このデオン君、美貌のせいで苦労ばかり背負ってしまう不幸な星の下に生まれついているようです。
婚約者とは任務のせいで離れ離れになるわ、任務先では女帝にテゴメにされるわで良いとこ無し。(最後までずっと気の毒です)
もっとも色男で後世名を残すはずのカザノヴァですら関西弁まるだしなんですから、徹底的に今までの歴史上の慣習ともいうべき"無言の掟"を取り去ってしまったあたり、潔さを感じさせます。
(ここでひとつ、異世界の"無言の掟"を提示しておきましょうか。エロ&ヤオイ系の世界では"関西弁をしゃべるキャラ"も必須なのですよ…)

妖しくデオンに固執するサン・ジェルマン伯爵とか…。
なんか冷静に考えると、これはかなり片寄ったハナシですね。
デオンは男女問わず徹底して"受"キャラだし。(この分類が既に間違ってますか?)

悪く言えば"ヤオイのないソレ系のハナシ"ということです。

勿論、デオンを取巻く人々の中には女性もいます。
しかしですね、設定上この時代の女性は皆強くてどちらかというと"毒婦"なのですね。
ポンパドゥール夫人なんか最たるものです。それに対するデオンの婚約者クリスティーヌは百合の香にたとえられる如くの清楚さ。気の毒なくらい美しい女装のデオン(偽名はリア)もまた、並み居る女性陣を押さえて登場します。フランス外交の密使としては抜群の成績を上げてしまったりします。

登場人物だけでも十分"濃ゆい"のに、終盤さらに錬金術やらパラケルススにメスメルやらの怪しげ人物と胡散臭いアイテムが中途半端にてんこ盛りになっていきます。
"永遠薬(エリクシール)"に関する薀蓄…。
そして、このひとこと。
「永遠のものなどこの世には無いのだよ」
さぁて、これまたどこかで聞いたような科白っスね!
(思わず"関口くん"とつけ足したくなります)

いよいよ大詰めとなった物語。
伯爵がデオンに打ち込んだ銃弾をむりやり手術で取り出してみたり、デオンがその"痛みに恍惚"としてみたり大変な様相を呈してきます。
ここに来てようやく伯爵の物凄い妄想に満ちた願望もデオンに明かされます。
それはまぁ読んでいただくとして。

抵抗なく読めたのはヤオイ系のセオリー通りのハナシだったからなのかもしれません。
これぐらいのレベルなら同人誌でも書いてるヒトがいそうですね。
この賞のレベルが落ちたということなのか。
審査員が京極を知らないとか、他の作品のレベルはもっと低いとか、何か原因があるのでしょうか?
小野不由美の「魔性の子」・「東亰異聞」ですらこの賞の優秀賞を取れなかったという記憶があるのですが。

この作家が次に何を書いてくるのか、興味があります。
フランス史を勉強したヒトならば、このまま妙なフランス系のハナシを期待したいものですが、これだけで消えていくのかな…?
あと気になったのが、タイトル。かっちょ悪いっス。

読んでいる間、ずっと本仁戻さんの「探偵青猫」が脳裏にチラついてました。
本仁さんの挿絵なら茜新社あたりでも売れそうなおハナシ。
(ついでにヤオイシーンも2、3書き加えていただければ完璧でしょう!)

真面目な本を選んだつもりが、大変なモノに当たってしまいました。
ハナシとしては"…"なところもあるのですが、珍しい解釈のフランス史と思えば藤本ひとみよりは面白いと思います。
個人的には関西弁のカザノヴァが気になってます。
できれば外伝のような形で彼の冒険も読んでみたいのですが、いかがでしょう。

もっと面白い本にたどりつきたいのになー。
また新たな本を探しに出かけなければ…。