ケイケイの映画日記
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2014年06月05日(木) 「ディス/コネクト」




四つのお話が絡み合う群像劇。インターネットの弊害については、あれこれ言われているので、その事については格段目新しくはないです。しかしネットの向こうには何があるのか?その事にきちんと言及している点が素晴らしい。単にネット社会に警鐘を鳴らすのではなく、普遍的な人や家族の絆について描いている、秀逸な人間ドラマです。地味ですが実力派のキャストを集めたのも功を奏しています。監督はヘンリー=アレックス・ルビン。

SNSで知り合った少女が、実は同じ学校の少年ジェイソンとは知らず、恥ずかしい画像を送ったベン。それが学校中に広まり自殺を謀ります。ベンの父リッチ(ジェイソン・ベイトマン)は、事の真相を知りたく奔走。ジェイソンの父マイクは元警官で、今はネット専門の私立探偵。ネットから個人情報を盗まれたデレック(アレキサンダー・スカルスガルド)とシンディ(ポーラ・パットン)夫妻から、捜査を依頼されています。野心家のTVレポーター、ニーナ(アンドレア・ライズブロー)は、ポルノサイトで働く少年カイル(マックス・シエリオット)を見つけ、彼からルポルタージュを試みます。

リッチは仕事中毒、マイクは厳格と、共に息子たちには反発されている父親ですが、それ自体は思春期の頃に有りがちな事で、物語はそれを責めているのではありません。息子の孤独を見過ごしていた自分を責めるリッチ。不正や悪を許さないマイクが、息子のしでかした事が発覚した時、どうしたのか?私はここが重要だと思うのです。それは褒められた事ではないのですが、二人の父親の焦燥に駆られた行動は、とても人間らしい。

子供を亡くしてから、すきま風の吹くデレックとシンディ。心の隙間を埋めるためチャットに熱中した彼女から、カード情報が盗まれました。夫もまた違う形で子供の死を悼んでいるのに、分かち合えない二人。元軍人で、今は仕事の成果も上げられず空虚な毎日を送っているデレックも、妻にその事を吐露できません。

SNSやチャットなど、安易に人を信用するなかれ、とは常々言われている事ですが、彼らを観ていて、知らない相手だからこそ、心の奥底を見せられるのだとも感じます。相手が自分を知らないので、妙なプライドのない裸の自分を出せるから。もちろん、それは諸刃の剣であるとは描いていますが、私は裸の自分をさらけ出す方が印象に残りました。

ネタ探しにネットサーフィンしていて、カイルを見つけたニーナ。彼に同情するでもなく説教するわけでもなく、単に情報元としてしか見ていなかったはずの彼女が、何故危険を冒してまでカイルを救おうとするはめになったのか?それは彼と実際に会ったからだと思いました。カイルから「利用しているのは、あんたの方だ!」と罵られ、差し伸べた手を振り払われたニーナ。あの時、しばらく自分が一緒に住むと言ったら、カイルは彼女の元に逃げ込んだはず。同じ利用されるなら、責任を取ろうとするだけのニーナより、親のように庇護してくれる雇い主(演じるは何とマーク・ジェイコブス)を選ぶカイルもまた、人との温もりを求めているのです。

ラストはそれぞれのお話が暴力を引き起こします。しかしそこに、生身の人間の怒りや哀しみを感じ、殴り合いが裸と裸のぶつかり合いに感じるのです。マイクの差し伸べる手を取るリッチ。冷静に話し合えるはずのない二人が、殴りあった事で、共に息子への愛を確認します。シンディをよく知る男二人の争いを止めたのは、彼女の「シンディ・ハルよ!」の絶叫でした。相手の男性は瞬時に事の次第を慮ったでしょう。そして自分の出世のためにカイルを傷つけた代償を受けたニーナは、野心家ではなく、きっと心あるジャーナリストになってくれると思いたい。ネットだけでは決して得られない感情だと思いました。

それぞれ味わい深いですが、私が好きなのはニーナとカイルのパート。孤独にも色々ですが、一番辛いであろう天涯孤独の辛さを、カイルから感じたからです。野心の強いニーナを作ったのもまた、孤独であろうと思います。ニーナを演じるライズブローは、見る度全然違う人で、その上上手い!今回もやり手の美人レポーターの強気な様子だけではなく、バストトップは見せるは、疲れきったスッピンも見せるはで、その女優根性にとても感心。惚れてしまいました。これから彼女が出ている作品は、できるだけ観ようと思います。

今の生活に欠かせぬネット。この作品は決して使うなと言っているわけではないです。そこそこに使えでもない。目の前の現実から逃げていたら、大事なものを見落とすよ、という事だと思う。ネットに振り回されず、自分の人生を豊かにするツールとして、それぞれが使わなくては。私は長年のSNSで親しくさせていただいている方たちがいます。勝手に心の友と親愛を感じているのですが、その人たちに死ぬまでには絶対に会うぞ!と、誓いました。




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