無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年11月10日(土) AIQ機動!……いや、とっくにしてるんだけども/『不死身探偵オルロック』(G=ヒコロウ)ほか

オタアミ当日まであと14日! 14日しかないのだ!


 気がついたらひと月くらい医者に行っていないのである。
 最近体調が悪いのは薬が切れてるせいかと気付き、慌てて出かけることにする。
 「お〜い、しげ〜、医者行くけど車出してくんない〜?」
 「なん、連れてってほしいとね?」
 しげ、フフンと鼻で笑って嬉しそう。
 私がモノを頼むと決まって機嫌がよくなるのは、常に人の上に立っていないと気がすまないしげの「一番病」(c.水木しげる)であろう。
 ……しげが手塚治虫をキライなのも同属嫌悪なのだろうな。

 病院と言っても、検査はしても結果が出るのは翌日以降だから、薬を貰って帰るだけである。どっちかと言うと、しげと買いものをするほうが目的なので、そのまま博多駅に向かう。
 「……ちょっと待って、博多駅に行くの?」
 「うん。紀伊國屋で買い忘れてる本買いたいんだけど」
 「どこ停めるん。道はあ!」
 「道はあるだろ」
 しげが初心者マークであることを無視して、キツいヒトコトをカマすと、地図を見ながら駅前へ向かったが。
 「はい、そこを左に曲がれば、道が……道が……ない……(・・;)」
 道路工事で、川に架かっていた橋がキレイさっぱりなくなっていたのだ。
 「道ないじゃん!」
 こういう偶然のギャグをカマされると、神様はいるなって気がしてくる。多分、パタリロみたいな顔をしてるんだろう。

 博多駅前でパーキングを探して駐車。
 しげは初めて博多駅まで来れたと有頂天である。
 「紀伊國屋」での目当ては碧也ぴんくの『八犬伝』13巻だったんだけれど、売り切れてるのか見当たらない。北崎拓の『なんてっ探偵アイドル』6巻もない。来ただけ無駄だったかな、と思って本棚をつらつら眺めていたら、『不死身探偵オルロック』のタイトルを発見。
 ネットでお知り合いになった方の日記に、この作品が紹介されていて、『サイボーグ009』のパロが載ってるとか。それだけで買っちゃうというのも衝動買いに近いような感じだけれど、表紙の絵がゲテゲテしてるわりに線がスッキリしてたので、興味が湧いて買う。
 DVDコーナーに行くと、『パールハーバー』発売のチラシが。
 しげが目をウルウルさせて私を見つめながら、意を決したように囁く。
 「……ねえ、たったワンシーンのダン・エイクロイドのために『パールハーバー』買うって言ったら、バカかな」
 「そりゃバカだろ」
 バカだが結局買うことになるんだろうなあ。
 しかし、ダン・エイクロイドが出てれば必ず買う、ということになるのなら、たとえどんなクソ映画でも買っていかねばならなくなるのだ。
 ……『アルマゲドン』とか『タイタニック』にダンが出ていなくてよかった……ってまだ見てないんだけど(^_^;)。
 

 車に乗せてもらうようになって便利になったことは、移動しながら本が読めるようになったことである。これまでは自転車に乗っての移動が殆どだったから移動時間がもったいなくて。
 車中で買ったばかりの『オルロック』を読む。

