ケイケイの映画日記
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2014年04月11日(金) |
「アデル、ブルーは熱い色」 |
昨年度カンヌのパルムドール受賞作品。カンヌ受賞作は個人的に相性が悪いのですが、これは久しぶりに狂おしくて胸が締め付けられる恋愛で、堪能しました。監督はアブデラティシュ・ケシシュ。今回ネタバレです。
高校生のアデル(アデル・エグザルコプロス)は、上級生の恋人がいるものの、周囲とは違和感のある毎日を送っています。ある日恋人とのデートに駆けつけるアデルは、ブルーのショートカットの女性に一瞬で心惹かれます。別の日、戯れてに訪れたバーで、その女性・美大生のエマ(レア・セドゥ)と再会したアデル。幾度の逢瀬を重ねた二人は、やがて身も心も結ばれた恋人同士になります。
モキュメンタリー風なフランスの高校生の日常を描きます。その様子がすごく自然で興味深いです。これが日本から考えると、随分大人なのですね。教材に古典の恋愛小説が出て来て、主人公の恋心を紐解くわけ。さすがおフランスと感心。一目惚れに行動を起こさなかったら、どういう気持ちになるか?と言う先生の問いに、「後悔する」と答えるシーンがあって、それがアデルとエマの最初のすれ違いに被りました。
同級生女子の戯れのキスに、はっきりと自分の愛の嗜好を悟ったアデル。愛の国フランスですもの、同性愛には寛容かと思いきや、これが仲の良い友人たちから猛烈なバッシングを受けます。この辺は日本に住む者の思い込みなんですね。しかし日本じゃ陰口くらいで、こんなに壮大にはやらないな。
二人のデート場面は大変美しい。少しずつ二人が距離を縮めて行く様子には、こちらまでときめいてしまいます。デートだけじゃなく、この作品の特質すべきところは、劣情を催す狂おしさではなく、身も心も醜態までも晒しながら、それでも美しいと思わす事。とにかくピュアなのです。
二人はお互いの両親に相手を紹介します。アーティステックで開放的なエマの両親は、アデルを娘の恋人として歓迎しますが、保守的なアデルの両親もエマを歓待してくれますが、あくまで友人として紹介。さりげなく自分を偽って紹介するエマ。大人の対応ですが、何も罪を犯しているわけでもないのに、自分を「隠す」と言うのは本当に辛いことです。それをごく自然にやってのけるエマに、それまでの辛さが忍ばれました。
話題の二人の長回しのセックスシーンは、私には少々長過ぎで食傷しました。あれで快感が得られるのだろうか?と言う疑問のポージングもあり、お友達から聞いた話によると、女優さん達からは、文句も出たそう。あまり官能的とは思えまえせんでした。ただ体当たりで演じた二人は、賞賛に値する熱演だったと思います(だって7分間のために、10日間もかけたんですって!)
やがてエマは画家として名が売れ始め、アデルは念願だった教師の職につき同棲生活を始める二人。芸術家やインテリばかりのエマの友人たちに、気後れして居心地の悪さを感じるアデル。そんな恋人の寂しさを思いやるどころか、アデルにも自分だけの才能を発揮しろとハッパをかけるエマ。教師と言う立派な職業に付いているのに、アデルには責められているように感じたでしょうね。また自由なエマの周囲は、彼女がレズである事を理解していますが、保守的な仕事に付いているアデルは、同僚に隠しています。アデルの両親には、上手に対応したエマなのに、アデルの辛さには頭が回りません。
「キッズ・オールライト」でもそうでしたが、不思議な事に女性同士のカップルでも、夫と妻のような役割が出来るのです。優秀な方は夫のように振る舞い、凡庸な方は妻として「夫」に尽くす。大人数の料理を一人でホームパーティーで作り、片付けものも一人でするアデル。彼女も職についていて、明日は仕事があるのに。この辺で段々無神経なエマに腹が立ってくる私。多分どっぷり主婦として女として、アデルに感情移入していたのでしょう。この辺りは、ファンタジックではない現実的な問題も浮き彫りにしています。
寂しさからアデルはどうしたか?これもジュリアン・ムーアと同じ。しかし相手が男性だと言うのは、私は最低限の相手への礼節だと思ったのですが、これは違うのかしら?事がわかり、売女とアデルを罵るエマ。取り付く島もありません。号泣して謝るアデル。深々とアデルの寂しさが伝わってきたので、許して上げて欲しいと思いましたが、願いかなわず、二人は別離へ。このシーンは本当に辛くて哀しくて。二人共本当に相手を愛しているのに。エマの泣き叫ぶ様子は、ずっと凛々しくカッコ良かった彼女が、唯一女性らしい悋気を爆発させる様子がみっともなく、しかしそのみっともなさに共感して、またこちらも泣けてきます。
私が一番官能的だと感じたのは、三年後のカフェでの再会のシーン。捨て身で復縁を迫るアデルに心惹かれるも、現在のパートナーに悪いと、断るエマ。キスや抱擁だけで情念を表現する濃密なシーンに、ため息が出ます。これと並ぶシーンは、ちょっと思い当たらないなぁ。
アデル・エグザルコロブスは今回始めて観ましたが、撮影当時まだ19歳。ヌードシーンもたくさん、おまけに恋人は女性という難しい役ですが、とにかく自然で素晴らしい演技。恥じらいの乙女心から燃え盛る女の情念まで、余すところなく私に届けてくれ、すっかりファンに。ふっくらした頬が愛らしい彼女ですが、次に会うときは、大人の顔になっているかも。いつもは女子力満点のレアも、まるで宝塚の男役のようなカッコ良さで、こちらにも心酔しました。とにかく二人の頑張りに拍手を送りたいです。
これほどときめき、切なくて、あぁ良い恋愛映画を観たと満足しきれるのですから、愛にヘテロもゲイもないのだと痛感します。最初は三時間と言う上映時間に怯みましたが、問題ありませんでした。是非この大恋愛映画と格闘して、心地よく疲れて下さい。
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