ケイケイの映画日記
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2015年07月28日(火) |
「犬どろぼう完全計画」 |
とってもとってもとっても良かった!予告編でピンと来ての鑑賞で、すっごく楽しみにしていた作品。原作はアメリカの児童文学だそうですが、韓国に置き換えて違和感なく、見事な出来です。愛らしくて楽しくて、親としての感情も刺激されて、たっくさん泣きました。監督はキム・ソンホ。
家業のピザ屋の経営難が元で、アッパ(お父さん)が失踪してしまった小学生の女の子ジソ(イ・レ)。家も追い出され、天真爛漫ですが頼りないオンマ(お母さん・カン・へジョン)と弟ジソク(ホン・オンテク)と、今は車中の生活。誰にも内緒です。救いはその事を知っても、親友のチェラン(イ・ジウォン)との友情は変わらない事。担任の先生に、誕生日パーティーはどうするのか?と聞かれたジソは、つい自宅でやると言ってしまいます。ちょうどその頃、行方不明の犬に懸賞金がかかっているのを知ったジソは、お金持ちの犬を盗んで届け出れば、お金が手に入り家が買えると思い込みます。ターゲットはオンマの勤め先のレストラン経営者のマダム(キム・ヘジャ)の犬・ウォーリー。子供たちは家を買うため、計画を練ります。
とにかく子供たちが飛び切り可愛い!利発で賢いジソ、ガーリーで毒舌家のチェラン、おバカだけど、ここぞと言うときは頼りになるジソクなど、キャラ立ちもくっきり。冒頭すぐにチェランに秘密がばれて、大泣きに泣くジソに、私は早涙。女子のこの年代は、ちょうど羞恥心の概念が変わり始める頃。お家がないなんて、誰にも知られたくなくて当然です。しかしチェランは、ずっと友達だと言います。「ジソといると、楽しいもん」。そうだね、それが友情の基礎だもの。憐れみでもなく、仕方なしでもないのです。ジソが自棄にならなかったのは、私はチェランのお蔭だと思います。
坪単価500万ウォンの家を、500万で買えると思い込んだジソ。頭から「500万」が消えません。その描写が子供らしくって、本当に愛らしい。とても気に入りました。その他、子供たちが書いた日記や絵などが、画面のスパイスとして挿入されますが、どれもこれも一途な子供心を絶妙に表していて、楽しいです。お蔭で一層子供たちが可愛く見えちゃう。
何とか元彼スヨンの叔母(これがマダムね)のレストランに、コネで就職したものの、オーダーは間違えるわ、お皿は割るは、その他諸々、信じられないくらいドジでダメなオンマ。子供たちからも、辛辣な言葉を頂戴します。これじゃアッパは、お金の相談なんて出来なかったでしょう。オンマのだめっぷりを描く事で、本来なら非難されるべきアッパの行為に、情状酌量を与えています。
子供たちの計画は、上手く考えてんなぁと感心するものの、「完全」とは程遠い代物。未遂の描き方も、これまた楽しい。そうこうするうち、子供たちは、この作戦と深く関わるホームレスの中年男性デボー(チェ・ミンス)と知り合います。
エレガントで威厳があるけど、偏屈なマダム。大らかで自由なデボー。でも二人とも同じような陰りがあります。それはそれぞれの子供への愛情に、悔恨がある事。二人とも、それは取り戻せないと思っている。
子供から観たら、親は守ってくれる存在であり、大きな壁でもあるのでしょう。でも親は完全無欠どころか、節穴だらけの不完全なのです。子供たちの犬泥棒計画のように。それでもこの愚かな親が、世界中で一番自分を愛して頑張って育ててくれている。その事に子供が気付く時が、親と子の第二幕がスタートするのじゃないでしょうか?今その時なのよ、頑張れジソのオンマ!
見栄をはり、犬泥棒と言う小賢しい犯罪を実行しようとしたジソですが、その過程で、たくさんの大人の人生の陰影を見て、何が今の自分に一番大切な事なのか?を掴む様子が清々しい。本当の事を言うのは、恥ずかしかったでしょう、怖かったでしょう。偉かったね。
ジソが家に固執したのは、見栄だけではありません。家が無くなる=家庭が無くなる事だったからです。家も家族が育てるんじゃないかなぁ。私は誰よりも家が欲しかったのは、本当はジソのオンマだったと思います。その思いは、買いそろえたマットに込められていたはず。
久しぶりに観たカン・へジョンは、すっかり大人になってと、近所のオバサンのような気に成りました。ダメ母の成長を、相変わらずチャーミングに演じています。キム・ヘジャとチェ・ミンスの、子供たちをサポートしながらの確かな演技と存在感が、この作品をただの児童映画ではなくワンランクもツーランクも格上げしたと思います。
上映館が少なく、中々目に留まらないでしょうが、夏休み、是非お子さんと観て下さい。もちろん、大人一人でも!しばらく幸福感が持続する作品です。
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