無責任賛歌
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2001年08月31日(金) |
おたくはセールス電話、おおくありませんか?/DVD『スペースカウボーイ 特別編』ほか |
8月も今日で終わり。 今年の夏は、ゆっくり休めたような休めなかったような。 でも気疲れ一つしないような生活を望むというのは現代人にとっては最高の贅沢だろう。現実には不可能な話だ。 そう言えば細野不二彦の『りざべーしょんプリーズ』に、忙しいホステスさんたちを、南の島で「何もさせないで」休ませるってのがあったなあ。でもそんな「楽園」を経験しちゃったら、現実に帰るのがイヤになっちゃわないだろうか。 私には、「南の島はこの世の楽園」とするような幻想は、全く興味を引くものではないのである。 尊敬する水木しげる御大がいかに「死ぬときは南の島で死にたい」と仰せられようと、一時期は熱狂的なファンであった原田知世が「ここが私の天国にいちばん近い島です」と言おうと(*^▽^*)、私の心に南洋への憧憬は生じない。 どんなに平和で悩みのない世界でも、活字と映画と漫画のない世界で暮らしたいとは思わないのだ。文明に毒された哀れな小人と思うなかれ。それがオタクの宿業なのである。
朝っぱらから父から電話。 昔、父の床屋で働いていた職人さんのお母さんが、健康食品の販売なんかをしているのだそうで、私が糖尿だと聞くと、「それはいけないわ、栄養が偏っているのよ、暴飲暴食しているに違いないわ、そのうち痩せ細ってガリガリになって血を吐いて死ぬのよ死ぬのよ死ぬのよ、そうならないためにはこの肝油を買うしかないわ、それしか生き延びる方法はないわ、きっとそうよ絶対そうよ、だから買ってね買ってね買ってね」と言って、その肝油とやらを置いていったそうである。 「すまんが、ヒマな時にでも店に寄って、もらって行ってくれんや」 「いらんわ」 なんだかなあ、知人やら、知人の知人やら、年に一度くらいはこういうセールスが舞い込んでくるのだが、この人たちは私との知り合い関係をやめたいのだろうか。それとも私のことを、いかにも騙されやすい世間知らずのお人好しのアホウの優柔不断の、ちょっとおだててやればすぐその気になって、なんぼでも買うたろか、店ごと持って来いやぁの、大バカ野郎のスカポンタンくらいに侮って売りつけようとしているのだろうか。 買わんて。
そんなことを考えていたら、更に電話のベルが鳴り、「瓦をお求めになりませんか?」
ウチはマンションじゃあ!
昨日に引き続いて『仮面の忍者赤影/金目教編』6、7話を見る。 前回までで霞谷七人衆のうち、悪童子、蟇法師、傀儡甚内は赤影たちと戦って破れている。 最後の、そして最強の七人衆として現れるのが夢堂一ツ目。 演じるは『蒲田行進曲』のヤスのモデルとしても有名な汐路章。甲賀幻妖斎の天津敏と並んで、もう一方の赤影の悪役俳優と言えるのがこの汐路さんなのだが、子供のころの私は、実はあまり汐路さんのことが好きではなかった。 というのが、汐路さんは第四部・魔風編で、頭領の魔風雷丸も演じていたのだが、これが実にひょうきんな役柄。悪の頭領のくせに部下の忍者たちに媚を売ったり、貫禄のないことったら。 悪役の真価とは、いかに貫禄と怖さを表現できるかにあると考えていた私には、汐路さんの演技はまるでオチャラケにしか見えなかったのである。 ……ガキだったとは言え、不明の至り、といはこのことだ。 そのころの私は、一ツ目も、第三部の根来編での夕里彈正(モデルは松永久秀か)もまた汐路さんであることに気がつかなかったのだ。あのひょうきん演技は、天津敏や原健策との差別化を図るための計算に他ならなかった。チンピラヤクザから悪大名まで演じ分けられる汐路さんの演技力あっての役どころだったのである。 夢堂一ツ目は全四部を通じて、最も妖怪的な忍者である。 全身が緑色、死神の持つような鎌をブーメランのように投げ、片目を巨大化させてその目から光線を発するなど、既に人間の域を越えていると言っていい。原作の夢堂典膳が盲目のクール・ガイだったのとは天と地ほども違う。 これはやはり、赤影の製作者たちが山田風太郎のファンだったということなのではないだろうか。 忍者一人一人に個性を持たすのは当然としても、ここまで妖怪にする必要はない。特殊な修業によって身体そのものを変化させることが可能になった、というアイデアは、それまで山田風太郎が唯一無二であった。 「これはいくらなんでもやりすぎだろう」というセーブがかからなかったことが『赤影』の長期放送につながったのだと思う。
