あ〜。今さっきまで大変なモノを読んでいたため、非常に高揚しています。 それについてはまた後日ということで、今日は小説をひとつ。
「夢の中の魚/五條瑛」(集英社:\1700) 評価:★★★☆☆(★ひとつオマケ) 大薮春彦賞受賞記念
あらすじ:どこかに行ってしまいたいと思う少年がいました。そこに韓国国家情報部に属する男を中心にして色々な派閥の人間達が互いに騙しあいを演じながら関わってきます。7編の雑誌掲載分に短い2編を加えた連作集。
「プラチナ・ビーズ」、「スリー・アゲーツ」の通称“鉱石”シリーズで名を馳せた作家です。 この本にも鉱石シリーズの主人公である葉山さんがチラリと出てきます。いかにもオイシイ役どころで。
読んでいる間中ずっと“いつになったらスゴイ展開になるのだろう?”と思いつつページをめくっていたのですが。 遂に最後まで何事もなく終わってしまいました。 風俗で働く外国人女性という、たわいもない話や思わずツッコミたくなるような会話の数々だとか。 それでも洪(ホン)という情報屋がミもフタもないキャラクターで好感が持てます。実際に側にいたら気に障るだろうけど。
しかしねー。この背中がかゆくなるようなベタな話や展開には困っちゃいますね。 結局すごい諜報合戦があるとかじゃなくて“情報はカラダでgetだぜ!”ってことですかい? どうにも夢見がちなある種のハーレクイン物みたいな印象を受けるのです。 連載モノだからしょうがないのかな。
もう言うまでもないことかもしれませんが。 “第二の高村薫”という称号を差し上げたいのであります。
ストーリー的にもキャラ的にも似た傾向を感じるからです。同じ体質です。 殺人犯の孤独だとか社会の歪みだとか(高村)、国家教育だとか日系二世とか帰化だとか(五條)。字面はすごい社会派で時事問題に敏感そうな気配がしますが、実は男同士の“友情”や個人の妄執に話が転換してしまいがちなお二人。
特に五條さんは防衛庁出身だからもっと外国のスパイ小説みたいにクールなものを期待していたんだけど、やはりこの国のオナゴは深くJUNE的なものに侵されていたようです。ダメです。 上司がゲイだったり偉い人が情報と引換えに身体を要求したりしちゃってます。 そういう人がいたっていいんだけど、もっとサラっと。今のようにオナゴが喜ぶような出方をして欲しくないのね。 大薮春彦賞受賞だそうですが、今後もこのままの路線なのかな。
高村薫が休んでいる間にうまく出世したね、チミィって感じ。 とはいえ、新作を心待ちにしている作家には違いないのでありますね。
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