ケイケイの映画日記
目次過去未来


2017年01月20日(金) 「ネオン・デーモン」




あちこちで、賛否両論の作品。この画像のエル・ファニングを観た時、何て綺麗なのかしらと思い、絶対観ようと思った私は、賛でした。しかし、けばけばしく悪趣味全開の画面は、否の感想も充分わかる作品。監督はニコラス・ウェイティング・レフン。

田舎町から、一人ロスアンジェルスに出てきた16歳のジェシー(エル・ファニング)。安モーテルに泊まりながら、モデルとして売り込む彼女は、際立った美しさがすぐ目に留まり、トップモデルとして輝き始めますが・・・。

最初、画像のエルが映された時、ラストシーンから始まるのかと思いましたが、これは売り込みの為の撮影でした。これでこのお話は、全て虚構として観ろと言う意味かと、感じます。

とにかくエルが素晴らしい。美しい、完璧と、劇中絶賛される彼女ですが、実はそんなに美人じゃないです。しかし長身で手足や首が長く、これくらい痩身なら、本来頬はこけるはずが、丸顔で小づくりの童顔は、桜色の頬がぷっくり。そして抜けるように白い肌は、ミルクを塗ったように輝いている。そして天然のブロンドの巻き毛は、おとぎ話のお姫様のよう。

彼女の全身は、あらゆるファッションを表現するキャンパスとして、「完璧」で「美しい」のじゃないのかな?色を塗り、装わせ、カメラマンやデザイナーが、自分色に完璧に染められる逸材なのだと、感じます。エルはその意図に応え、清楚だったり超モード系であったり、娼婦のようだったり。どの場面でも変幻自在に自分を操り、いつまでも彼女「だけ」を観ていたい気分にさせる、素晴らしい存在感。撮影当時17歳だったことを思えば、恐れ入る好演です。

モデル仲間のサラ(アビー・リー)やジジ(ベラ・ヒースゴード)の、ジェシーに対する妬みや羨望。魔物に取りつかれたように、美に執着し年齢を気にする様子など、モデル以外でも大なり小なり、女子ならあるあるです。出世街道を歩み始め、純朴だったジェシーが、段々と同じように狂気じみた世界へ馴染んで行く様子など、作り込んだサイケで退廃的な画面とは別で、内容は既視感たっぷり。

違うのは、そこから何か教訓を得たり、感動を呼ぶ出来事が起きないこと。考えるのではなく、感じる作品なのだと思います。自分にフィットすれば、とても楽しめる作品だと思います。

たっぷりエルの破格のチャーミングさ感じた後、どうなるのかと思っていたら、あれあれ、お話は思い切りホラー染みてきます。ここからは強烈な描写の連続。ジェナ・マローン演ずるメイクのルビーは、ジェシーの唯一の友人と言っていい存在です。私はジェシーとルビーの出会いの場面で、あれ?この子(ルビー)もしかして?と感じたので、展開にはそれほどびっくりしなかったのですが、その次の描写が、もう悲しくて。

インモラルの極みですが、彼女はこうやって、ずっと自分を慰めていたんじゃないかなぁ。地味な格好で、モデルたちに最高のメイクを施し、常に女神のように美しい女性たちに囲まれていたルビー。友情や感謝も、この世界では仮初。自分が見守り、雛から育てたような愛おしさを抱いていたジェシーに、きっと裏切られたと感じたんでしょう。夢か現実かの、浮世離れしたダークな世界観の中、どの女性にも肩入れ出来ない中、ルビーの哀しみだけが、生温かく感じました。

安モーテルの支配人のキアヌ・リーブスや、ジェシーの友人(カール・グルスマン)、カメラマンにデザイナーなど、男性陣は記号的役割ながら、美に魅入られた女性たちとの関係性を、それぞれの立ち位置から浮彫にして、上手い使い回しだと思います。

美と嫉妬と狂乱の世界で生き抜くには、毒を喰らわば皿までなんだよと、サラは言っているのかな?ショッキングな場面が多く、あまりお勧め出来る作品ではないですが、画像のエルちゃんが素敵と思った方は、イケる作品かな?




ケイケイ |MAILHomePage