ケイケイの映画日記
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2016年09月01日(木) 「君の名は。」




大評判なので、予定を変更して急遽観てきました。直近に観た「後妻業の女」で誓った、死ぬまでに男の一人も騙しておかねば、と言う邪悪な魂が、きれいさっぱり浄化されました(笑)。大ヒットも納得の作品です。監督は新海誠。

飛騨の山奥の田舎に住む高校生の三葉(声・上白石萌音)は、神社の家に生まれ、巫女の仕事も務めていますが、何もない田舎に飽き飽きしています。方や東京に住む高校生の瀧(声・神木隆之介)は、バイトに明け暮れながら、都会の青春を謳歌している男の子。何の縁もないはずのこの二人が、寝ている間に入れ替わってしまうと言う事を、何度も繰り返します。お互いがお互い意識し、理解し始めて頃、意を決して三葉に会おうとする瀧。しかしそこには思いもよらぬ秘密が隠されていました。

前半の展開は、往年の名作「転校生」とよく似ています。戸惑いながら、入れ替わった境遇に好奇心を持ち、別の青春を謳歌している二人の様子が微笑ましい。特に思春期の男女なんで、入れ替わった体への興味や恐れなども盛り込み、とても可愛い。

よくは出来ているけど、はてこれだけで何故この高評価?と思っていたら、お話は時空を超え、宇宙まで辿る壮大なファンタジーへと昇華していきます。普通なら、これおかしいだろ?と感じるはずが、全然無理がない。重箱の隅をつつけばあるのでしょうが、何としても愛する人、場所を救いたい、その一途な思いの前には、そんなものは吹き飛んでしまいます。そこには、3・11だけではなく、各地の震災の様子が、脳裏に刻まれているからだと思いました。

「私も二葉(三葉の母)も、あんたのような事があったよ。もう昔の事で、忘れてしもうたけど。」双葉と瀧の秘密を見破った三葉の祖母(声・市原悦子)。あぁこの家は神道の家系。この村を救うための家系なんだ。最後まで観て、三葉の母が早逝したこと、父が町長になった事、みんなみんな意味があった事で、偶然ではないのだと思いました。何故今こんな事が?と、不思議だったり、悲嘆にくれたりすることが、人生には往々にしてあります。それは必然で偶然ではないのですね。その意味は、ずっと後になってわかるのです。

三葉の口噛み酒を口にする瀧。あれはくちづけだったのだと、私は思います。黄昏時の講釈は、このためだったのかぁと、とてもロマンチックな面持ちになった二人の逢瀬。三葉と瀧が抱える、自分の半身を求める心の旅の切なさよ。しかしそれは、若い時分にしか持ち得ない瑞々しさを感じ、羨ましくなります。同じ狂おしさでも、大人になる前の性愛を伴わない恋。相手の事を思えば、深呼吸しなければ、息が出来ない。顔を思い出すだけで涙が出る。何十年と忘れていたこの感情を、二人を見つめながら、私も共有していました。

手前味噌で恐縮ですが、私は随分若く見えるらしい。今の勤め先の方々に言わせると、7〜8歳くらい(笑)。それはきっと、こうやって映画を観て、感情を若返らせているからなんだと、思います。大人の人も、アニメと思って敬遠するなかれ。どんなサプリより、若返りに効果のある作品です。


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