ケイケイの映画日記
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2013年09月12日(木) |
「サイド・エフェクト」 |
スティーブン・ソダーバーグの映画からの引退作。うつの新薬に関するサスペンスと聞いて、製薬会社の内幕が暴かれる社会派サスペンスを期待しましたが、出来は着眼点の良い二時間ドラマ程度。高評価が多く、とても期待していたので、個人的に物凄く肩透かし感があります。
インサイダー取引のため収監された夫マーティン(チャニング・テイタム)の帰りを待つ妻のエミリー(ルーニー・マーラ)。やっと夫が四年間の刑期を終え戻ってきたのに、彼女はうつ病を再発。バンクス(ジュード・ロウ)の治療を受けることに。エミリーの前医シーバート(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)から新薬を勧められた彼は、エミリーに処方します。しかし薬の副作用で夢遊病に侵されたエミリーは、マーティンを刺殺。彼女は裁判で有罪か無罪か裁かれると共に、危険な薬を処方したとして、バンクスの地位も失墜します。しかし、シーバートととの会話から、バンクスは失地回復の糸口を見つけ出します。
前半はまずまず。薬害を訴えるエミリーの姿に、杜撰な治験の有り様が暴かれるのかと予想しました。でもこの時にも疑問が。この薬の治験には、5万ドルの報酬をもらい、バンクスも参加しています。薬は諸刃の剣であるのは、処方する医師が一番わかっているはず。副作用なんか、きちんと下調べするはずです。それをシーバートが隠していたと描いていますが、医師なら普通自分で把握するのでは?
バンクスがエミリーに熱を入れて診ているようなシーンもありますが、あれはルール違反。診察は診察室でが前提で、そののちバンクスのかつての過去が明かされると、なーんだ、学習出来てないじゃんと苦笑します。お金事情の世知辛さも描き、医師だって生身の人間ですから、人間くさく描くのは結構。でもそれはあくまでプライベートの部分で、バンクス以外でもこの作品に出てくる医師全員、まったく表の顔の、医師としてのプライドや倫理観を感じさせるシーンがまるでないのです。自分の保身と欲得がらみだけが強調されるので、キャラに含みが与えられず、片手落ちの感がありました。
それはマーティンやエミリー、シーバートにも言える事。簡単な説明のようなセリフと回想シーンだけ始末をつけているので、何故こんな事を起こしたのか、説得力に乏しいです。物語に深みを与えるはずの、登場人物のキャラが、描き込み不足に感じました。
と言う事で、謎解きの方に神経を集中させるかと鑑賞方向を変えてみれば、これが、は???と言うような強引な理由。エミリーの自殺未遂や思わせぶりなシーンは、何とか拾っていましたが、この真相はないよな。インサイダー取引が鍵だと言うのは良かったです。
エミリーの件で家庭も失いそうになり、焦燥感にかられたバンクスが、他の医師に薬を処方してくれと訴えるシーンは秀逸。アメリカはカウンセリング大国で、薬もすぐ処方するのでしょう。精神科薬に依存している人が多数いるのが忍ばれます。
エミリー役のルーニーは、清楚な外見に似合わず、何かあるぞこの娘感を絶妙に忍ばせて、したたかな感じを上手く出していました。キャサリンはエロエロビッチ過ぎて、もう〜。二時間ドラマの法則でした。ロウは薄らハゲが知的に見えて、医師役は案外似合っていました。
一番好きなのは、オチ。えぇ〜?これで終わりかよ!こいつに罰はないのか?と憤っていたら、ちゃんとサイド・エフェクト(副作用)が与えられました。副作用には副作用と言うことですね。皮肉と毒がいっぱいで良かったです。
と、個人的にはレンタル待ちでも十分の作品でした。勇んで見にいって、ちょっと損しちゃった。
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