 マンガ、G=ヒコロウ『不死身探偵オルロック&プロフェッサーシャーボ』(エンターブレイン・703円)。
 パロディネタが古かったり新しかったりで、作者が何歳なんだか見当がつかん。コマの間の取り方がいかにも同人誌で、多分そっちから出て来た人じゃないかとは思うんだが、性別もよくわからんし、絵もいろんなとこから影響受けてる感じで特定しにくい。要するに正体不明。
 マンガ読む場合、作者がどんな人かってこと、あまり関係ないじゃんと言われるかもしれないけれど、パロディマンガの場合は世代ごとの作品に対するアプローチの仕方の違いってものが、作品の評価に直結する場合もあるので、そう無視していいもんでもない。
 もちろん「オルロック」って名前使ってるからって、映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』に思い入れがなきゃならんってことはないんだけれども、『マジンガーZ』や『名探偵カゲマン』、『ワンピース』、『フータくん』、『幽戯王』などなど、パロディにする対象に脈絡がないのが、ちょっと気になる。日野日出志のパロなんか、「ファミ通ブロス」で描いてどれだけの読者がわかるのかなあ。ちょっとひとりよがりになってて、パロディにしきれてないところが結構あるのだ。
 けど描きなれてくうちに間が一定しない「同人誌グセ」も抜けてくだろうし、これから伸びて行きそうな感じはある人だと思う。へたにパロディやらなくて、普通のギャグマンガ描いてみたらいいんじゃないのかなあ。
 
 ウチの近所の知り合いの本屋に寄って、今月の『アニメージュ』と『ニュータイプ』を買う。『アニメージュ』にはスタジオジブリの新作の紹介がちょこっと。『ハウル』と題された新作の監督は『デジモンアドベンチャー』の細田守。
 以前も『海が聞こえる』で外部に監督を依頼したことはあるが、「新しい血」を求めようとするジブリの苦悩が見えるようだ。
 記事を紹介してるのは高校の先輩の高橋望さんだが、この人も一度ジブリを辞めている「出戻り」なのである。いかにも順風満帆に見えるジブリだけど、中の事情はいろいろあるようなんだね。
 フロクで定番の新番アニメソングブックがついてんだけど、歌える曲がイッコもねーよ。もちろん、「知らない」んじゃなくて「歌いたくない」のだ。『009』をどーして裏声で「やーくーそーくーのー、あのばーしょでー、もーおーいーちーどー、かんじてー」とか間延びした歌い方せにゃならんのだ。
 おじさんは悲しいよ。(T^T)(^T )(T )( )( T)( T^)(T^T) ヒュルルルル……。


 スーパー大栄で食料を買い込む。
 しげはひたすら肉・肉・肉。私も一応肉は買うが、他にもエビだのマメだの、いろいろ種類は取り揃えるようにしているのだ。この世に肉屋だけあればいいみたいな単調な食事で、しげはサビシクないのだろうか。


 帰宅して、劇団ホームページの連載小説をちゃちゃっと仕上げる。リレー小説なのに、前回書いたところからてんかいにあまり変化がないので、思いきって登場人物を何人か殺す。次回、オチを書かねばならんのは私なんだが、その段階で10人も20人も人間を書かなきゃならんようになっちゃタマランからだ。
 でもおかげで話が『エヴァンゲリオン』モドキになってきた。あまり似ないようにどう変化させてオチをつけるか考えるのは結構大変だと思うんである。他のメンバーのみなさん、あまり私に苦労させないで下さいね(^_^;)。

 
 アニメ『バンパイヤンキッズ』第5話「バンパイヤンハンターと対決ゾヨ」。
 やっぱりアタマから見てないと細かい設定が解らない。
 バンパイヤンのパパさん、風船見て狼男に変身しちゃったけど、バンパイヤンって吸血鬼じゃないのか。
 バンパイヤンハンターのゴドーとヘルヘル(この爺さんが「ヘルシング教授」の役回りなのかな?)が今回から新登場らしいのだが、こいつらの話聞いてても、どうしてバンパイヤンが退治されなきゃならないのかがよく解らない。要するにモンスターだから? となると、今後お話は「モンスターだって仲間なんだ!」みたいな方向に流れそうで、ちょっと興味は半減。裏番組の『カスミン』1本に絞るかなあ(って、録画するばかりでろくろく見返してないけど)。


