ケイケイの映画日記
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2016年05月01日(日) 「レヴェナント:蘇えりし者」




祝・レオ様オスカー主演男優賞受賞作。オスカーは例えハリウッドに貢献していようと、スター俳優に厳しいきらいがあるので、もう取れないかと思っていました。レオの事は10代半ばくらいから見続けているので、今回はとても喜ばしく思います。これも想像していたのと違った内容でした。監督はこちらも二年連続オスカー監督賞受賞のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。う〜ん、でも今回は撮影の(これもオスカー受賞)のエマニュエル・ルベツキと俳優陣の頑張りに助けられた感も。それでも堂々たる作品だとは感じています。

1823年のアメリカ西部。まだ未開拓の地で、様々な国の白人たちは、集団で狩猟を繰り返しています。ヘンリー(ドーナル・グリースン)を隊長とする一団は、ガイドにベテランハンターのグラス(レオナルド・ディカプリオ)と、先住民との間に出来た息子ホーク(フォレスト・グッドラック)を雇い入れます。ある日先住民たちに襲撃させたヘンリーの隊は、犠牲者を出しながら生き残った者だけで隊を進めます。しかしグラスは途中で熊に襲われ瀕死の状態に。困ったヘンリーは、フィッツジェラルド(トム・ハーディ)とブリジャー(ウィル・ポールター)にグラスを託して、隊を進めます。しかし諍いが起こり、グラスはホークを殺害。ブリジャーには嘘をついて、グラスを置き去りにして去っていきます。

子を思う父親の復讐劇だと思っていたら、主役は自然でした。未開拓の冬のアメリカの荘厳な厳しさを、粛々と映すルベツキのカメラが素晴らしい。森、清流、崖、山、豪雪。全てが厳しいのですが、本当に雄大。よく人間は自然の前には無力だと言われますが、それは抗うからではないか?大自然に身を委ね、畏敬の念を抱き、様々な知恵を凝らす。瀕死の状態からのグラスのサバイバルは、必死に生を追い求める彼を、見守っているようにさえ、感じました。

レオは大奮闘。グリズリーに襲われて傷だらけだは、雪の中で真っ裸だは、深々凍えるような川には浸かるは、崖から落ちるは、もう大変。撮影中傷だらけ打撲だらけだったはず。これは他の出演者もでしょう。監督はサドなのかと、本気で思いました(笑)。ハリウッドのメインストリームに鎮座する大スターなのに、オファー断らないなんて、男気があるわと、グラスのサバイバルより、そこに一番感動しました(それでいいのか?)。これでオスカーあげなきゃ、オスカー会員は鬼だわと思いました(笑)。

先住民族は言います。「この土地は我々のものだ」と。この台詞、「セデック・バレ」にも出てきました。アメリカの先住民は、戦いに勝った証しに頭の皮をはぎ、台湾のセデック族は首を刈る。野蛮です。しかし、その土地に先に住む人々を押しのけ、土足で踏み入り、彼らが共存していた自然から、村を焼き払い、次々強奪していくのは、野蛮ではないのか?これは二方と関係のない立場のメキシコ人のイニャリトゥが撮ってこそ、意義があるのかと思いました。文明を齎した、と、幾ら開拓者が言い募っても、元から住む人々に取っては、侵略以外の何物でもないのだなぁと、感じます。

憎まれ役トムハは素晴らしい存在感。少しの描写で、彼がどうして悪漢になったのか、陰影深く演じていて、作品を引き締めます。その他私の大好きな「リトル・ランボーズ」のウィル・ポールターが重要な役で出ていて、嬉しかったなぁ。久しぶりに観たので、大きくなってと、近所のおばさん状態でした。

延々レオのサバイバルが続きますが、二時間半スピリチュアルな気分にさせてくれます。私は好きな作品です。


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