しげが「本屋に行く」と突然言い出す。 「ああ、本屋に行くなら付き合おうか」 しげ、ニヤッと笑って、 「私と一緒がいい?」 ……延髄切りでも食らわしてやりたい気分になったが、ここで怒ってたらまた時間が無駄になる。 ニッコリ笑って、 「ああ、一緒がいいよ」と言う。 しげ、でへへへへーと笑う。 更に原爆固めでフォールしてやりたい気分にさせられるがガマン、ガマン。 「博多駅まで足伸ばさないか? ネットカフェにも寄れるしさ」 こないだからしげ、「ネットカフェに行きたい行きたい行きたい」と駄々をこねていたのだ。 しげ、どふぇふぇふぇふぇふぇ〜いと喜色満面。 ああ、こんなに単純な脳みそになれたらどれだけ幸せであろうか。
まず紀伊國屋に寄ろうと思っていたのだが、月末棚ざらえで店休日、間が悪いとはこのことだ。 一階上の「デジタルキャラクターズトータルショップ」……まあ、要するにマンガ・アニメ・ゲームの専門店なんだが、「GAMERS」に回る。 マンガを物色していると、カウンターのところに何やら小さな箱が。 ……「妖怪根付」?! こ、こ、こ、これはあの「百鬼夜行」シリーズのフルタの新作! 造形はもちろん竹谷隆之! ち、ちくしょう、前の第二期シリーズですら集めきれていないっちゅーのに、またこんなシリーズ出しくさりやがって! しかも今度は、前みたいに箱に穴が開いてあって、中の品が何かわかる、なんて親切なこともしてくれてない。 どうせどこぞの店では箱から外に出して揃えたものを2倍ぐらいの値段で売ったりするんだろうけど、そんな詐欺商法に乗りたくはないし、オトナ買いもなんかやらしくってイヤだ。 ……しかも「陰の巻」「陽の巻」合わせて、全24種類〜ぃ? 数学に強い人、全種類集めるためには平均して何個買えばいいか、教えてくんない?
自分で言っておいて失敗したなあ、と思ったのは、インターネットカフェ『POPEYE』、煙草が充満しているのである。 禁煙席もあるにはあるが、喫煙人口がやたらと多いので役に立たない。マンガ読むより、映画見てたほうが楽かなあと思って、DVD『スペースカウボーイ 特別版』を借りる。 字幕で見るか吹き替えで見るか迷ったが、クリント・イーストウッドの声を小林清志さんがアテているのを見て、吹き替えを選択。 説明の必要もなかろうが、イーストウッドの声をアテていた定番は故・山田康雄さんである。つまりこのキャスティング、ルパン三世のあとを次元大介が継いでいるわけで、恐らくその辺の事情もスタッフは鑑みてこの「友情のリレー」を企画したのだろう。 いささかその意図がわざとらしくはあるものの、これで声優さんが張りきらないはずはない。しかもジェームズ・ガーナー(久しぶりっ!)の声がまた大塚周夫さんと来たもんだ。あなた、声優さんにまで爺……失礼、超ベテランをあてるあたりが嬉しくってたまらない。当たり前のように見えるかもしれないけれど、下手したら若手に作り声させて出演量ケチる場合だってあるんだよ。 一応、基本的に私は映画を見るのは原音・字幕派なんだが(ヒアリングが得意なら字幕だっていらないよな)、吹き替えを否定するまでのことはない。 悪口言いたかないけどよ、字幕至上主義で吹き替え声優全般に対して、不当に貶めるような発言するやつは映画の本質も知らんノーテンパーだ。字幕と吹き替え、どちらが上かなんて単純比較ができるものか。どちらも長短があるのである。
