ケイケイの映画日記
目次過去未来


2012年07月10日(火) 「崖っぷちの男」




売れっ子サム・ワーシントンがホテルの上層階:「崖っぷち」に立ち、何かが始まる作品、とだけ理解して見に行きました。ほんとに何にも知らずに観たのが良かったのか、とっても面白かった!観ながら、ちょっとおかしいなぁ〜と思うところもありましたが、それ以上にハラハラしたので問題なし。監督はアスガー・レス。

マンハッタンの高級ホテル。ニック・キャシディ(サム・ワーシントン)と言う青年が21階に宿泊します。キャシディは窓枠を乗り越え縁に立ち、今から自殺すると予告します。群衆が騒ぎだし、警察がキャシディの説得に到着。キャシディは交渉人に、前回の仕事で説得に失敗し自殺者を出してしまったマーサー(エリザベス・バンクス)を指名します。

あらすじに書いたところまでが冒頭です。以降段々とキャシディの背景が解ってきます。彼は無実を訴えながらも刑務所に収監され、裁判で25年の実刑が降りたばかりだと回想されます。刑務所の中からどうやってマンハッタンの21階までたどり着いたか?が、さぁお立ち会い!な訳でね、これ以降の見せ方が大変面白いです。計画が結構杜撰なんですけど、それを忘れさせてくれます。

ちょっとだけヒントを書くと、キャシディの自殺は狂言なんです(これはすぐわかる)「崖っぷち」を常に中心に置くも、同時進行に別のお話を進みます。これがあなた、まるで「ミッション・インポッシブル」@素人さん的シーンが続々出てきて、ハラハラドキドキ。どちらかが行き詰まると、どちらかが変化するシーソーのような演出が楽しめます。

何故このような事に?も、段々種明かしされるので御心配なく。最初胡散臭いと感じた人はやはり胡散臭く、この喧嘩は狂言だも直感でわかります。多分私の勘が良いと言うより、匂わすのが上手いのでしょう。ハラハラだけではなく、命懸けの家族の絆、男性社会で浮いてしまう女性刑事(マーサー)の苦悩も、100分にきちんと描き込まれており、娯楽作としてかなり優秀だと思いました。

下衆な根性丸出しのマスコミ、人の不幸は蜜の味の群衆を、味方に引き入れたキャシディの手腕はお見事。ラストのいい仕事してくれる「あの人」は、庶民の代弁者だものね。悪い奴は悪いまま、中途半端な悪い奴は改心、そして善人は誇りを取り戻す姿は、単純明快ながら爽やかで痛快です。

何に出ても同じに見えるサムは、大作よりこの手のセンター前ヒット的作品の方が個性が生きる感じ。キャシディの行動の成否はマーサーの言動にかかっていたのですが、キャシディを信じるのか否かの揺れ動く心を、バンクスが好演していました。地味だけど他に良かったのはエド・バーンズ(いつ改名したの?エドワード表記だったのに)。最初は長いものには巻かれろ方式で、マーサーを陰で茶化していましたが、彼女の仕事に対する真摯な様子にほだされ、仕事し易いように陰で支える姿がグッド。警察に関わらず、職場にはこのような人がいるかどうかが、仕事し易い職場かどうかの決めてだと思います。

娯楽作として充分及第点以上。梅雨の鬱陶しい中、爽快な気分になれます。拾い物でした。


ケイケイ |MAILHomePage