# 『蒲公英』
2002年05月01日(水)


澄み切っているのではない、どこかほんわりとした青空が仰いだ先にあった。
風はなく。雲はまるで昼寝でもしているように空の青の中に身を委ね。
身体を包むうららやかな陽気。
広がる田んぼにはほのかな草の青と、蓮華の紫。
僕と彼は、生きた土の上を歩み進めていく。

時折うたたねから目覚めた春の風が頬を撫でて遠く去っていく。
仰いだ空。白い太陽が目映い。
手をかざし、目を細める。
陽光は春の世界を優しく包む。照らすのでも差すのでもなく、光で包む。
気持ちのいい、春の午後だった。
「眠たくなるな」
笑いを零して小さく呟き、同意を求めて振り返ると、そこに彼はいなかった。
少し前に自分が通り過ぎた場所、道端の一角にしゃがみこむ君を見つける。
ほんの一瞬だけ、具合でも悪いのかと眉を顰める。ほんの一瞬だ。
すぐさまそれが杞憂と頭が思い出す。彼の癖。
道草癖。
「何か見つけたのか」
しゃがみこむ丸い背中に声を掛ける。
膝を抱えた腕に顎を乗せて、熱心に何かを見つめる横顔。
顔を上げて彼がこちらを見た。笑う。
「たんぽぽ」
小さく答える。嬉しそうに頬を綻ばせて僕を見上げていた。
まるで、彼の唇から春が零れ落ちたような、そんな無邪気で暖かい響きだった。
「たんぽぽ?」
笑みで綻ぶその表情を見つめて彼の言葉を繰り返してから、彼が視線をやっていた場所に目を移す。
ちいさなたんぽぽひとつ。
黄色い、花。雑草の中に愛らしく咲いていた。
「本当だ、たんぽぽだな」
顔を見て笑むと、彼が頬を崩して笑い、大きく頷いた。
「可愛いな、たんぽぽ」
嬉しそうに頷いて彼が云った。
自然と僕の顔に笑みが零れる。
僕の顔を見ていた相手の視線が、不意に僕の向こう側の何かを捕らえた。
あ、と口を開いて立ち上がる。僕は目を丸くして彼を見る。
「あっちにいっぱい咲いてる!すっげぇ!」
僕の脇をすり抜けて、彼が駆けて行った。それを僕の目が追う。
春めいた景色に駆けていく背中は、幼子のようだった。
思わず目を細める。
彼が立ち止まって振り返る。
笑顔で僕に、来い、と手で合図する。
春の太陽みたいに、あたたかくて柔らかくて、眩しかった。
「あんまり走ると転ぶぞ」
笑いながら歩き始めた僕の掛けた声に、転ぶか、バァーカ!と悪戯っ子のような顔で返して笑う君のそのあまりにも無邪気な姿が。
僕には、眩しくて。
早く駆け寄って春の太陽を腕の中にすっぽり収めてしまいたくて。
僕は足を速めた。




意味もないショートストーリーでした(笑)
即席で今突然書いてみた。
オリジナルボーイズラブ??

2001年05月01日(火) 脳が寝てるんで。
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