ケイケイの映画日記
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2026年09月23日(水) 「オデュッセイア(IMAX 字幕版)



監督のクリストファー・ノーランは、現在ハリウッドのメインストリームを驀進中の巨匠候補ですが、私は彼の一番好きな作品をと問われたら、「メメント」と答える、めでたさも中くらいの相性です。作り込んでいるなぁ、凄いなぁと鑑賞中は思うのですが、ノーラン作品の中身は直ぐに忘れちゃう(「メメント」以外)。今作は背景が面白そうだし、キャストがみんな主演級。そして全編IMAX仕様の撮影と、盛沢山な内容に心惹かれ、大嫌いな長時間の作品でしたが、観てきました。いや、面白かった。神話物のテーマパークみたいな、一大娯楽作でした。

10年に及んだトロイア戦争を勝利に導いたイタケの王オデュッセウス(マット・デイモン)。しかし船団を率いての帰還には、想像を絶する苦難が待ち構えていました。帰らぬ夫を待ち続ける王妃のペネロペ(アン・ハサウェイ)。その間に、国を狙い、アンティノオス(ロバート・パティンソン)を筆頭に、十数人がペネロペに求婚し、連日の宴で城は混乱を極めていましたが、王妃は水際で跳ね返していました。実に20年です。生まれたばかりの息子テレマコス(トム・ホランド)は、母の窮地に心を痛め、父オデュッセウスを探す為に旅立ちます。

トロイア戦争とは、ブラピ主演で大ヒットした「トロイ」に原因は描かれており、その他有名なので割愛。その時の勝利の契機になった、トロイの木馬も出てきて、ここも両軍入り乱れての大戦の中、オデュッセウスの勇敢さを浮き彫りにします。しかし本作の本題は、その後の困難を極める帰還にありました。これが大スペクタクルの釣瓶打ちなわけ。

ノーランは子供の頃からこの作品の原書を猛烈に愛読。絶対映画化したいと思っていたそうな。その子供の頃からの熱意が画面に溢れていて、何と言うか、子供心を忘れない大仕掛けを見せて貰いました。単眼の巨人、槍の軍団、冥府の亡霊、魔女キルケ(サマンサ・モートン)、セイレーン。そして精霊カリュプソ(シャーリーズ・セロン)。それぞれがイタケの兵士たちの前に立ちふさがり、邪魔をする。そして神々さえ彼らの敵になる。たとえ勝利であったにせよ、戦いの報いのように感じました。

荒れ狂う海や難破のシーンも含め、上記見応え充分で、久々にIMAXを堪能しました。魔女キルケは、島に上陸した男たちから性的な暴行も受けたのではないかと、私は想像しました。カラスは彼女の姉妹。鳥の姿のままなのは、鳥なら人間の男に傷つけられることがないからなのか?そんなことまで想像してしまいました。評判通り、サマンサ・モートンがやや疲れた、そして魔女らしい幻惑さを漂わせ、出色の存在感です。

帰還後の様子も、一筋縄では行かない。ここも剣や矢を使っての大立ち回りがあります。原書を知らないので、オデュッセウスやテレマコスがどうなるのか、全く読めませんでした。全てを見終えての感想は「無事の御帰還を」と家族に見送って貰い、家族の元に帰るまでが、「無事の帰還」だという事。戦いの勝ち負けより大事なんだな、これが。

配役で好感を持ったのが、何と言っても重要な役シノンに、エリオット・ペイジが抜擢されていた事です。男性に性別を変更したのは知っていましたが、小柄で華奢な彼には、今後の俳優として役柄に恵まれるのかと案じていました。ノーランには「インセプション」でエレン・ペイジ時代に起用されており、エリオットを観た瞬間、ノーランの親心的なものを感じて、とても嬉しかった。監督に応える好演でした。

一番好きなキャラはペネロペです。美しく聡明。20年間音沙汰のない夫を信じて待ち続けるとは、正に貞女の鑑ですよ。途中で誰かに鞍替えしなかったのは、オデュッセウスとの息子テレマコスを王にしたかったからもあったと思う。そーだよ、現代なら「シングルマザーだって女を大切にしていいじゃないか」なんて論争になるところだけど、子供を犠牲にしてまで、自分が女として生き直すのは違う。私はそう思うな(きっぱり)。演じるアンは楚々としながらも王妃の貫禄充分で、オスカー候補になって欲しいわ。

トロイのヘレネには黒人のルピタ・ニョンゴ。そりゃ賛否両論でしょうね。意表を突いたキャスティングですが、他にもイタケの戦士にアジア人がいました。これはポリコレを意識したのかな?でも黒光りする美貌のルピタは、そりゃ国を賭けて争奪戦が起こるよなの、説得力充分だったので、私的には問題なしでした。それよりヘレネの顔の傷は、戦争によるものなのか、駆け落ちの代償か、それが気になりました。

もちろん、マットもトムも振り付けもバッチリ、相当練習したのだろう、立ち回りも素晴らしく、熱演でした。でもあれだね、日本なら御館様が亡くなれば後見人はいようとも、建前は嫡男が領主を拝命するはず。でもギリシャ神話は違うのね。「仁義なき戦い」を彷彿させました。うーん、神話が反社と親和性があるって事ですか?(笑)。

全編これ見せ場ばっかりで、三時間あっと言う間です。観るならせっかくなので、IMAXでどうぞ。あれこれストーリーを深掘りするより、冒険活劇として大変楽しめました。ノーランの別の一面が観れて、嬉しかったです。


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