あふりかくじらノート
あふりかくじら



 圧倒的なアーティストとは。

敬愛する、あるベリーダンサーがいる。
もちろん、キューバ出身のあのひとだ。

美しく、しなやかで繊細で、メリハリがあってダイナミック。そして、彼女のこころのなかで大切にしている何かが、もうばしばし伝わるのだ。そういう圧倒的なダンスをするひとだ。

その動きひとつで、彼女の生き方とか、ダンスに対する姿勢とか、そういう色んなものがはっきりと伝わってくる。
どんな「アート」でも、技術の先には「魂」がある。

愛して何度も何度も繰り返し観るベリーダンス・スーパースターズのパリにおけるライブのDVD(Live in Paris at the Folies Bergere (Ac3 Dol))がある。
会場の空気が伝わってきて、出演者たちも輝いているそのDVDがあまりにもすてきで、そしてわたしは、彼女の演技を何度も、何度でも見つめる。

何度も観ているのに、涙がにじんでくる。

明らかに彼女がひとと違うところがある。
それは、すべての演目が終わった最後の挨拶の部分だ。

皆、順番に出てきて短くパフォーマンスしながら一礼をするのだけれど、彼女の動きだけは他の人と違う。明らかに、観客に対する感謝の気持ちを、誰よりもはっきりと表しているのだ。その動きはとてもしなやかで、そして魅力的だ。
彼女は、アーティストであり、そしてエンターテイナーなのだ。


わたしにとって圧倒的なダンサーは、このひとと、それからもちろん現在のベリーダンスの師匠。この二人だけだ。
上手いひとはいくらでもいるのだけれど。心に訴えかける何かを持っている。

もちろん、フジコ・ヘミングもそう。



わたしは、そういうアーティストでありたいと思っている。




精神状態が不安定だ。

フジコ・ヘミングの『トロイカ』は手元になかったので、新しく入手。
数日ほど「熟成」させて部屋の空気に馴染ませてから、いまこの瞬間、初めて聴いている。
耳慣れたはずの「幻想即興曲」が、どうしてここまでひとを涙させる。「英雄ポロネーズ」がどうして。
ことばを失う。

こういうとき、わたしのような未熟な物書きは弱い。



あふりかくじら、泣いてばかり。

ウミガメは泣くけれど、ザトウクジラは涙を流すんだろうか。

2008年05月11日(日)
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