ケイケイの映画日記
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2013年03月03日(日) |
「ジャンゴ 繋がれざる者」 |
長い映画は嫌いです。でも観たい。どこを取ってもこの作品、面白そうでしょ?オスカーでは助演男優書@クリストフ・ヴァルツが取るし、監督のタラは脚本賞も受賞。私的にはオスカーは脚本賞を取った作品が、その年一番面白いと思っています。もうびっくり、最高ですよ。三時間弱一瞬も飽きさせず、様々な感情が刺激されまくり、とにかく面白い!「アルゴ」も好きなんですけど、私がオスカー会員なら、絶対この作品に投票したなぁ。監督はクェンティン・タランティーノ。
1800年代半ばのアメリカ南部。奴隷制が横行していた時代です。ドイツからやってきた歯科医のキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は、今では賞金稼ぎ。次のターゲットの顔を知らないため、手荒い方法で相手の顔を知る奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)を買取ります。奴隷制に嫌悪感を持つシュルツはジャンゴをパートナーとして尊重。ジャンゴに銃の使い方を教え、やがてはシュルツの得難いパートナーとなります。実はジャンゴには離れ離れになった妻ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)がおり、必ず連れ戻そうと決心していました。妻のドイツ系の名前から故国の神話を思い出したシュルツは、ジャンゴに協力。ブルームヒルダは、今は非道であると有名なカルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)の農場にいると、突き止めます。
冒頭で「ジャンゴ〜♪」のメロディと共に、懐かしい感じのタイトル風景が出てきて、一気に心が鷲掴み状態。これはフランコ・ネロ主演の「続・荒野の用心棒」で流れていたメロディです。これ以降、奴隷制批判、賞金稼ぎの様子、一途にお互いを思うジャンゴとブルームヒルダの愛を描く中、飄々と泳ぐシュルツの、心の変遷が描かれます。
とにかく筋が面白い!先が読めないんです。ずーと、どうなるのか目が離せない。その間に登場人物たちのキャラをくっきり浮かび上がらせ、如何に奴隷が家畜以下に扱われていたか、白人の蛮行の限りを丹念に描きます。当然見ている方は嫌悪感と怒りがマックス湧きます。
私が特に印象強かったのは、心身を陵辱される黒人たちの様子より、キャンディ家の狡猾な執事スティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)や、キャンディの愛妾のような存在の美しい黒人奴隷。同じ黒人を見下し、白人と同じ立場になったように、奴隷の虐待を面白がったり無関心な様子が、本当に怖い。マンディゴと呼ばれる格闘用奴隷(闘犬の奴隷版のようなもの)が、相手に対して一瞬の情けを見せるのとは対照的です。このマンディンゴたちは、相手の奴隷を殺さなければ、自分が殺されるのです。これらは、白人がどうの黒人がどうのと言うより、人間はその時代の価値観の擦り込みで、これ程までに冷酷で残酷になれるのかと、戦慄する思いです。
オスカーの時、ドイツからきたリポーターが、是非この作品に作品賞を取って欲しいと言っていて謎でしたが、さもありなん。白人は全部悪い奴ばっかりで、「良い白人」はシュルツだけ。ナチスは映画に描かれる事が多く、歴史を背景にした作品の時は、必ず悪者のドイツ人ですから、今回の役どころは、国を挙げて喜んで当然ですね。「イングロリアス・バスターズ」でナチス将校役でオスカーを取ったヴァルツが、今回も賞をゲットなのはそういった縁を感じます。曲者ですが、ここ一番に非情になれず、良心の葛藤を見せるシュルツを、ヴァルツは善き人に感じさせる好演です。
ジェイミーはとってもカッコイイ!黒人が西部劇の主役は見た記憶がないですが、とてもはまっていて、さすがです。ケリーも美しさより愛らしさを強調して良かったです。レオは冷酷非道なキャンディを、嬉々としてやっている感じが、とっても素敵。元々演技は上手いのですから、主役に拘らず癖のある脇役でこれからも演じて欲しいです。って、休養するのか。ジャクソンは本当に憎たらしくて、こんな彼は見た事がなかったので、新鮮でした。でもこの人たち、これほど演じてもオスカーにはノミネートされなかったんですね。やっぱ白人を非道に描きすぎたから?タラの監督賞もノミニーなかったしなぁ。
マンディンゴの場面で、キャンディの賭け相手で元祖ジャンゴのフランコ・ネロが出ています。これは新旧ジャンゴが会話する場面。私はネロを劇場で観たのは、「キャメロット」のランスロットしかないので、むさいマカロニウェタンの彼より、このように紳士的な方が好きです。お年を召してもハンサム!
タラお得意の無駄話は、今回はKKKを思わす場面で出てきます。いつもより短め。実に納得出来る会話で面白かったです。超面白い娯楽作で、スケールのでっかい作品。タラの人間のスケールも実は大きいのかも?とまで感じて、私は彼の作品で一番好きです。早くも今年のNO1候補です。
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