ケイケイの映画日記
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2018年05月06日(日) 「サバービコン 仮面を被った街」




ジョージ・クルーニー監督、コーエン兄弟脚本作。と言う事で、早速観てきました。ブラックなユーモアを随所に見え隠れさせながら、保険金殺人や黒人差別を描く作品。段々と怖さが募ってきて、私は面白かったです。

1950年代のアメリカ。絵に描いたような明るく正しく楽しいアメリカを体現する理想郷の街、サバービコン。しかし黒人のマイヤーズ一家が越してくると、たちまち街は騒然と化し、人々はマイヤーズ一家を追い出そうと、街中が苛めにかかります。そんな時、隣人のガードナー(マット・デイモン)の家に二人組みの強盗が入ります。一家は、車椅子の妻のローズ(ジュリアン・ムーア)と双子の妹のマーガレット(ムーア二役)と、息子のニッキー(ノア・ジューブ)の4人家族。強盗は家族全員にクロロフォルムを嗅がせて眠らせますが、薬を吸い込み過ぎたローズは、それが元で亡くなってしまいます。

この画像から、マットがシリアルキラーなのかと思っていました(笑)。もっと悪人かも知れません。姑息で卑しい夫です。そして鬼畜!強盗登場で、マットが妙に落ち着いているし、強盗も覆面もしていないし、変だなぁ〜と思っていました。もしかして・・・と、簡単に筋は読めるようになっています。

そこからは確信犯的に、あんたたち、バカなんですか?の連続。よくもまぁ、こんな杜撰な計画を立てたもんだわ。双子姉妹の兄が、「マーガレットはいい人だが、賢くない」と言っていましたが、切羽詰って、保険調査員のオスカー・アイザックにやってしまった事なんて、やっぱりバカでした(笑)。あんな事してね、足がついちゃうと、子供だってわかるもん。

お話は、ローズの死にまつわる不穏な動きと、マイヤーズ一家への、街ぐるみの迫害やデモを、交互に映します。そこには、下等だと忌み嫌われた黒人よりも、白人の方が何十倍も獣じみている、と描いていると、普通に読み取れます。特に白人たちが家に火をつけたり、投石したりの様子は、これって黒人の専売特許ですよね?それを自分たちは格上だと思い込んでいる白人にやらすのは、皮肉で上手い描き方だと思いました。

でもこれだけじゃぁ、ないんだろうなぁ。救いは、さながら暴動のようなマイヤーズ家の片付けに、少数の近所の人と思しき勇気ある白人が手伝いに来ていたこと。そして、ラスト近くテレビに流れる、「私は人種差別主義者じゃないわ。でも近所に黒人が住むなんて嫌よ」的な、白人女性の悪意の無い本音。ガードナー一家も、黒人の地位向上委員会とか、共産党がバックについており、サバービコンに送り込まれたと、囁かれている。悪意の無い、無意識の差別心を持っているのは、多くの善良な白人で、この手が一番手強い。この潜在意識は、鬼畜の所業を働く輩と同じ。ってとこかな?いや知らんけど(笑)。

ムーアは、マットより一回りくらい上ですが、ラブシーンなど違和感なくて、流石です。車椅子前であろうローズの写真が出てきて、女優さんばりにセクシーで美しく(いや本当に女優なんですが)、車椅子の現在の姿はやたらに老けていて、哀しい。何故自分が車椅子になったのかと、知っていたのでしょう。その賢さと、夫の性癖を嫌った事が、彼女の命を奪ったのでしょうね。

作中、唯一の正義と良心として描かれるニッキー。勇気を持って物事にぶつかり、子供には歯が立たない事は、誰に頼よったか?警察ならもっと良かったけど、子供が咄嗟に思い浮かぶなら、この人でしょう。演じるノア君は、怖さと怒りが入り混じった表情、大人の汚さを知って絶望したり虚無になったりする表情がすごく上手い。この子の次も観たいです。

サバービコンという戦場で戦わなくちゃ、大人は本質が見えてこないのに、軽々それを超えてしまうニッキーとマイヤーズ家の一人息子のキャッチボールを映す最後は、私はグッと来ました。

のろのろ不穏な雰囲気が、オスカー・アイザック登場くらいから、急展開していきますので、お楽しみに。会話の妙が面白く、あれこれ梯子を外しながら、上手く伏線を拾っていく様子も、ブラックで上手い。私はクスクスいっぱい笑いました。ガードナーたちには、因果応報が待っていたのだから、暴動する白人たちも、時代が時代だけど、お仕置きが待っていたらいいなぁーと、思います。




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