ビルの陰融け残る雪午後三時
冬になり、春が待ち遠しいなと感じる頃になると、 きまって何かを書きたくなる。 俳句、短歌、詩、短編、随筆、日記・・・ 言葉を操る喜び、それ以上に 言葉に自分を探られる快感。 うまくいえないがきっとそのような類の何かが 自分の冷えた身体をほぐしてくれるのだろう。
先週末の雪が、水曜日になっても残っていた。 会社のあるビルの陰。 踏みしめてみると、あの雪の夜と変わらぬ感触。 でもそこには感動はなく。 変われずにいることへの寂しさが漂うように思えた。
夕刻、懐かしい人が訪ねてきた。 昔とちっとも変わらないね、と嬉しそうに言う。 言われてふと、あの雪を思い出す。 思えばあの午後三時、太陽も雲も人も ぼんやりしてしまうあの刻に、 きっぱりと白いままで。
成長はしたい。でも変わらない部分を持っていたい、 それも、きっぱりと。
残雪に我が体重の痕のこし
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