無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年08月30日(木) 性教育マンガ(* ̄∇ ̄*)/『フリクリ』2巻(GAINAX・ウエダハジメ)ほか

 久しぶりに外は雨天。
 天気予報だと終日雨だとか。
 こんなことなら、やっぱり昨日のうちに外出しとけばよかったなあ。
 でもこれで一日パソコンに向かって日記の更新が出来るぞ。

 ……って、自分の一生、日記に全部費やす気か(-_-;)。

 休みで一日中ずっと家にいても、夜寝る生活は変わらないから、夜仕事に出るしげとは、やはり生活時間帯がズレてしまう。
 夕べもしげは、夜9時に仕事に出かけて、朝3時に帰宅した(らしい)。その間、私はずっと寝ている。こうなると一緒に食事ってのもなかなか難しい。
 しかたなく、食費は折半ということにしてそれぞれ勝手に飯を食おう、ということにしているのだが、しげはしょっちゅう私にタカってくるのだ。
 昨日もしげにせがまれて、棒棒鶏を作ってやったのだが、朝、冷蔵庫を覗いてみると、全く手付かずで残っている。
 味付けが気に入らなかったのかどうか分らないが、自分からせがんでおいて、箸もつけないのかとムッとして、仕方なく自分で食べる。

 その直後にしげが起きてきて、すごく悲しそうな顔。
 「あんた、棒棒鳥食べたね?!」
 「……残しといても腐るだろう」
 「朝、帰ってきたら食べようって楽しみにしてたのに、なくなってたから、悲しかったんよ」
 「……何言ってるんだ? 俺が食ったの、今しがたぞ?」
 「ええっ?! だって、冷蔵庫覗いたら、食べられてて……」
 「お前が食べてなかったから、仕方なく俺が食べたんじゃないか。……こんなでかいドンブリ、どうして見逃す?」
 「だって見たらなかったんだもん!」

 ……最初、私は、棒棒鶏を食べそこなったウラミを私に押しつけるために、しげがウソをついているのではないかと思った。
 でも、そこまでの知恵が回るほどしげは頭がよくない。
 そして気がついた。
 多分、しげが「冷蔵庫を覗いた」というのは、「夢」だ。
 いくら注意力のないスカポンタンなしげでも、冷蔵庫の扉を開ければ一番目のつくところに置いてあるドンブリを見逃すなんてことはありえない。
 しげは仕事から帰ってきて、疲れてそのまま寝入ってしまい、夢の中で冷蔵庫を開けたのだろう。けれど、実際には何も食べてないから、腹の膨らむはずがない。それで、夢の中では棒棒鳥が消えてしまっていたのだ。
 目覚めた時には当然、空腹。その空腹感に引きずられて、「棒棒鳥を先に食べられていたからだ」と自分が見た夢を現実と錯覚してしまったものと思われる。
 ……なんだかなあ、自分で書いてても実にウソっぽいけれど、本当にしげは「現実と夢の区別がつかない」やつなのだ。こんなことは実はしょっちゅうなのである。
 仮に、しげに「サンタクロースっていると思う?」と聞いてみてください。ウソでも冗談でもなく、こう答えますから。
 「私のところにはサンタさん、来てくれないの」って。
 

