無責任賛歌
日記の表紙へ昨日の日記明日の日記




ホームページプロフィール掲示板「トーキング・ヘッド」メール
藤原敬之(ふじわら・けいし)

↑エンピツ投票ボタン(押すとコメントが変わります)
My追加


2002年01月31日(木) 血管をタテに切る女/アニメ『七人のナナ』第4話/『ガウガウわー太』2巻(梅川和実)ほか

 薬が効いてきたのか、やっと血便が止まる。
 これで油断ができないのが私のカラダで、ちょっとバランスを崩したら、またすぐ元に戻ってしまうのだ。
 でも、まあまあ調子回復とは言えるか。もう仕事は休みたくない。

 朝っぱらから車の中でしげと口喧嘩。
 しげが「イイよね、病気だと仕事サボれて」と言ったのがそもそもの始まり。
 いつもなら、私もまたしげがバカ言ってる、と聞き逃すのだが、昨日の今日なんで、こっちも抑えが利かない。
 「お前、それ本気で言ってるのか? オレがサボってるって」
 「なん、脅迫する気?」
 「何が脅迫だ、お前の物言いについて怒ってんじゃないか!」
 「ほら、やっぱ脅迫やん」
 この被害者ぶる卑怯さ。なんかもー情けなくなってきた。


 日本精神神経学会が、「精神分裂病」を今後「統合失調症」と改めることにしたとか。
 偏見をなくすためってことらしいけどさ、コトバ変えたって、病気に対する偏見自体がなくならなけりゃ、いずれ「統合失調症」だって偏見の目にさらされることになるだろうけどね。
 でも、このコトバが耳慣れないうちは、確かに多少は患者さんがサベツされることが少なくはなるだろう。
 「あの人『統合失調症』なんですって」
 「へええ、そりゃ大変ねえ」(←意味分らずに頷いてる)
 みたいな感じでさ。
 その意味では、とりあえずの「対症療法」にはなりえるし、その間に偏見そのものをなくしていこうってことを考えていくってんなら、まあ、話は分らなくもない。
 でも、まず断言していいと思うが、患者さんや病気に対する差別をなくそうって活動は、多分、全くされない。とりあえず、コトバ変えたからいいや、で放置されるよ、きっと。
 「偏見をなくす」なんて、その人と深く付き合わなきゃできるこっちゃない。それどころか、深く付き合えば付き合うほど、「偏見が深くなる」危険だってあるのだ。自分自身が差別と偏見の塊だって自覚することになるかもしれない(いや、絶対にそうなる)覚悟を、全ての人間にしろってか? そりゃ到底ムリってもんだよ。人間なんてイザってときには弱いんだから。
 あのさ、どうやったって差別される運命にあるなら、そんな「人の眼を避ける」ように逃げ隠れするような消極的な形を取るんじゃなくて、受けた差別をはね返せるような環境をどこかに作っとく必要があるんじゃないの?
 それは例えば法律の改正であったり、もちろん自分自身の力だって必要なんだ。それを今、誰がどこでやってる? 「やってるつもり」のやつらしかいないじゃん。イヤミな言い方になるけど、それじゃまるであえて「差別を温存」してるみたいにすら見えるぞ。
 まずは病気の人たちがもっともっと表に出て行ける、しかも差別されることのない「場」を作んなきゃなんない。ネットは、その環境造りにはすごく適してると思うけど、どうだろうか。
 

 帰りは仕事が遅れて7時。 
 しげ、なんだかブリブリしてるので、そのせいかと思ったら、「ウチ、ADSLがつながらないってよ!」と憤怒の形相(いや、そこまで酷くはないが)。
 よく聞いてみると、一応、申しこみ自体はやってみたんだそうだ。
 ところが、相手の係の人から、「つながることはつながりますが、必ずしもISDNより早くなるとは限りませんよ」と言われたんだと。
 「ああ、ウチはなんて不便なところにあるんだ!」と車を運転しながらしげは天を仰いでいるが(前見ろって)、立地条件だけの問題じゃないようにも思うがなあ。ブロードバンドと言っても、今一つ信頼できない感じだしねえ。
 しげのイライラがこっちにまで移りそうなので、ムリヤリ話題を変えて「そう言えば、頼んどいた洗濯物干し、やった?」と聞く。
 しげ、急に声が萎んで、「……やってない」。
 これで静かになってくれたか……って、問題はなにも解決しとらんがな。はよ洗濯物干せ。
 