で、肝心の映画。 キネ旬で1位取ったってえのが、さて、あのアホどもにこの映画の意味がちゃんと見えてんのかいな、とは思うけれど、実際、悪い出来じゃないのは確かだね。というより、結構な拾いものだよ、これ。 確か「地球の危機をなぜ爺さんに託さにゃならんか」と、その設定のムリっぽさにケチつけてたヒョーロンカがいたが、こういうのが典型的なバカなの。 だからもともとそのムリを見せるための映画なんだってば。 みんな気がついてないみたいだけど、基本的にこれ、純然たるコメディーなんだよ。それに気づかずに上記のような批判してたヤツは、例えば『ゴーストバスターズ』見て、「幽霊なんてこの世にいるものか」と批判するのと同じくらい、バカだってことだな。 勘違いしやすいのは役者がイーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナーと芸達者を揃えているせいなのだろうな。誰一人としてコメディー俳優がいないのだもの。 だけど、ちゃんとコメディー演技してるんだよ、みんな。 あの、冒頭からちゃんとコメディーしてることに気がつかない? 1958年、空軍のパイロットでケンカばかりしているフランクとホーク。 人類初の宇宙パイロットになれるかとNASAの発足式の壇上に登るが、上司の「ご紹介しましょう、記念すべき栄光の宇宙パイロットです!」の声とともに、フランクとホークの“後ろ”から現れたのは、メスのチンパンジー! いや、確かにこれ史実だけどさ、別にホントに「なんでサルを宇宙に送るんだ」って怒ったパイロットはいなかったと思うぞ(^.^;)。 で、この二人、「おまえのせいで宇宙に行けなかったんだ!」と、その後“40年も”、ケンカし続けているのである。 バカだね〜。 この二人と残り二人を含めたチームの名前が「ダイダロス」ってのも人を食ったギャグ。これ、太陽まで飛ぼうとして“墜落”したイカロスの父っつぁまだがね。イカロスは落ちたが、ダイダロスは逃げ出したのである。 『マクロス』の「ダイダロス・アタック」の語源も当然これですわな。何だかこういう言わずもがなのこともつい書いちゃうのも、非オタクの人がこのページを覗いた時のためのフォローであるので、うるさいウンチクだなんて思わないでね。 で、老朽化したロシアの通信衛星を修理するために(あまりに旧式なので、修理のノウハウを知ってるのが「ダイダロスチーム」しかいなかったのだ。わあ、ウソっぽい設定♪)、フランクは「今度こそ宇宙に行こう!」とホークを誘うのだが、意地っ張りのホーク、「だれが今更!」とケンもホロロ。 諦めて残りの二人のところにやってきて、フランク、「ホークのクソ野郎のことは諦めろ」と報告したその後ろから「だれがクソだって? このジジイが」とホーク。 ……どこまで行ってもギャグじゃないの。実際、ギャグの数でその映画をコメディーかそうでないかを見分けるとしたら、この映画、オチに至るまで全編ギャグなのである。ああ、この映画を公開当時、イーストウッドのプライベートフィルムみたいなものかと勘違いして見に行かなかった自分自身の若さゆえの過ち(もちろんダイダロスチームに比べりゃ中年の私だって若手だ)、本気で悔しいぞ。 特に見せ場となるのは、ラスト近くの危機一髪のあたりではなく、爺さんたちがスペースシャトルに乗りこむために訓練に臨むところ。ここが最もギャグの数が多い。 マラソンして3キロ走っただけでバテて「ダメだ、もう走れん!」と言ってたのに、「あ、きれいなネーちゃん」のヒトコトで「何っ!」と走り出すジェリー。うわあ、マンガのような定番ギャグ。でも、これを演じるのがあの『マッシュ』の、『針の眼』の、『SFボディスナッチャー』(笑)の、サザーランドなのよ。みんな70歳になろうかってトシなのにこいつだけ今でも現役ビンビンという設定なのだ。上原謙かい。 フランクとホークがGショック体感装置に乗った途端、遠心力で顔のシワが伸びて若返るというギャグなんか大爆笑。これ、『スパイ・ライク・アス』でも似たようなギャグやってたけど、わざとらしくない分、『スペースカウボーイ』のほうに軍配を挙げよう。 ギャグを挙げ続けてたらキリがないのでこの辺で。少しはこの映画が「コメディー」であること、ご納得頂けただろうか。 だからあのリアリティのないオチについても、感動して泣いたヤツも、逆にシラケたヤツも両方いたかもしれないが、アレは「拍手」するところなのだ。……いいよなあ、「FLY ME TO THE MOON」♪ これ以上のネタバラシは控えるが(いや、実際に見ていただければ、これ以上にギャグはてんこもり、決して退屈はしないのでご安心を)ダイダロスの面々が、『トゥナイト』に出演するシーンがあって、特典映像のメイキングを見て驚いた。 あれ、脚本が全くナシの完全アドリブだったのだ。つまり、四人ともまんまその役になりきって演技していたのだ。 凄いぞ、この映画。 監督のイーストウッドが、初めこの企画に乗り気じゃなかったのに脚本を一読してやる気を出したってのも納得だね。 ああ、DVD買いたいのがまた増えちまったよう。