 起きたと思ったらしげ、今度は自動車学校へ行くと言って出て行く。寝ちゃ起き寝ちゃ起きでやはり一日の半分は寝ている計算。
 いい加減「最近寝不足で」なんてウソをつくのはやめたらどうだ。確かに4時間しか寝てない時はあっても、その更に6時間前には12時間ぶっ通しで寝てたりしているのだぞ、お前は。
 日記の更新、パコパコとしていると、しげから電話。
 「ご飯はできてる?」
 ……完全に私をメシスタントにする気だな。
 でもまた怒ってたりしたら、時間のムダだ。しげに時間を取られると、ますます日記を書くのが遅れるなあ、メシを与えとけば食ってる間だけはともかくおとなしくしてるからいいかと、米を炊き、紅しゃけのタルタルソースがけと野菜スープを作る。
 確かに私はしげに「飯を作ってやってもいい」とは言った。でもそれは、しげが「メシの材料を予め買っといてくれれば」との条件付きでである。
 それがいつのまにやら、メシの買い出しも含めて、何から何までしげは私に依存してきているのである。
 なんでこう自分の都合のいいようにものごとを捻じ曲げて解釈するのか。
 で、腹が立ってたので、つい、書きかけていた日記をセーブするのを忘れてしまった。
 電子レンジでシャケを解凍した途端、部屋中のブレーカーが……落・ち・た……。
 うぎゃああああ。
 1時間かけて書いた分が、全部パァァァァァァァ!
 これもみんなしげのせいだあああああ!!(←いや、それはさすがにやつあたりだって)


 韓国、性犯罪者の氏名と顔写真、そして現在の居住地を、ネット公開することにしたのだそうな。
 過去に性犯罪で数度の逮捕歴がある男が、またもや犯行を繰り返したり、訴えられた犯人が逆恨みして出所後に被害者をまた襲う、というケースが相次いだための処置だという。
 アメリカで数年前に成立した「メーガン法」と同様のもので、アメリカの場合も、その犠牲になったメーガンちゃんの親が何万人もの署名を集めてこの法律を成立させた、という経緯がある。
 しかし法律の施行後に、社会復帰した加害者たちが、居住地の住民から暴行を受けるという副産物も生んでいる。
 「性犯罪者を野放しにしてていいのか」
 「社会復帰している加害者の人権を守らなければならない」
 こういうのを二律背反って言うのだよなあ。どう考えたって両者の意見に折り合いのつく妥協点があろうとは思えない。
 ……いや、本当はあるのである。
 性犯罪者には刑罰として「宮刑」を施せばいいのだな。もちろん加害者には通常の結婚生活はできなくなるが、それ以外の社会生活はできる。ちんちん使えなくなるくらいの苦しみは味わってもらわなくちゃ、被害者だって納得すまい。
 子供が作れなくなるような刑は人権侵害だと言うなら、タマは体内に埋めこんで、ちんちんだけ切ればよい。どうしても子供がほしい時は、手術で体外受精させて、相方のカラダに戻してやればいいのである。
 少なくとも「性的快楽」だけは二度と加害者に経験させない、くらいのことはしないと、それこそ被害者の人権を無視して、加害者の人権だけを過剰に重視している、と見なされてしまうだろう。
 実際、これだけネットが広がってる世の中じゃ、どんなに犯人の顔や住所を隠したところで隠しきれるものじゃない。例えば、私ですら酒鬼薔薇聖斗の本名も顔も知ってるのだ。断言してもいいが、もしアメリカなら、酒鬼薔薇、施設を出た途端に殺されるぞ。そしてその犯人のほうは永久に捕まらないだろう。
 加害者の人権を本気で守ろうとするなら、終身刑を導入するか、「宮刑」の実施くらいのことは本気で考えないといかんのじゃないか。


