 |
 |
■■■
■■
■ 何処か遠い国の味。
そのイタリアン・レストランは、埼玉県にあった。 わたしが電車をおりたこともないような駅で、駅舎を出ると空が広がっているようなところ。
所属先の会社のひとたちと一緒に行った上司イチオシのレストランは、さらに10分くらい歩いたところ、静かな静かな住宅街の真ん中にある一軒家だった。
ヨーロッパ風の古い建物を真似た張りぼてのような建物や内装のレストランは、きっと東京にはいてすてるほどあるだろう。 その、底の浅さがすぐにわかってしまうようなものは、しかし意外ともてはやされ、人気があったりする。 そういうものをみれば見るほど、「日本的だ」と感じてしまうのはわたしだけではないはずだ。
だが、夕べのイタリアン・レストランは本物だった。 建物。内装。空気。雰囲気。 いやらしくわざとらしいところがひとつもない。 そのままそこに切り取られて置いていかれたような、ヨーロッパ。そしてイタリアだった。
野菜はその庭で取れた有機のものを使い、ほんとうに甘くて美味しい。 四種類も出たパスタのソースは、それぞれに独特な香り。 日本のイタリアン・レストランではまずありえないような、「本物」の素朴な味がした。 ひとくちいただいた瞬間、ものすごく懐かしい気持ちで心が満たされ、そして「新宿」でこびりついてしまった疲れがゆるりと溶けていくのがわかった。
どこか、懐かしい味。
それは、日本ではない遠い国の味。
イタリアに行ったときか、それとも、どこか別の国のイタリアン・レストランで食べた味か。
わたしがわたしの身体や血のなかにある過去の思い出とつながる。
ほんとうに、すばらしいパスタだった。
2008年08月08日(金)
|
|
 |