無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年11月22日(木) 親の死にメよりアニメ/アニメ『ナジカ電撃作戦』MISSION 007/『MISTERジパング』7巻(椎名高志)ほか

オタアミ当日まであと日! カウントダウン2!


 何日か前のしげとの会話だけれど、ちょっと思い出したので、改めて記録。

 「あのね、『だよ〜ん』を車の窓に貼ったから、あとで見てみて」
 しげがいきなりそんなことを言うので、ちょっと驚いた。車の窓にステッカーみたいなのを貼るやつは多いが(内心アホかと思っちゃいるが)、わが女房ドノまでそんなアホの仲間になろうとはと落胆したばかりではない。よりにもよって、なんで「だよ〜ん」。
 どんな情けない様子になってるかと、車を見てみたら、窓に貼ってあったのは「ダヤン」(←猫)。

 ……だからその「似てるコトバは全部同じもの」って発想でものを考えるクセ、なんとかせい(-_-;)。


 今日も職場への送り迎えはしげの車で。
 読者の方の中には、運転手付きの車を手に入れたようで、なんて贅沢なやつなんだとお思いの方もいらっしゃるかもしれないが、主導権はしげの方にあるので、うらやましいことでもなんでもないんである。
 今日も帰りが予定より遅くなって、職場を出たのが6時20分。今日はしげは、7時からの仕事で、間に合うのにギリギリの時刻だ。
 「あと1分遅れたらおいて帰るつもりだった」と、しげが芥川龍之介の『杜子春』の鉄冠子仙人みたいな無慈悲なことを言う。
 かと言って、私が怒って「私に1分間時間を下さい」と鈴木健二で対抗しても勝てやしない。
 結局、そのまま時間がないと言うので、しげのバイト先のリンガーハットまで同伴。どうせ晩飯もここで食えばいいかと、皿うどんを注文。新発売で小振りの明太子ご飯があったので、それも注文。昼飯食ってないから、これくらい食べても太りゃすまい。
 しかし、妙なもので、あのリンガーハットの制服着てる時のしげって、いつも以上にコロコロと丸っこく見える。しかも、しげ、営業用に声のトーンを上げているのだけれど、目と顔は全然笑ってないので、ちょっと怖いのである。接客業だってのに、もちっと愛想よくなれんものだろうかねえ。
 しげの言う、「店員全員から評判の悪い」新しく入ったマネージャーさん、何やら問題のある人だという話であったが、見た目の感じはそんなにヘンな雰囲気の人ではない。まあ、チラッと見ただけで、その人の人格を見抜けるほどの眼力は私にはないので、一見フツーに見えて実はこの人が……なんてコトもないわけではなかろうが、話を面白くするための誇張と勘違いだけで生きてるようなしげのハナシだから、どこまでが本当のことやらアテにならない。
 こんな書き方すると、そのマネージャーさんにどんな黒いウワサがあるのかと気になる方もおられましょうが、まあ、他人のプライバシーに関するコトなんで、書くのは控えときます。
 ……かえって事実よりずっと黒い想像されちゃうかな(^_^;)。

 食後は自宅まで歩き。
 帰りにセブンイレブンで、飲み物その他を買い物する。
 しげからは、「今日は10時には帰るから、それまでに部屋を片付けといてね」と言われるが、終日の仕事でぶっくたびれていたので、なんだか頭がぼーっとしていて、遅々として進まない。
 明後日にはよしひと嬢が泊まりに来るというので、ともかくまた、床の上を歩けるスペースは作っておかねねばと、乱雑に山積みされたビデオと本をなんとか部屋の隅に寄せていく。
 そうこうするうちに10時を過ぎたが、今日は早く帰れると言っていたはずのしげが全然帰って来ない。つい先日も「3時に帰る」とか言っときながら、急に仕事が忙しくなって、結局帰ってきたのが朝の6時を過ぎてたことがあったけど、リンガーハットに夜中の4時5時に来る客って、いったいどんなんなんだよ。

 世間の人は、妻の帰りが遅かったりすると、もしかして浮気でもしてるんじゃないかとお疑いなるかもしれないが、しげの場合、それは絶対にありえない。
 だって今日は『ナジカ電撃作戦』があるから(^^)。まず確実にしげは浮気よりもウチで『ナジカ』を見る方を選ぶやつなんである。まあ、私もそうなんだが。


