無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年04月10日(火) 大江山枕酒呑草子/『カエル屋敷のベンジャミン』(玖保キリコ)ほか

 うひゃひゃ、いったん書いた日記があと三行、というところで突然消えてしまったがや。
 かと言って、短くまとめて書くのも癪なので、大急ぎで書く。多少文章がへんてこなところがあるかもしれないが、そこはお見逃しねがいたい。これでまた鼻血でも出してぶっ倒れたら大笑いだな。

 雨も上がって晴れ晴れとした上天気。
 桜はおおかた散ってしまった、と昨日の日記には書いたが、通勤途中で、満開の桜の木を発見。
 ……なんなんだありゃ。養分がよほどいいのか、根性が座っているのか。
 花壇のアジサイの色が変化していて、その下に死体が埋められていることがバレる、というトリックがミステリにはよく使われているが、桜で何かアイデアが浮かばないかな、としばし考える。
 ところがここ連日、仕事がやたらめったら忙しいので、なんだかワケの解らない妄想しか浮かばない。
 「桜が咲いたように見えたが実はそれはだった」とか、「さくらんぼを食べたら錯乱した」とか、「桜の木を操っているのは実は桜井長一郎である」とか。
 ……最後のはいったい何なんだ(+_+)。
 やはりどこか脳のネジがぶっ飛んでいるのである。

 仕事から帰宅、昨日まで足の踏み場もなかった部屋の中が、ごく細道ではあるが通れるようになっている。
 近々また客があるので、女房がようやく部屋を片付け始めたらしい。
 できればちょくちょく客には来てもらいたいものだ。でなきゃウチはあっという間にゴミの山にうずもれて崩壊してしまう。
 部屋の中央に謎の紙袋が置いてあったので、ハテ、と中を覗いてみた。
 『ONE PIECE』が全巻、さらにはウチにあるジャンプコミックスの一覧表がワープロ打ちされた紙が入れてある。
 つらつらとそのリストを眺めていると、なんだかひどくなつかしい気持ちに襲われてきた。
 『幽&魅衣』、『すすめ!パイレーツ』、『ストップ!ひばりくん』、『まじかるタルるーとくん』、『ついでにとんちんかん』……。アニメ化されたものも多いが、別にアニメになったから買い始めた、ということでなく、ほぼ全て初版で買ってたものばかりだった。先見の明があるな、と威張りたいところだが、数買ってりゃアタリも多いってだけの話なんだよね、実のところ。
 『ブンの青シュン!』とか『三軍神参上!』なんて、今どきゃ誰も覚えちゃいまいな。
 一番古いのは『ハレンチ学園』かな。これ読んでたころは女房なんかこの世に影も形もなかったんだよな。
 ……年月は無情だ(T_T)。
 ……しかしリストを見ているうちに、ハテ、と気づく。
 そもそもこれは何なのだ?
 まとめて袋に入れてあるってことは、誰かに貸そうとしてるんだってことは解る。初めはハカセにかなあ、と思ったのだ。でもそれならウチに直接来ればいいわけだしなあ、と思っていたら。
 夜になって、女房が仕事に出る時、その袋を持っていったので、ようやく仕事先の同僚に貸してあげるのだ、と見当がついた。
 しかしどんなヒトに貸すのだろう。もしかして、あの、強烈に「ヒトがいい」というウワサの、マネージャーさんだろうか。……ウワサしてんのは女房だけど。
 女房の話を信じる限り、マネージャーさんというお方は「青春一直線野郎」である。なにしろ女房に「困ったことがあったら、いつでも僕に相談してネ! 力になるヨ!」と、語尾がカタカナになっちまうようなおヒトだそうだから。
 もしもマネージャーさんが『ONE PIECE』をお読みになったとしたら、どんな反応を示されるのだろうか。
 「やあ、ルフィっていいやつだネ! ボクも冒険の旅に出たくなっちゃったヨ!」
 ……あったこともないヒトをサカナにするのもなんだが、「旅人」が似合いそうなヒトのような気がするなあ。