 さて、いよいよ「オタクアミーゴス!」公演2週間前ということで、今日は8時からAIQの会合がある予定。
 しげと二人で待ち合わせ場所の天神地下街中央広場に十分前に着くが、まだどなたの姿も見えない。
 さては、と福家書店を覗いてみたら、アンジェリーナさんがおられた。
 「誰か福家にいるかと思って」とおっしゃってたが、誰の考えることも同じである。
 時間ピッタリにしおやさん、エロの冒険者さんが合流して、打ち合わせは地下街のロッテリアで。遅れてぴんでんさん、ゴクウくんも合流。
 福家書店でのチケットの売り上げ、現時点で昨年より30枚ほど少ないようなのである。販促がうまく行ってないということもあるのかもしれないが、どうも福岡のオタクの方々の食い付きがイマイチな気がしてならない。潜在的なオタクはもっともっと多い気がするのに、こうも売り上げが伸びないというのはやはりこれも不況の影響だろうか。
 ウチの劇団のメンツもチケットを買ってくれない、それどころかみんなプータローばかりで劇団の月千円の会費も払わない、という話をしたら、しおやさんから「情熱がないのか」とキビシイことを言われる。客観的に見てもそれはそのとおりなんで、もちっとなんとかならんかとは思うのだが、実際、みんな悲惨な生活してるからねえ。けど少なくとも○○○○○○○で○○○○○○○○になって、○○○円○○○で、○○作ってるアホンダラからは多少は搾り取ってもいいかもしれんとは思う。

 まあ、それはそれとして、お互いなかなか打ち合わせの時間が取れないとは言え、当日の役割分担が2週間前というのは準備という点で心細い。お話を伺う限り、当日の舞台、殆どエロさん、ぴんでんさんにまかせっきりになりそうだが、お二人に事故があったらどうするか。
 我々夫婦は警備の係になったので、直接機材のことについては口は出せないが、いざという時、近所から機材をレンタルできるところを確保しておくとかしてあるのだろうか、とか余計なことが気になる。
 MCはZUBATさんにお願いしたいということだが、いろいろとご都合もあろうに、当日は絶対来られるものとみなさん決めつけている。多分私もその通りだとは思うが(^_^;)、やはり次善の策は講じておく必要があるのではないか。もちろん、エロさんにやっていただく以外ないのだが(^o^)。
 しげは私よりも神経質で、当日のタイムスケジュールが判然としないことに不安感を抱いている。もちろん、フタを空けてみねばわからないことも多かろうが、あまり交替などは気にせず、定位置で動かないスタッフもいたほうがいいとは思うんである。
 昔、ある上映会を企画した時、私がリーダーみたいな役割だったおかげで、映画館のロビーに控えっぱなしで全く映画が見られなかったことがあったが、スタッフってのはそんなもんだと思っているのである。
 ……なんでこんなこと言ってるかというと、去年のオタアミで、スタッフが会場の比較的前の方で観覧していたのを唐沢俊一さんが「スタッフがあんないい席で見てる!」って見咎めたってことがあって(もちろんギャグでなんだけれども)、それが気になっちゃってるからなんだね。やっぱ、スタッフは控え目にしてないと、「きらら博」の二の舞になっちゃうと思う。


 打ち合わせが一通り済んだので、某居酒屋に移動して(名前を明かしてない理由はおわかりですね。ハイ、貶すためです)、ひたすらオタクばなし。
 といっても面白い話は殆どぴんでんさんの○○話なので、なかなかここには書けなくて困る(+_+)。
 「いやあ、今、一番純な人たちって、○○○○○関係の人ですよ」
 私はよく分らないから、頷くしかないのだ(^_^;)。
 東京、札幌のオタクアミーゴスにまで出張っていかれているので、そこでのネタの報告もしてくださるが、これも他言無用になっているので、やっぱり書けない。なんでも札幌のお客さんはエロネタだと引くそうだが。根性座ってないぞ、北海道人。
 全体、オタクアミーゴスの宣伝をしたくても、そのネタ自体、門外不出、禁断の過激ネタが多いのでやるにやれないのだ。こんなに面白いのになあ、どう面白いか具体的に言えないんだものなあ。
 エロさんから新購入のプロジェクターPIANOで再生した『ウルトラQ』がいかに美しいかを聞かされて垂涎の思い。こういう話を聞くにつけ、いつかオカネモチになりたいとは思うのである。