 帰宅した途端、しげに電話。
 「なんの電話? 今の」
 「うん、今日またハカセ来るって」
 「来るって……昨日の今日で何しに?」
 「遊びに。友だち連れて来るって」
 「だからあ、部屋が片付いてないのにそう簡単に人呼ぶなよう!」
 じきに穂希嬢、M子さんを連れて来訪。
 劇団の人ではないので芸名はないが、こう、イニシャルで書くっての、何となく「少女A」っぽくてなんか書きにくいな。
 一昔前の女性雑誌によく載ってた非行少女の実録更正モノなんか連想しちゃうのよ(って、いつの時代だ)。

 「ほんの出来心からだった。
 その日を境に、M子の生活は百八十度変わってしまったのだ。
 ポプラの並木道。倶楽部活動ですっかり遅くなってしまったM子を待ち構えている男がいた。
 破れた学生帽。上ボタンを二個も外した学ラン。町内でも札付きのワルと評判のヨシオだった。
 『あっ、あなたは、ヨシオさん!』
 『へっへっへ、M子。今日はずいぶんと、ショッてるじゃねえか』」

 わはははは、昭和30年代だったら、もしかして流行作家になれるかもしれんな、私。……いや、秋元文庫とか、こんな感じの文体、多くってね。
 今でも、「ある女」に小説書かせると、こんな感じの古色蒼然とした小説書くけど。
 ああ、もちろん、しげのことですよ。
 何しろアイツの文体のベースは「南洋一郎」(←ポプラ社の『ルパン全集』の訳・作者ね)だから。
 とゆーか、ある一定の年代の人間まで(多分、昭和50年生まれくらいまで)は、たいてい南洋一郎か江戸川乱歩の文体に影響受けちゃうんじゃないか。特にセリフ回しに。
 何かに驚いたとき、人物のセリフに、つい「あっ」って付けないかな。ルーツはもちろんもっと古いんだろうけれど、直接的には乱歩や洋一郎の文に接したせいでそう書いちゃうんだと思う。そういった自分でも気が付かないところに影響を与えてるとこが、この二人が認められざる巨匠であるってことなんだと思うんだが。

 話が全然逸れたが、M子嬢、穂希嬢と雰囲気がよく似た感じである。
 まあ、穂希嬢とマトモに付きあってられるってことは、もう絶対にエロエロOK、「壁」を作る必要がないってことだろうから、もう初対面だってのに初手から飛ばす飛ばす。ちょっと、ここには書けないけど(^_^;)。いやもう、エロばかりでなく、もう一般の常識では計り知れないことを平気で喋くりまくってるんである。

 え〜っと、以下の内容はちゃんと穂希嬢の許可をとって書いてるので、誤解のないように。
 しげや穂希嬢が先日雑談していて、なんの拍子か、「正しい自殺の仕方」についてのトークが始まったんだとか。
 「確実に死ぬんなら、やっぱり手首切るのが一番ですよね」と穂希嬢。
 しげたち、ウンウンと頷く。
 「で、こないだ自殺しようと思って、手首切ってみたんですよ」
 しげたち、ウンウンと頷く。
 「確実に死ななきゃなあ、と思って、それには血管を切らなきゃと」
 しげたち、ウンウンと頷く。
 「で、左手のここ、血管が浮き出てるでしょ? これを切ろうと思ったんですよ」
 しげたち、ウンウンと頷……きかけて、おや? と首を捻る。
 「で、横に切っても深く切れなかったらいけないなあって、血管に沿ってタテに切ってみたんですけど、これがうまく切れなくて……」
 しげ、穂希嬢の肩をポン、と叩いて一言。
 「ハカセ、動脈と静脈の違いって知ってる?」

 いや、穂希嬢も穂希嬢だが、しげも「どうして自殺なんてしようと思ったの?」とか、そっちのほうを心配しろよ。
 理由を聞かなかったのはなぜ? と、しげに聞いたら「そんなんどうでもいいもん」。
 しげの前では、どんな不幸も相対化されちゃうんだよなあ。
 だからみんな、安心してしげにはいろんな相談持ちかけるんだろうけど。

 そんな話を聞いてたんで、さっそく穂希嬢に聞いてみる。
 「ハカセについてこんな話を聞いたんだけど」
 「なんでしょう?」
 「静脈をタテに切ったとか」
 「ああ、そうなんですよ、おかげで『絶対に自殺できない女』ということで評判をとって」
 評判なんか、それは。
 ともあれ、実にあっけらかんとしたもんだ。どんなフィクションよりも、現実に生きる人間のほうがずっとずっと強く、面白い。
 全く、ウチの劇団の連中にはいろんなことを教えられるばかりだ。穂希嬢も次に自殺するときには失敗しないように確実にね……って違うだろ、オイ。