 CSファミリー劇場で『美少女仮面ポワトリン』第6話『清く正しいバリカン婆々』。ゲストのバリカン婆々は市川勇。テレビではチョイ役ばかりだが、東京ヴォードビルショーの舞台でも重要なチョイ役ばかりで(笑)、私の好きな役者さんである。
 しげは今いちヴォードビルの芝居が好きではないようで、福岡公演があってもなかなか一緒に行ってくれない。確かに、ヴォードビルは座長の佐藤B作さん自身、決してうまい役者さんとは言えない。ほかの役者さんたちも、どこか「華」に欠ける。けれど、その、言葉は悪いが「地味」な人たちが集まって、それなりの芝居を作って行こうとしている姿勢、ウチの劇団にも通じるものはないか。
 なのに生意気にウチのメンバーはみんな、役者や劇団に対する好き嫌いがありすぎるのである。いや、趣味の違いをどうこう言いたいわけではない、たいしてその役者さんのことを知りもしないのにエラそうに優劣をつけるようなもの言いするヤツが多いのだ。
 役者としての意識があるのならな、どんなにつまらないと思えるような映画や舞台からでも何かが必ず学べる。そういうものにカネをかけて、銭をドブに捨てるくらいの気持ちがないと、芝居なんかやってけないのである。
 いや、話が横に逸れた(いつもか)。
 『ポワトリン』シリーズ、ほかにも佐藤正宏、田口トモロヲ、大杉漣、蛍雪次朗など、アングラ系の役者さんが、結構出演しているのである。なんで今更『ポワトリン』なんぞと思われてる方もおいででしょうが、なかなか侮れませんよ。


 マンガ、諸星大二郎『栞と紙魚子の夜の魚』(朝日ソノラマ・800円)。
 『ネムキ』連載のホラー・コメディーシリーズ4作目で最終巻。
 いつどういう形で終わってもいいようなスタイルにはなってるけど、実際に終わってしまうとなると寂しいなあ。
 主役の二人、怪奇な事件に巻き込まれることが嫌いだ、みたいなことを言ってるワリに、自分からドツボにハマってばかりいるところが好きだった(特に古本マニアの紙魚子)。
 でもやっぱり周囲にあつまってくる変なキャラクターたちが大好きだった。
 最終作の『夜の魚』、今までの変なキャラクター総登場の巻である。
 怪奇作家の段一知(まあ、このシャレがわからぬ人はこの日記を覗いておられる方の中にはいないであろう)一家、「テケリ・リ!」のクトルーちゃんもいいけれど、謎の大きな顔の奥さんが私のお気に入りだった。
 なんと本作のラストで奥さん、「人間に近く」なってしまう。
 どうなったかはまだ読んでない人のために、ヒ・ミ・ツ(* ̄∇ ̄*)。
 「あたしどうして元に戻らないのかしら、これではあなたに嫌われてしまうわ」
 「ばかなことを言うんじゃないよ、どんな姿をしていてもきみはきみじゃないか」
 セリフだけを聞いているとありきたりだが、段先生は、「本当に奥さんがどんな姿をしていてもいい」のである(笑)。
 たとえ奥さんがダゴンであろうが、ウィルバー・ウェイトリーであろうがナイアルラトテップであろうが栗本薫であろうが(笑)、愛に変わりはないのだ。
 『美女と野獣』を越える究極の愛だな、こりゃ。
 あともう1巻くらい、読みたかったなあ。


