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■ 明日からはじまるという気持ち。
これからひとつの場所を去り、まったく新しい生活が始まるというその感覚を、わたしはいままで何度経験しただろう。 たくさん学校を変わり、仕事を変わり、大学院に行き、そうやって暮らすうちにいつしか自分がほんとうに「所属」する場所がないのに気づいていた。 いつもいつも、いつか去るのだと思い、少し長くいると、早く出なくてはと思ったり、もうすでにこの場所が「過去」に分類されて懐かしさを感じたりする。
どこかを去るとき、自分たったひとりの人生を思い出しながら、淋しさに微笑むだけ。
それでも、わたしはたくさんの場所をそれぞれ愛してきたし、そこにいるひとたちのなかでもたくさん大好きなひとに出会えた。たったひとりで、それらに触れてきた。つまり集団や帰属の意識のなかでなく、ある種の客観的な視点で。でも冷めていたわけでもない。わたしはそれぞれに情熱的に関わってきた。そして去ってきた。
作家ベッシー・ヘッドの求めていた「帰属意識」に似たようなものを、わたしも心の奥底で求めている。そしてただひたすら求め続けるだけなのかもしれない。痛いほどに。
やがてわたしはここを去るだろう。 明日去っていくあの子のように。
そしてまた、新しい人生をはじめるのだ。 自分だけの日々を。やりどころのない「懐かしさ」という気持ちを抱えて。
まるでそれが、じぶんのことのように、何だかしんみりしている。 ノラ・ジョーンズを静かにかけながら。ひとり。
2006年10月11日(水)
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