帰りにスーパーに寄って買い物。巷で話題の「とんとろ」を初めて買う。……話題の一品だけあって、ワンパック420円と高いけど(同じ量の鶏肉が200円前後なのでほぼ2倍)。 でも、ネギで塩焼きしてみると、確かにコリッとした触感が実にうまい。ちょっと塩味をつけすぎたが、味付けが特になくても、炒めるだけで充分美味しい。これはもしかしたらしばらくハマるかも。 ……また体重が戻らないように気をつけないとなあ。
DVD土曜ワイド劇場の江戸川乱歩シリーズ、『浴室の美女/死刑台の美女』見る。ホームページの「映像で見る明智小五郎」のコーナーを作ろうと(こればっかりや)購入したのだが、初期のころの土曜ワイド、結構ヌードに吹き替えを使っていたのだということがよくわかる。……こらこら、ドラマのどこを見てるんだ(^^*)。 女優さんが脱ぎたがらなかった、というより、テレビ的に自主規制してたんだろうな。夏樹陽子も、かたせ莉乃も数年後にはバンバン脱ぎまくるようになるし。 でもなあ、見てすぐ一発で吹き替えとわかるってのはいくら何でもどうか。 夏樹陽子は自他ともに認める超ペチャパイ、別名、男胸である(ひでえ言い方)。どれくらいペチゃかというと葉月里緒菜よりない。それが乳房のシーンになった途端、あるのである。 逆にかたせ莉乃は超巨乳である。確か1メートルあったのをなんぼなんでもと91くらいに少なめに発表していたとウワサに聞いた。……当時、こんな巨乳の吹き替えできるアダルト女優なんていない。で、ヌードになった途端、乳房がしぼむのな。1/5くらいに(笑)。 後年、この二人が脱ぎまくったというのは、理由は正反対でも、「アレは私のチチではない」ということを見せねばならぬと思ったからではないのか(笑)。
初期の土曜ワイド、実際吹き替えのチチばかりで客をバカにするな! と怒ってたのだが(当時私は高校生♪ ……いや、こんなもんですよ、色気づいたバカガキってのは)、珍しく生のヌードを見せたのが『幽霊列車』の浅茅陽子。 これもDVDを買いましたって、ヌード目当てで買ってるように思われたら困るなあ。これ、赤川次郎の新人賞受賞作(これがデビューと錯覚してる人が多いが、赤川さんのデビュー作はテレビ『非情のライセンス』の脚本である)の初映像化で、しかも監督は岡本喜八、自作の映像化のほとんどを「駄作」と言いきる赤川さんが唯一認めた傑作なのだ。 田中邦衛・浅茅陽子の探偵コンビに加え、岡本組の芸達者がズラリ揃ってもう壮観なことったら。内田朝雄、桑山正一、殿山泰司、今福正雄、天本英世、山本麟一、信欣三、小沢栄太郎、今や故人となった方が多いのが悲しい。なんと子役時代の『もののけ姫』のアシタカ、松田洋治までいるのだ。 例の浅茅陽子の入浴シーン、監督のインタビューで事情がわかったのだが、吹き替え女優がドタキャンして、「どうしようか」って言ってたら、浅茅さんが「あたしやるわよ」と言ったんだそうな。女優はこうでないといけない。 原作のミステリーとして弱いところも監督が補完、「ここは描写が足りない」と人物を掘り下げ、「だってそんな設定いらないもの」と、ムダな描写を省く。これだけ原作を批判され、書き換えられたら、原作者としては怒りそうなものだが、その「改変」が的確だったからこそ文句のつけようがなかったのだろう。 何10本とある赤川作品の映像化代表作を一本挙げろといわれたら、私はこの『幽霊列車』を挙げる。 ……ひとつだけ難を言えば、渡辺岳夫の音楽がちょっとだけ重いんだよなあ。
2000年08月31日(木) 耳掻きしてたら血が出た……/『心理試験』(江戸川乱歩)ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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