 CSキッズステーション『ハンドメイド・メイ』第10話「メイっぱい」。
 今までロクに見てなかったけど、最終回(たった10話って……本気で短いんでやんの)だけ見てもたいして面白くないな。
 よく分らんが未来から来たメイドロボットがみんな主人公の男の子のところに押しかけてきたって話らしい。まあ、『ああっ女神さま』っつーか『ラブひな』っつーか、あの手のパターンのロボット版ですわな。最終回も、まあありきたりと言えばありきたり。ウィルスに感染して危ない(ロボットだけにコンピュータウィルスにっちゅーことやね)ほかのメイドロボットたちを、主役のメイが助けようとするけれど、その過程でメモリーが初期化されちゃって……って、もしかしてこれまでのハナシをじっくり見てたら面白く感じてたかもしれないが、私はもう今更またかいってな感じでこの手のパターンはちと食傷気味だ。
 メイの声が『彼氏彼女の事情』にも出てた山本麻里安なんだな。かわいらしい声ではあるけれど、どうも印象に残りにくい。ハタチも過ぎたし、さて声優界で生き残れるかどうかはこれからだろうな。


 『ナジカ電撃作戦』MISSION 007「殺意の弾丸は乾いた微笑みと共に」。
 過剰運用のせいでメンテナンス中の(と言っていいんだよな、ヒューマリットなんだし)リラがいないので、ナジカの今日の任務は単独行動。
 「リラがいなくて大丈夫かね」
 「お忘れですか? 私はもともと一人なんですよ」
 一見冷たく聞こえるこのセリフも伏線なんだよな。本当はナジカは少しずつリラに、というよりはヒューマリット全般に対して心を通わせるようになっているのだが、そのリラがいない時に、いかにもヒューマリット開発に関わっていそうな天才少女数学者スワンニーを保護する任務がナジカに下るってのがなかなか脚本、考えてあるね。
 やっぱり毎回パンチラ尻見せは盛り沢山なんだが、それを抜きにしても(いや、抜きにしちゃ語れんが)スパイアクションドラマとして佳作にし上がってることは間違いないのだ。

 で、そのあとの『アニメぱらだいす』ではリラ役の井端珠里がゲスト出演してたんだけど、この子まだ中学生なんだね。あのシロウトっぽい声は演技とばかりは言えないわけだ。いや、感情に乏しいヒューマリットって設定には実に合ってるんだけども。
 中学生なのに背が意外に高い。見た目170センチくらいあるんじゃないか。そのせいなのか、猫背でずいぶん姿勢が悪い。役者としてやってくなら、声優ばかりじゃなくて舞台での演技なんかもしていかないといけないんじゃないかな、なんてどうもこのトシになると新人さんに対して勝手な世話焼き発言が多くなるな。これは決して私がロリコンなせいだからではないぞ。
 いや、ホント。
 『エイリアン9』の大谷ゆりの声もこの子がアテてたのか。シロウトっぽい声優を使うことに反感を示す人もいるが、例えどんなにうまい声優さんを使っても、子供の自然な演技にはかなわないってことはあるんである。
 『となりのトトロ』と『火垂るの墓』が併映で公開された時、映画的な完成度は『トトロ』の方が優れていたにもかかわらず、声優に関しては本当に子供を使っていた『火垂る』の方がはるかにリアリティがあったことを考えると、私はやはり「日本の声優は世界イチィィィィィ!」なんて押井守みたいなことは言いたくないんである。
 あと『キカイダー01』の第一巻の宣伝と、関智一と森久保祥太郎の対談もあったが、チラッと見ただけでは前作より作画レベルは落ちている感じ。けれど対談では前作よりずっと01のイメージに引きずられてアクション中心の話になってるらしい。さて、それで果たして原作のあの悲しいラストにちゃんと収斂されていくんだろうか。ちょっと不安要素が結構あるぞ。