 それにしてもこの居酒屋、店に入って案内されたはいいものの、そのままほったらかしでおしぼり一つ持ってこないわ注文は取りに来ないわ頼んでも品はないわ、いくら忙しくて人手が足りないからって、ほどがあろうってものである。おかげでゴクウくんがパシリになって注文取りに行ったり来たり。ぴんでんさんから「おまえは今からおれのロプロスだ!」と名前を勝手に変えられる始末(^o^)。
 今、流行りのトンとろ、これはまあ美味かったが、所詮はキワモノ、値段が安いこと以外でとりたてて目玉になるような料理もないのである。
 初めはここをオタクアミーゴスのお三方のご接待に使う予定だったらしいが、即座に中止決定。しかしそうなると今からまた一席設ける店を探さねばならないということで、これはなかなか大変なことである。
 今日初めて知ったことだが、岡田斗司夫さん、魚類が全くダメなんだそうな。博多の有名どころの店というのは、たいていが魚料理の店なので、これはイタい。私のように酒を全く飲まない人間は、もともと宴席になるような店自体、よく知らないのである。場所探しはほかのみなさんにお任せするしかないようである。

 しおやさん、アンジェリーナさんとはここでお別れ、残りのメンツでカラオケへなだれこむ。もちろん、それから先は予想通りのアニソン大会。
 自然とみなさん熱唱系になる。ロプロスくんの超ハスキーボイスの『一休さん』は必聴。
 けれど私がつい、ふざけてボイスチェンジで『悲しみよこんにちは』を女声で歌ったものだから、急にみんなノッて女性ボーカルの歌を歌いまくる(^_^;)。
 エロさんの『愛・おぼえていますか』、これももうなんというか、つまりその、ともかく必聴(^^*)。

 気がつけばもう午前2時。
 帰りは天神から博多駅まで1時間ほどずっと歩いたのだが、さすがにしげが「眠い、トイレ行きたい」と言い出したので、タクシーを拾って帰る。就寝はもう4時。
 明日が休日でよかった(´o`;)。


 夕刊に左幸子死去の報。死因はがんのため。享年71歳。
 一般的には美人とは言えないのかもしれないが、私の個人的な趣味ではこの人の顔(というか表情)は大好きだった。
 妹さんの左時枝も、娘の羽仁未央も好きなんで、私はこういうツリ目でちょっとケンのある顔にヨワイのかも知れない(じゃあ石野真子ファンなのはなぜなんだ)。
 「演技派」との評判は、もっぱら、今村昌平監督『にっぽん昆虫記』、内田吐夢監督『飢餓海峡』の2本の名声によるところが大きかろう。前者は未見だが、後者は社会派推理の名作との評判に騙されて(ミステリじゃないやんけ)ワクワクしてみて、見事に肩透かしを食らった。
 伴淳三郎の演技も『どですかでん』の時のような余裕がないし、三國連太郎の殺害動機も弱い。唯一、救いだったのが、左幸子のかわいらしさだった。
 うん、あの映画の左幸子って、ともかくかわいかったのよ。内田吐夢が凄かったのは、はかなげな印象の売春婦・杉戸八重に、バイタリティの塊みたいな左幸子を配して、なおかつそこに永遠の少女性を与えたことだろう。
 「犬飼さんだ! やっぱり犬飼さんだ!」
 ただ一人自分に優しくしてくれた犬飼多吉を抱きしめながら死んでいく時のその叫びの切なさ。この愛と殺人が交錯するシーンを、後続のミステリ作家がどれだけパクったことか。
 左幸子はこういう「突っ張ってるけどかわいい娼婦」のイメージを、『幕末太陽伝』の「三枚起請」の花魁役で既に演じてたりする。最近は「熟女バトル」の代表の一人みたいな感じでテレビに出ることも多かったけれど、それでも何となくかわいらしさは滲ませていた。
 うん、誤解してる人も多かったかもしれないけれど、かわいい人なんですよ。左さんは。

2000年11月10日(金) 今日は本読みすぎて感想書ききれない/『クトゥルー怪異録』(佐野史郎ほか)ほか



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