ケイケイの映画日記
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2013年05月05日(日) |
「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」 |
う〜ん。まぁマッツ主演でなければ、パスした作品だったので、こんなもんかなぁ。コスプレものは内容がそそられれば観る程度なので、私の知識が薄いのも、あんまり面白くなかった一因でしょう。監督はニコライ・アーセル。本年度アカデミー賞外国映画賞候補作の、デンマーク作品です。ベルリン映画祭で、銀熊賞受賞作。
18世紀後半、英国王ジョージ3世の妹カロリーネ(アリシア・ヴィキャンデル)は、従兄弟のデンマーク王クリスチャン7世(ミケル・ボー・フォルスゴー)の元に嫁ぎます。芸術を愛し教養豊かな王と聞き、胸を弾ませていたカロリーヌですがですが、実際は精神を病んでおり、夫婦関係は冷え込む一方で、王妃はこの結婚に絶望しています。そんな時外遊先のドイツで、病状を悪化させたクリスチャンは、医師ストルーエンセ(マッツ・ミケルセン)を侍医として採用。デンマークに連れて帰ります。ストルーエンセは、自分に心酔するクリスチャンの心を掴み、やがては自分の思想である啓蒙思想を王に伝授。その様子に心を開いたカロリーヌとも、親しくなります。変化した王により政治は急速に改革。しかし、その影でストルーエンセと王妃は、不倫の関係となります。
まずこの不倫に、全然共感出来ないのが私的にバッテン。バカ王との関係に絶望していた王妃が、新しい改革に意欲を燃やすストルーエンセに惹かれるのはわかりますよ。でもストルーエンセが王妃に惹かれたのは、「若くて美しい」だけのように感じてしまってなぁ。セリフでも男とはみんなそんなもん的なセリフが出てきますが、それって野望を持った男にしては、ちょっと浅はか過ぎないか?それとマッツは50前、アリシアは20代半ばなので、画を観る度に若い女にトチ狂った中年男に見えてしまい、バッカみたい!と思ってしまうわけですよ。
しかし実際にカロリーヌはミドルティーンで嫁ぎ、23歳で病死しているので、カロリーヌに関してはアリシアで適役です。ストルーエンセの年齢がわからないので、この辺は史実通りかもしれません。
取りあえず、不倫は良しとしよう。しかしストルーエンセに全幅の信頼を寄せる王に対して、二人共罪悪感が皆無なのは、如何なものか?王が「自分はバカ扱いだ」と、王宮での孤独感の描き方は際立っており、対する王妃は、私の仕事は妻ではなく王妃とばかり、貫禄を増すのとは対照的です。宣伝では孤独な王妃となっていますが、実際王宮で一番孤独だったのは、私は王だと思います。
妻に「ママ」と呼びかける夫。実母は夭折しています。自分はあなたの母じゃない!と怒る彼女の気持ちはわかりますが、ストルーエンセの巧みな王への接し方を学ぶなどして、幾らでも夫婦和解の道はあったと思うけど、彼女も若かったんでしょうね。自分の辛さしか見えなかった。
そのうちカロリーヌは妊娠。しかし王とは長い事セックスレス。生みたいと言い張る彼女に、あろう事か、ストルーエンセは王を再び閨に誘うように進言します。えぇぇ!王を騙して王の子として産むってか?その直後、「私によらないで。夫の匂いがするから」と涙ながらにストルーエンセに言うカロリーヌに、お前、もっと別のセリフがあるだろうが!と血圧が上がりそうになる私。その後、生まれた娘が自分の子か懐疑的な王が、娘をあやそうとすると、触らないで!と王の頬を打つシーンに、呆然としました。
この王は決して悪い人ではありません。母性愛豊かな人が妻なら、政治的にはお飾りであっても、それなりに豊かな人生は送れた人です。私が痛感したのはここ。なので不義の子を生んだ呵責の念もへったくれもない王妃が、もう憎たらしくて。
こうなると、もういけない。当時のヨーロッパでは、どうもデンマークは近隣諸国が啓蒙思想で改革されていたのに、遅れを取っていたようです。ストルーエンセによって、お飾りだった王が、しっかり自分の政治的思想を発言する場面は、ちょっとした感動でした。ストルーエンセの改革は、予防接種に農民の開放、書物の検閲を無くす等、皆優れたものです。しかし庶民に自分たちの不倫が知れ、揶揄する書物が溢れると、たちまち検閲を復活。王をサポートするはずが、自分が実権を握るや、王は置いてけぼりで、またバカ扱い。結局は以前の王の周囲の人々と同じになるのは、似た境遇の多くの権力者と同じ末路で、何とも皮肉。改革の仕方も急速過ぎで、あれでは反感は買うでしょう。結局ストルーエンセは思想家であっても、政治家ではなかったのだと思います。
マッツは相変わらず素敵で、若い王妃が好きになるのも納得ですが、今回はストルーエンセが好きになれず、残念でした。アリシアは可憐な新婚当時から、威厳も感じる王妃なる様子は、若くして嫁いだ姫の、自我の目覚めを表現していて良かったです。特筆はフォルステゴー。病んだ王の孤独と哀しさをくっきり浮かび上がらせて、私の感想は彼の演技に引き出されたもんです。確かこの演技でベルリンで賞を取ったと思います。
とまぁ、メロドラマ部分が私には全然ダメだったのが痛恨。歴史劇としては、端正にしっかり作りこんでおり、見応えはあります。この不倫劇は、デンマークの人なら誰でも知っているレベルのものらしく、この描き方でも様々な感想を呼んだ事だと思います。しっかし、王宮・貴族ものは不倫が多いよな。大昔のやんごとなきお方たちは、シモの方はゆるいようですね。
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