 マンガ、原作GAINAX・漫画ウエダハジメ『フリクリ』2巻(講談社・550円)。
 アニメシリーズ、全6巻が完結して、マンガ版もオワリ。
 アニメのほうも相当キレてたが、マンガ版はよりキレていた。
 筋に基づいて絵が描かれるのでなく、絵の流れが筋を紡ぎ出すような展開。故にアニメ版とは若干、内容が異なる。……けれど、その「差異」のおかげで、アニメ版を見たときには気がつかなかった『フリクリ』って作品の精神的構造が見えてきた。
 これはもう、ネタバラシしないと説明ができないので書いちゃうけど、マンガ版で、ナオ太、本当に父親のカモン殺しちゃうのね。
 「男の子はね、父親を殺していいんだよ」
 “父親殺し”と言えば、その心理分析はもう、超有名なアレに決まってますわな(笑)。
 父親を殺せない男の子は男の子ではない(おいおい)。
 あ、物理的に本当にってことじゃなくて、心理的にって意味でね。でも実はその差はたいした違いじゃないのだ。
 男の子が自立できるのは、父親を“本当に”殺せると確信できたときだから。 そして、その確信に向かって、男の子を心を誘ってくれるのが、ファム・ファタールとしての「母親」なのだ。
 ハル子さんは、お母さんだったんだね……って、じゃあ、『エヴァンゲリオン』と全く同じじゃん。
 だからまあ、『フリクリ』ってのは煎じ詰めれば『エヴァ』同様、エディプス・コンプレックスの具現化作品だったわけだけれども、お母さんと「大人のキス」をしたってさ、やっぱり「宇宙」に飛び立つことはできないんだってとこまでそっくりなんだよなあ。
 ということは、原作の鶴巻さん、結局、庵野秀明の掌中の孫悟空だったのかな?
 ……いや、多分そうじゃないな。
 『エヴァ』と『フリクリ』とじゃ、ある一点が決定的に違ってる。
 “ナオ太は14歳じゃない。”
 ……10歳くらいかな。だから、精通はまだないはずだ。
 「女の子」は知らない。
 精通のない男の子が、どんなに辛いか。
 でも、「母親」は知っている。というか、それを知らなければ母親にはなれない(現実にはそれを知らない母親、多過ぎるよな)。
 N.O.は明らかに精通のシンボライズだ。ハル子さんは出そうで出ない、ナオ太くんの未発達の性を、優しくしたり、叩きのめしたり、手練手管で引き出してやってるのだ。
 でも、男の子に本当に「性」が芽生えたら。
 母親は退場します。しなければいけません。
 だから、男の子は、性に目覚める直前の、自分の中にあるモノをどうしたらいいか分らずにもだえているときが、人生で一番辛い時なのだ。
 ……だからまー、なんつーか、『エヴァ』同様、女の子はうっかり『フリクリ』が好きだなんて言わないほうがいいかもねえ。
 ナオ太くんモドキっつーか、シンジくんモドキとゆーか、「ぼくのママになってくれる?」って感じでいながら、実はもう精通しまくりの男に付きまとわれかねないっスから。


 DVD『仮面の忍者赤影/第一部 金目教編』1話〜5話、見る。
 個人ホームページに天津敏さんのコーナーを作ろうと、代表作の一つと言える『赤影』を買っちゃったわけだけど、この作品もしげは嫌っている。
 昔、しげがヒキコモリだった頃(笑)、テレビ番組は面白かろうとつまらなかろうと、片っ端から見てたらしい。その時間帯にやってる番組で、ニュース以外にそれしかなければ、否が応でも見るしかなかったんだって(んなことないだろ)。
 で、「またこれを見なきゃならんのか」という気持ちがますますその作品を嫌いにしてしまうと。
 ……そんな見方してたら、作品の評価自体が歪んじゃうじゃないか。
 古い作品だということ、子供向けの30分番組だということ、故に脚本が単純で意外性に乏しかったり、特撮がチャチだったりという弱点は確かにある。
 しかし、それを補ってあまりあるビジュアルの魅力、特に敵の霞谷七人衆の奇想天外な忍法の数々は、その特撮の稚拙ささえ魅力の一つと思わせるだけの楽しさに満ちているのだ。
 ……コーナーはシュミ特「天津敏大辞典」みたいな感じで作っていこうかなあと思ってるんだけど、これも時間がかかりそうだよなあ。
 

 しげが赤飯を全く食おうとしないので、仕方なく白飯を一合だけ炊く。
 なんでそんなに少なめに炊くかというと、買ったもち米がまだ余ってるからだ。こっちもさっさと赤飯にしないといけないので、とりあえずしげが食べる分だけ白飯を炊いたのだ。
 でもこんな面倒臭いことするくらいなら、もう一つ炊飯器を買って、しげの分はしげの分、私の分は私の分で飯を炊いてたほうがいいなあ。
 ……あっ、それって、家庭内別居みたいなものではないか。しげに好き嫌いさえなければ、こんなことにはならないんだけど。迷惑かけまくってるんだから大概で性根を入れ替えてほしいものである。

2000年08月30日(水) ○○につける薬がほしい……/映画『蝶々失踪事件』ほか



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