 アニメ『七人のナナ』第4話「誕生!受験戦隊ナナレンジャー?」。
 そろそろ主題歌、歌えるぞ。カラオケに早く入るといいな♪
 今回、正式にナナたちに愛称がつく。命名者は友達の瞳。正統派メガネっ娘である。そしてナナレンジャーも正式発足(って発足するもんなのか、それ)。
 「ナナっぺ」「ナナっち」「ナナりん」「ナナっこ」「ナナさま」「ナナぽん」と名づけられたラストで、オリジナルのナナが、「私のはないの?」と聞く。
 「ナナはナナでいいじゃない」
 「私も欲しいーい」
 「じゃあ……ナナスケ?」
 「……ただのナナでいい」
 そう言ってうなだれるあたり、定番ギャグではあるけれど、元祖ナナを七人の中に埋没させないための適切な処置である。
 ああ、今川演出、デタラメになりそうで意外とツボは抑えてるな。
 けどまだまだナナレンジャーをドラマの中でどう生かすかは見えてきてはいない。やはり今後の展開を見守ってくことになるかな。


 「何か見たいビデオでもある?」
 と聞くが、「これだけたくさんあると、何を見たらいいのか……」と、穂希嬢、困惑気味。
 「穂希さんはエロが好きだからねえ。穂希さんが満足できるくらいのエロなんてウチには……」
 「いや、私別にエロが専門ってわけじゃ……」
 「おっ、アレがあった!」

 ふと思いついたのは、先日、某所にて手に入れた○○○○○○○○のビデオ。これにはあの○○製のエロアニメや、○○○○が声優として出演している『○○○○○○○ちゃん』というエロアニメも含まれていたのだ。
 エロと言ってもただのエロでない、ストーリーを明かせないのが残念だが、○○○○○に捨てられた○○○○みたいなやつが○○に育てられて○○○○も○○みたいになって○○○○○話とか、○○○にさらわれた恋人を助けるために、○○○○が主人公に○○○○○○○○しようとするが、結局○○○○○○○○○話とか、バカとしか言いようがないアニメが紹介されているのだ。
 こんなもんを妙齢の美女二人に見せるってのも、なんなんだが、案の定、この二人にとっては屁でもない。二人ともツッコミ入れながら受けてることったらない。
 で、見終わったあと、穂希嬢、「これってエロとは少し違うんでは……?」。
 いいじゃないの、気に入ったんなら。
 こうして少しずつでも○○○○○○○○のファンを増やそうという健気な活動なんであるよ。

 そのあと、DVD『少女革命ウテナ アドレッセンス黙示録』なんかを見せてるうちに、もう時間は10時。
 二人とも堪能しきった顔で(何をかなあ)お帰りになったのであった。

 しまった。エロなら『サウスパーク』を見せてやればよかった。


 マンガ、梅川和実『ガウガウわー太』2巻(新潮社・530円)。
 ああ、よかった。ちゃんと連載続いてるみたいで。
 『コミックバンチ』、発行部数が創刊当初の70万部から、やっぱり40万部ほどにまで落ちこんじゃったらしい。ジャンプ方式そのままに、アンケート人気の悪い連載がいくつか切られてく中、『わー太』もちょっと心配してたんだけど、どうやら『バンチ』にも少しはマシな読者がついてたらしいね。もっとも『バンチ』以外で連載した方が、梅川さんの将来にとってもいいんじゃないかって気はしないでもないが。

 今回は二重人格の犬・サンタと、狸のポン吉の復讐話。
 今時、タヌキのネーミングに「ポン吉」はないだろうとは思うが、タヌキ好きの男の子が勝手につけたって設定だから仕方ないか。妙にタヌキ伝説に詳しくて「団三郎」とかつけられても困るし。
 しかし、さすがに獣医さんのマンガだけはある。
 佐々木倫子の『動物のお医者さん』も好きなマンガだったけど、作者本人が実際に動物に接していた経験があるかないかの差が如実に出ちゃってるものなあ。『動物のお医者さん』には動物を飼うための覚悟なんてなーんも感じさせないマンガだったもんね(だから『おたんこナース』も徹頭徹尾ギャグかと思って読んだら結構マジメだったんで逆に引いちゃった面もある)。
 なんかもー、「かわいい』だけでペット買っちゃう人間のエゴイズムを告発してるようなもんなんで、『ハム太郎』のロコちゃんみたいな女の子が読んだら、胸をグサッと刺されちゃうんじゃないか。
 動物に意志がある、という昔ながらのメルヘンチックな設定であるにもかかわらず、ファンタジーにはなってない。サンタの病気も「膵外分泌不全」という食物から栄養を吸収する酵素が膵臓からうまく分泌されない病気(って、人間で言えば糖尿病じゃんか。ああ、仲間だ!)。実にリアルだ。
 だからサンタが二重人格になって、ゴミをあさったり、人を襲ったりしても、そういうこともありえることかもなあ、と納得してしまうのだ。
 確かに、動物の気持ちが分らない人間に対する告発的な面はあるのだが、それが説教臭くは見えないのは、何より「動物とどうしたらいい関係を作って行けるのか」という方に作者の目が向いているからだろう。
 外に向けて声高に叫ぶより、まず自分の足元をキチンと作っていくって態度が好感を呼んでると思うんである。

