ケイケイの映画日記
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2017年03月15日(水) 「恋妻家宮本」




今週で終了ですが、何とか見てきました。実は親愛なる映画友達の方からのプッシュでの観賞。好感の持てる箇所もありますが、違和感・嫌悪感も多々あり、残念ながらテレビドラマのスケールでした。監督は遊川和彦。

中学教師の宮本洋平(阿部寛)は、大学時代からの付き合いの美代子(天海祐希)と出来ちゃった結婚して、27年。一人息子の正の結婚を機に、夫婦だけの生活となりました。新たな生活が始まったある日、本の間から、美代子の記入と判を押した離婚届を見つけます。うろたえる洋平ですが、美代子に真意を問い質せず、日々が過ぎて行きます。

私はこの夫婦より少し先輩なので、心模様を少し懐かしみました。色んな年代の主婦・女性が出てきて、それぞれの結婚観が表されており、そこは良かったです。各々その時代では一般的な思考で、それぞれに頷く場面があります。特に30代主婦の菅野美穂が、「自分の尽くしている割合に対して、見返りが少ない」と言うお怒りに、思わず笑う。私もそう思ってたもん、30代は。その怒りは、70代主婦の富士純子ほど、主婦は自分を犠牲にして当たり前とは思っていませんでしたが、美代子と同じく、とにかく家庭をしっかり守ろうと、飲み込んだものです。

ただし40代の奥貫薫はなぁ。私の大嫌いな不倫主婦です。息子の担任である洋平は、厳しい姑・富士純子に対して、「正しいかどうかではなく、ここは優しさではないか?」と暖かい話風にまとめますけど、そんな簡単なもんじゃなかろう?私の持論は子供を生めば、高校を卒業するまで母親優先が必須。これは未来永劫変わりませんから。夫は単身赴任で海外、厳しい姑と軋轢があろうと、不倫はダメです。のこのこ担任が出てきて、越権行為も甚だしい。傷ついた生徒の心をフォローするなら、別の方法があるはずで、あまりにも浮世離れしすぎています。

洋平は一年前から料理を習いに行きますが、その動機は?私が見逃していたのかもですが、ここは美代子の落胆と繋がるので、描いて欲しいです。

美代子は何故たかが夫婦げんかで、わざわざ福島の、それも新婚の息子夫婦のところへ行くの?迷惑ですよ。たとえ遠くても新婚でも、緊急の用事ならいざ知らず、行動が姑として未熟です。カプセルホテルで寝泊まりした「魂萌え!」のヒロインは、天晴れだったと思います。

それと、何故福島なのか?ボランティアで感謝され、美代子が新たに自分の居場所を見つけるのは、わかります。でも何をどうボランティアしているかも描かず、3.11が近いので、使ってみました的に感じ、ここはかなり嫌悪感があります。東北の震災は、軽々しく扱って欲しくないと、個人的には思います。ずっと専業主婦なのですから、昨今話題に上る「こども食堂」でボランティを始め、子供の笑顔に励まされ、若いお母さんたちから子育ての相談をされると言う方が、説得力があります。

ただ、離婚届一枚で、こんなに込み入ってしまうのは、わかります。夫婦ってね、何年経っても、肝心な事は胸に閉まっているような節があります。この気持ちをわかって欲しい、こうなりたいと思っても、相手を思うからこそ、波風立てずに過ごしてしまうもんです。この作品で一番良かったのは、美代子の素直な感情が込められた、離婚届けの理由です。

ファミレスで注文に悩む優柔不断な洋平の様子は、うちの夫かと思いました(笑)。買い物に行くと、美代子みたいに、私がさっさと決める場面も多いです。何事につけ、パートナー感が薄く、家庭のことは全て私に任せるうちの夫は、昔暴君、今じゃ子供より手のかかる存在です。その点は洋平は、ずっと穏やかだったようで違うみたい。走馬灯のように流れる、新婚時代からの回想は場面は「クレヨンしんちゃん・モーレツ!大人帝国の逆襲」の、ひろしの回想を思い出しました。数段「クレしん」の方が上ですが(笑)。

でもその回想場面を見ながら、我が家を重ねて、自分ばっかり頑張っていた記憶は、そうじゃないよ、ちゃんと夫も頑張っていた、あの時は相談しまくって決めたよなと、思い起こしました。記憶の軌道修正が出来て良かったです。その内また曲がるでしょうが(笑)。

この二人は、出来ちゃった婚に対して、少々わだかまりがあるようです。でも大恋愛の末でも、お見合いでも、出来ちゃった婚でも、それは結婚に対してのきっかけに過ぎない。そこからスタートなんですよ。永く続いているのは、夫婦とも頑張った証拠です。その事を浮き上がらせるために、他の二組のカップルがどうなったのか、描いて欲しかったです。結婚までに至らなかったとか、離婚したとかね。

全体的にちょっといい話的な展開ばかりで、味わい深さに欠けるのが痛い。もう少し作りを練れば、大人の夫婦物として、秀作になったのにと、残念です。


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