 藤原道長の『御堂関白記』に、清少納言についての記述があることを知り、興味深く読む。
 藤原保昌の郎等に、清原某という男がいた。ある子細から、頼光四天王によって暗殺されることになるのだが、実はこの男の妹が清少納言である。
 清原邸に四天王が押し入った時、清少納言もそこに同席していた。
 そのとき彼女は僧形だったので、初めは兄ともども殺されかかったそうだ。しかし、とっさに彼女は前をはだけて「私は女よ」と主張し、あわやというところで助かったとか。
 さて、道長はいったいどういう意図でこれを書き残したのだろう。
 清少納言はこのとき既に五十歳、昔日の才女の面影はとうにない。
 もともと、彼女の後ろ盾であった藤原道隆は、道長の兄であり、関白の地位を争ったライバルである。道隆が死に、権勢は道長に移り、必然的に清原家は没落して行くわけだが、老いた彼女へ追い討ちをかけるような文章ではないのか。
 とても清少納言の機転を称えたものとは思えないのである。むしろ、老婆がしなびたチチをほっくりだして命乞いをする姿、それを嘲笑う意図が道長にあったのではないか。
 ヤなやつである。
 『大鏡』なんかじゃ、野心的な偉丈夫として理想化されてる道長だが、
 「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることの なしと思へば」
 なんて堂々と読んじゃう輩がいいやつのはずはないよなあ。
 それにしても、清少納言と頼光四天王との間に面識があったとは意外であった。平安王朝女流文学と、鬼退治の頼光四天王とじゃ、イメージがどうも結びつかないんだよね。
 でも考えてみたら、藤原保昌の妻はあの和泉式部であるわけだし、となれば、清少納言、紫式部と同時代人なのは当たり前なのである。
 金太郎(知ってる人も多いだろうけど、四天王の一人、坂田公時のことね)も『枕草子』や『源氏物語』を読んでたのかなあ。
 彼女たちが『大江山酒呑童子』について書き残してくれなかったのがなんとも残念である。

 『キネマ旬報』4月下旬号、マギー・チャンの表紙が色っぽい。
 ……でもこのひと、昔はたしか「マギー・チョン」って表記してたと思うのに、いつから「チャン」になったのか。まさか差別なんたらが原因じゃあるまいな。
 しかも彼女のフィルモグラフィーを見てもジャッキー・チェンの映画に出てたことなんてまるで書いてない。文芸映画づいた途端、過去のコメディーやアクションものに出演してたことを隠したがる日本のアイドル(安田成美とか有森也美とか)は多いけど、中国人も似たようなものなのかねえ?
 新作映画で面白そうなもの、まずは山本周五郎原作、和田夏十脚本(遺作?)、市川崑監督『かあちゃん』。前回の『どら平太』は浅野ゆう子と菅原文太という二大超大根役者のために惨憺たる出来になっちゃったが、今度は岸恵子だし、ワキも小沢昭一、中村梅雀、江戸家猫八と芸達者が多いから、多少新人を使ってるとはいえ、見られるものになるのではないか。うじきつよしとコロッケがちょっと怖いけど(^_^;)。
 『RED SHADOW 赤影』、白影は竹中直人で、影一族の頭領だそうである。……影烈風斎はどうしたんだよう(・・;)。
 原作の名前を借りるだけで話は全く別物、というのは仕方ないとしても、キャストを見ると随分「小粒」である。敵の頭領が誰なのか、記事が不充分でよく分らない。『キネ旬』はこちらが知りたい情報をまるで掴めてないのが昔からのネックなんだよなあ。
 ささやななえこのマンガの映画化、『いきすだま 生霊』、三輪ひとみ、三輪明日美の姉妹が共演するらしい。『ラブ&ポップ』以来かな? この二人、若手の女性の中ではマジメに役者やろうって感じが見えるので、どんな「恐怖」の表情を見せてくれるのか、期待してしまうのだ。