 結局、しげが帰って来たのは12時。
 「何でそんなに遅くなったん」
 「いきなり店長がこけてケガした」
 「……なんじゃそりゃ」
 「だから、椅子に乗って何か上にある物とろうとして、コケたんよ。で、介抱してるうちに客がドドッと来やがって、帰れなくなった。『ナジカ』今日はナマで見れると思ったのに」
 ……「ナマで見る」って、コトバの使い方間違ってるぞ(^_^;)。
 でもヒトのケガの心配よりも、仕事よりもアニメの方が気になるというのはなんとオタク道に適っていることか。しげは妻として女として人間としては最低だが、オタクとしては真に鬼畜であり、称賛に値するものだ。
 いっぺん、オタク版『杜子春』を書いてみたいんだよな。当然ラストは両親が鞭打たれていても懸命にアタマの中でクラリスやヒルダや手塚治虫キャラの女の子のナマ足や『ガス人間第1号』に出た時の八千草薫のことを妄想しながら絶対に口をきかないのだ(←ヤなやつだね)。
 しげをモデルにして女版で書くという手もあるがそうすると頭の中の妄想がダン・エイクロイドのみになるのでちとこれは面白くない。やっぱり男の邪念がパロディにするには一番か。
 でもそんなの、既に誰かが書いてるかもなあ。もしリクエストがあれば、連載小説ってことで書いていこうかくらい考えてるけど、数少ない(←本気でそう思ってるので、想定してるヒトって10人に満たない)読者のみなさん、いかがでしょう?


 マンガ、モンキー・パンチ原作監修・山上正月作画『ルパン三世Y』10・11巻(双葉社・840円)。
 総集編を雑誌で読んでるし、と思って単行本の方はじっくり読んでなかったんだけど、なぜか読み損なってたエピソードもあった。
 総集編に収録されなかったのか、単に私が買い損ねてたのか。もう、これだけ本買ってると、その辺の記憶は曖昧だ。
 巻を追うごとに峰不二子がかわいいだけの女になっていったり、悪役がもう「バカな金持ち」ってパターンのやつらばかりで工夫がなかったりと、もの足りないところが多くなってきて、正直言って飽きてきてんだけど、原作マンガファンも旧シリーズファンも新シリーズファンもすべてを満足させる作品なんてもはや作れっこないんだから、まあこんなもんでもしゃあないか。


 マンガ、鈴木由美子『ビバ! 山田バーバラ』1巻(講談社・410円)。
 実はウチには鈴木由美子が『白鳥麗子でございます!』以下全て揃っていたりする。しげが新刊が出るたび必ず買ってくるのだが、本人は「別にファンじゃない」と言い張っている。
 でも、私は知っているのだ。
 しげが『白鳥麗子』を読みながら泣いていたことを。
 鈴木さんの作品、なんだか女性の涙腺を刺激するツボみたいなものを押すテクニックが絶妙らしいんだよね。
 この『山田バーバラ』でも、38歳のオバサンが偶然冷蔵庫の中に入って20歳のころの自分に戻れることを知り、若い男の子に恋をするって話なんだけれど、設定自体は考えてみたらかなりムチャクチャだ。なのに、やはりその「健気さ」が感動を呼ぶのは、かつて『白鳥麗子』の勘違いな恋に涙した元少女たちの心を打ったのと同じで、女性が男性よりもはるかに壊れやすい「夢」の中に生きているからなんじゃないだろうか。
 「美」は必ず移ろう。男なら、そんなものに夢を託したりはしない。もっと確固たる夢、永遠に続く夢を見ようとする。だから、儚い夢にすがりつく女性を蔑み、差別もする。
 例えば「そんなにまでして男にもてたいのか」なんて言いかたで。
 けれどどうだろう、自分を整形しててでも美しくなりたいという女性の気持ちは、決して単純に「男にもてたいからだ」なんてところに収斂されちゃうようなものではないんじゃないだろうか。
 多分、長い歴史の中で、ほかのいろんな「夢」は全部男に取られてきちゃってるのだ。「美しさ」ってのは女性にとって、男が女に残してくれたほぼ唯一の夢であり、アイデンティティなんだろう。
 だから、「ビューティコンテスト」なんてのに賛成する女性も反対する女性も、実は「美」に価値を認めざるをえないと考えている点では同じなのだ。それが「男から与えられた」ものであるからこそ、反発する女性もいるわけだし、ほかに自分がすがりつける「夢」がないから結局それにすがりつこうとする女性も現れる。
 その様子を見て男がほくそ笑んでいることをどれだけの女性が自覚しているだろうか。
 実は私も鈴木由美子さんのマンガを読むとつい泣いてしまうのだが、それは白鳥麗子も音無可憐もこの山田バーバラも、恋するオトメというのが、男以外のものに強い充足感を抱くことができない精神的なカ○ワであることをあまりに露骨に表しているからにほかならない。
 語弊があるのを承知でいうが、オタクが自分の趣味に拘泥するのだって、精神的カ○ワである。人間はみな自分が自分であるために何かに拘わろうとし、その結果、どんどんと既知外になっていく。でもその選択肢の多い男に比べて、女はなぜここまでその選択肢を狭められているのだろう。
 「ほかにいくらでも女性の価値を認めさせる道はあるだろう」なんてセリフを簡単に吐けるオトコははっきり言って鈍感だ。女性はどんなにトシをとろうと美にこだわり続ける。その固定観念から本当に抜け出せる女性なんて皆無だ。言わば女性たちはみな不治の病に罹っているようなものなのだ。
 ……そんな話見せつけられりゃ、泣くしかないじゃん。