 『バンチ』買ってる人は、アンケートに『ガウガウわー太』って書いてね♪ 


 マンガ、柴田錬三郎原作・柳川喜弘作画『眠狂四郎』2巻(新潮社・530円)。
 あっはっは、ついに出たぞ高姫。
 狂四郎の敵は何人も現れたが、その筆頭と言えるのがこの驕慢な性悪女(マンガじゃ「こうひめ」とルビ打ってるけど、これ「たかひめ」じゃないのか)。
 総勢55人に及んだ11代将軍家斉の娘の一人(実在)。自分になびかぬ狂四郎を逆恨みし、執拗に刺客を送り続ける様子は、原作のページをめくるほどに凄みを増していた(女が権力を握れば戦争は起こらない、なんてタワゴト言ってるやつがいるが、西大后の例はどうなるかね。淀君はどうなるんだよ)。
 原作の柴田錬三郎さん、こういう権力握った女が自分のヒステリーで世の中をシッチャカメッチャカにする話が大好きらしく、もちろん淀君をモチーフにした作品なんかもたくさん書いている。けれど、狂四郎を手玉に取れるだけのキャラクターとして、この高姫は、シバレン悪のヒロイン中でも、白眉であろう。
 映画版『眠狂四郎勝負』では久保菜穂子が演じていたが、まだまだ毒が足りない。後の直接の原作がない『眠狂四郎女妖剣/多情剣』に登場した菊姫や、『眠狂四郎人肌蜘蛛』の土門紫の方がずっと妖艶かつ情念のかたまりのように描かれている。
 このマンガの高姫がこれからどうバケて行くか。
 米俵の上に立膝で座り、酒かっ食らってる豪快な姿を見せてくれてるけれど、これくらいじゃまだまだ。女性のキャラの描き分けがもう一つのところがあるので、もちっと精進してもらいたいところである。


 マンガ、雷句誠『金色のガッシュ!!』4巻(小学館・410円)。
 「残りの魔物が70名」と発表されたけれど、つまり「ある程度の長期連載」が保証されたってことだね、よかったよかった。10週打ちきりだったら、こんな数も出せないもの。
 もちろん、その70名が全員、ガッシュと清麿を襲ってくるはずもないから、二人の戦いは、せいぜいあと二、三十回ってとこなんだろうけれど、それでも10巻くらい、2年くらいは連載が続いてくれそうだ。ジャンプと違ってサンデーは人気が多少落ちても、まとまりがつくまでは連載を許してくれるところだから、雷句さんも自由に物語を広げてくれそうで、楽しみである。
 今巻、既に本筋と全く関係ない「巨大母」や「最低先生」なんてエピソードも入ってるし。
 頭はいいけど学校を休みがちな清麿を気に入らない遠山先生、「100点取られるのが口惜しい」とデタラメな問題ばかり出す。
 「重要問題(配点50点)私(遠山先生)の初恋はいつだ? そして相手は誰だ? フフフフ……どうだこの問題は! 授業でもやってない問題だ。解けるものなら解くがいい! フフフフフ……フハハハハ……ハーッハッハッハ!!」
 もちろん、遠山先生、このあとクラス全員に袋叩きにあうのである(^_^;)。
 「最低先生」じゃなくて「最バカ先生」だろ、これ。
 この、藤田和日郎譲りのムリヤリギャグ、しょーもないんだけど、好きなんスよ、すみません。

2001年01月31日(水) そうか、最近匂いに敏感になったのはそのせいか/『鉄甲軍団』(横山光輝)



↑エンピツ投票ボタン
日記の表紙へ昨日の日記明日の日記

☆劇団メンバー日記リンク☆


藤原敬之(ふじわら・けいし)