 テレビを漫然と見ながら、日記を書いたり本を読んだり。
 新番組『めっけMON!』、センスのカケラもないタイトルにまず嫌気。
 松坂牛のフルコースカレーつきだの、職人の手作り柳刃包丁などの値段をゲストに当てさせるってゲーム番組だけど、似たような番組がたしか外国のバラエティーにあったよなあ。……喉元までタイトルが出かかってるのに思い出せんけど。
 それはそれとして、職人を扱ってる番組だってのに、その「芸」を値段に換算しようって下品さにむかっ腹が立って来る。岡江久美子や森公美子が値段を聞くたびに大げさに驚くのが、ヤラセなんだろうけどあまりに不快。
 こんなんなら裏の『伊東家の食卓』を見てりゃよかった。……どっちもどっちか?
 『学校へ行こう』、同様にヤラセがミエミエ。
 「未青年の主張」、野球の審判やってるってオヤジが、娘の彼氏の「今度の休み、娘さんと旅行に……」の発言に「アウト!」……誰が考えたんだこの演出。
 俳優志望という女の子が二人出て来て、「私たちはライバルで〜す、でも連続ドラマじゃ手しか映ってなかったし、2時間ドラマじゃ死体役でしたぁ」
 ……そういう役を卑下するようなことを叫んでるうちは役者にゃ絶対なれねーよ。
 他愛無い番組なんだし、そこまで腹立てんでも、とは思うのだが、演技に関してはどうしても見方がきつくなってしまうのである。
 『ガチンコ』も見たのだが、腹立ったこと以外、内容は一日経ったら殆ど忘れた。
 忘れて別にかまわん番組だけどね。

 マンガ、秋月りす『かしましハウス』6巻。
 四人姉妹の物語、と言ったら、たいていのヒトが『若草物語』を連想するだろうが、多分このマンガは、懐かしのテレビドラマ、『雑居時代』をベースにしている。
 『雑居』の方は、実は五人姉妹なんだけど、性格設定がほとんど一致しているのだ。
 いささかトウが立っていて妹たちに口うるさい長女、冨士真奈美がひとみ姉さん、次女で石立鉄男とくっつく大原麗子は飛ばして、三女で、ボーイッシュ、力持ちの川口晶がふたば、のん気な女子大生の山口いづみがみづえ、そして末っ子で生意気だけど姉妹中で一番のしっかりもの、杉田かおるがよもぎ。
 父子家庭というところも同じだし、『雑居』が栗山家で『かしまし』が野田家、野山つながりってイメージの類似もある。
 『若草物語』はだいぶイメージがずれるんだよね。
 『雑居』の娘たちはそれぞれに経験を積み、新生活を目指して別れて行くけど、『かしまし』のお嬢様がたは、まだもうしバラくはトシをとりそうにない。ひとみ姉さんの花嫁姿が最終回になるのかもなあ。

 マンガ、玖保キリコ『カエル屋敷のベンジャミン』。
 玖保さんのマンガにしては、全1巻で終わり。人気がなかったとは思えないので、多分、初手から短くまとめるつもりだったんだろう。いわゆる『あしながおじさん』もので、あまり長く引いていけるネタではないのだ。……もっとも、これには『キャンデイ・キャンディ』の「丘の上の王子様」という特例がありますが(^_^;)。
 主人公のベンジャミン、扶養能力のない養父母に育てられたために、家族への幻滅と憧れが内面に同居する複雑な性格になっちゃってるのだが、案外イギリスにはこういう子が多いのかもしれない。
 「孤児」とか「母子家庭」とか、昭和四十年代までの梶原一騎マンガや吉屋信子系少女マンガのアイテムのように思われていたネタが、バブルを間に挟んで、リアルな設定となって蘇えってきているのである。もちろんその意味合いは、昔はあった「いつかは貧乏から脱出して幸せになるんだ!」式の、単純な未来への希望を語れなくなっている、という点で、随分変わってきているのだけれど。
 子供を持つ、ということが「家族」を作ることになる……のだろうな、という微妙な自信のなさが、ずっと作品の底流にあるのが見えるのがもの寂しい。
 それにしても、この主人公のベンジャミン、ヒネてるくせに惚れっぽい性格とか、頭でっかちで三白眼な顔とか、ウチの女房によく似ている。……女房の似顔絵書いてやる時にはこれを模写しちゃおうかな。

 つい録画しそこなって、NHK総合『陰陽師』の第二回、後半をナマで見る。
 ……また恋愛ネタかよ。これなら平安ものでやる必然性、まるでないじゃん。だから稲垣に現世と彼岸の間にある味わいを出すのは無理だってば。
 
 時間がゆっくり取れないので、深夜に始まった『鉄甲機ミカヅキ』、録画しているのに見返せない。
 でもどういうわけだか「第二夜」からの放送。……「第一夜」はどうなってんだよう。来月にはもうDVDになるらしいし、結局買えってか。ううううう(T_T)。

 結局書きなおしたら量が増えてしまった。ああ、また眠る時間が減る……。 



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