 マンガ、椎名高志『MISTERジパング』7巻(小学館・410円)。
 黒幕の天回、いったいどの時代から来たのかと気になってたが、昭和20年とはいい時代を選んだなあ。読者の我々は当然それ以降の歴史をも知っているわけで、だからこそ、信長の、「その戦争のあとをお前は見るのをやめて逃げて来たんだろ? 何が『滅亡』だ、見もしなかったくせによ! 地球が吹っ飛んだわけじゃねーんだ、その先にも天下は広がってるはずだぜ!」というセリフを実感できる。
 読者もまた、仮に今の時代に何かの逼塞感を感じていたとしても、そこから他の時代を夢見ることが「逃げ」になるのだという椎名さんのさりげない歴史認識を感じることができるのだ。その「逃げ」を許さない考え方自体にはちょっと異論もあるのだけれど、熱血派というか、いかにもサンデー系列の清く正しい少年マンガの王道を走ってる人なんだなあ、ということはよく分る設定なんだよな、これ。
 しげが折り返しの「あなたの信長度チェック!!」がいたく気に入っていて、「アンタはいくつ?」とか聞いてくる。
 「1、奇襲は得意な方だ。2、圧倒的な強さの敵が、勝負の直前突然不慮の死をとげてくれたことがある。3、大相撲を開催するのが趣味だ。4、家が安土城だ。」
 ……1個もあるか。


 『キネマ旬報』12月上旬号、東映50周年記念号。
 東映が50周年と言われて、え、たったの? と思ってしまう人はやっぱりかなり古い人じゃなかろうか。確かに「東映株式会社」がスタートしたのは50年前の1951年(昭和26年)だけれど、これには前身である東横映画の年数は入ってない。1938年(昭和13年)から数えれば、63年。……それでもなんだか短い気がするなあ。つい何年か前、やたらと「映画100年」なんて言ってたし、東映初期からのスターたち、市川右太衛門、片岡千恵蔵、中村錦之助、大友柳太朗、大川橋蔵、東千代之介、みんな、みんな、死んじゃってるから、なんだか90年くらい歴史があるように錯覚しちゃってるのである。
 やはり映画きそれだけ若い芸術なのである。
 しかし本当に東映も昔日の面影がないなあ。高岩社長が一人気を吐いて、「『千年の恋』みたいなメジャーの作品を作り続けている映画会社は、今のところうちしかない」とか言ってるが、東宝の『ゴジラ』を無視する気か?
 「『鉄道員』は東宝や松竹でやったらヒットしない」って発言も暴言に近い。……松竹はともかく、東宝の方が絶対もっとヒットしたと思うがなあ。直営館で言えば圧倒的に東宝が有利だろうに。
 こういう現実を認識できなくて夢物語ばかり言ってるやつが映画会社の社長に多いのはなぜなんかね。基本的に映画関係者が「山師」だからってことなんだろうか。

2000年11月22日(水) 今日は眠かった……イツモのことだけど/『ルパン三世カルト2001』ほか



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