ケイケイの映画日記
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2017年03月05日(日) 「お嬢さん」

素晴らしい!めちゃくちゃ面白かった!親愛なる映画友達の方が、お好きな映画の事を「偏愛」と呼称されるのですが、この作品、まさに私の偏愛作品。観終わってみれば、この画像に対するアンチテーゼが描かれていたのだなと、胸がすく思いがします。監督はパク・チャヌク。

1939年の日本の統治下の朝鮮半島。詐欺師の母親から生まれた少女スッキ(キム・テリ)は、出産直後死んだ母親の代わりに、詐欺やスリをする一味に拾われて、育てられました。彼女らのアジトに、藤原伯爵と呼ばれている詐欺師(ハ・ジョンウ)がやってきます。大きなお屋敷に住み、叔父の上月(チョ・ジヌン)に支配されて暮らす孤独なお嬢様の秀子(キム・ミニ)をたらしこみ、結婚後、全財産を奪ったのち、病気と言うことで、精神病院に送り込むと言う。その手配のため、スッキを秀子付きの侍女として送り込み、手引きをして欲しいと言います。二つ返事でOKしたスッキは、お屋敷に乗り込みます。しかし、可憐で儚げな美しさを持つ秀子に、次第に惹かれて行くのです。

パク・チャヌクとは、大変相性が良く、観た作品全てが好きです。今作でも彼の変態性が爆発で、R18の作品ですが、ユーモラスな台詞やプロットを盛り込んでいるので、始終クスクス笑っていました。ユーモアもブラックなのではなく、コントのようなので、スクリーンで繰り広げられる、官能的で卑猥な世界観に間に上手く入り込み、観ていて女性でも居心地が悪いことはありません。

チャヌクだからと、何の情報もなく観たので、半分くらい日本語でびっくり。多少たどたどしいのはご愛嬌。主要キャスト全てが、上手く日本語を喋っていました。

作品は三章に分かれ、スッキの目から観た出来事、その裏方での別の視点、そしてエピローグです。いや〜、びっくりした。こんな展開になるなんて。エピローグの様子は予想出来たのですが、そこまでの展開の大胆な事。当時の朝鮮で、貧しいの朝鮮人の少女も、大富豪の日本人の女性も、全然幸せじゃない。特に羨望の的だったはずの日本人の秀子は、体は汚されないと言うだけで、男たちに弄ばれ、精神を陵辱され続ける暮らしで、明日の希望なんて全くなく暮らしている。国の壁などない女の悲哀です。この視点は公平感があり、良かったです。

藤原伯爵、上月の日本人になるための執着は、当時それでしか浮かばれない時勢を表してると共に、そこに精神の卑屈さがあるはずで、二人の男を女を利用し慰み者とする悪党に描いているのは、そのためでしょう。

キム・ミニ登場時、「綺麗〜!」とスッキは感激しますが、私はそうか?と訝しかったのですが、作品が進むに連れて、どんどん素敵に。憂いがあって冷たい女の秀子。彼女の背景がそうさせている。だけど哀れだけではない、女の凄味とたおやかな女性らしさのコントラストを際立たせ、パーフェクトな演技で魅せてくれます。

キム・テリは、今作が本格的なデビュー作。キム・ミニ共々、スレンダーで少女っぽい裸身も潔く見せています。洗練された秀子の美しさだけではなく、スッキが秀子に魅せられたのは、孤独な自分の身の上を、秀子に重ねたからでは?詐欺しながら、自由になりたいと言う気概を持つスッキを、素直に演じて好感が持てます。

情報を全く入れないほうが、絶対楽しめる作品。最後まで見れば、私が痛快な気分になった理由がわかります。好きな台詞もたくさんあって、「子供を生んだ後だから、遣り残した事はない」「私の世界を壊しにきた救世主。私の珠子」。言葉だけ拾えば、どうと言うことのない台詞ですが、私は思い切り落涙しました。確かめて下さいね。めくるめく、官能的で変態的で背徳的な美しい世界、どうぞご賞味下さいませ。日韓友好の鍵は、女性にあり。なーんてな。


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