ケイケイの映画日記
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2012年03月07日(水) |
「ヒューゴの不思議な発明」(3D字幕) |
実は先週の木曜日、映画の日に観ています。レセプトの時期と重なり連続勤務が続いてため、なかなか感想を書く時間がありませんでした。でもそれ以上に、出来の良い作品だとは思いつつ、特別心が動くこともなく、書くのが遅くなった次第です。
1930年のパリ。亡き父(ジュード・ロウ)の残した壊れた機械人形とと共に、駅の時計台の中で暮らす孤児のヒューゴ(エイサ・バターフィールド)。ヒューゴは駅の時計の整備をしながら、機械人形を修理し動かすことを生き甲斐にしていました。足らない部品を調達するため、度々おもちゃ屋から部品を盗んでいたのを、主人のパパ・ジョルジュ(ベン・キングスレー)に見つかり、咎められます。機械人形の存在を知ると、ジョルジュは顔色を変え、ヒューゴに怒りさえ向けます。あきらめないヒューゴは、ジョルジュの養女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)と知り合い、協力して機械人形の修理に励むのですが・・・。
事前に全く知らなかったのですが、パパ・ジョルジュの役は実在の人物で、特撮映画で活躍したジョルジュ・メリエスと言う映画監督です。彼を通して、映画への愛を描いています。メリエスは戦前は人気の監督でしたが、戦争で現実の厳しさを嫌というほど知った観客には、彼の作るファンタジックな娯楽作は、絵空事に感じたのでしょう、人気は急降下。不遇のまま、おもちゃ屋の店主として、ひっそりと暮らしていました。
そのメリエスに敬意を払った作品です。3D作品としたのも、メリエスの映画の原点は「見世物」としての娯楽です。映画に新たな付加価値をつけたのが、昨今の3Dブームな訳で、その点を踏まえたものだったのですね。メリエスの特撮場面の再現はとても楽しく、今のCGやVFXとは比べ物にならない稚拙な方法なのですが、しかし映画への愛を非常に感じるものでした。私的にはここらのシーンが一番好きでした。
なのでファンタジックはお子様もの、と言う予想は冒頭のアスレチックのような時計台の中を行き交うヒューゴを描くくらいで終わり、後は子供にもわかり易い展開で、喪失と再生、希望と夢が現実的に描かれます。
全然悪くないんですよ。亡き父を思うヒューゴの気持ち、封印していた苦い記憶との葛藤に苦しむパパ・ジョルジュなど、丁寧に描いていたと思います。映像も綺麗。スコセッシのメリエスに対する敬意も充分感じます。ただ私は、それほど面白くなかったんだなぁ。何故なんだろう?
私が一番印象に残ったのは、サシャ・バロン・コーエン演ずる鉄道公安官。花売り娘(と言うには年食い過ぎているエミリィ・モーティマー)が好きなのに、告白できない彼。ある日勇気を出して声をかけようとすると、義足が外れます。義足の事で卑屈気味になっている彼は、告白を止めてしまいます。その後、悪役扱いだった彼の過去が明るみに出ると、彼に対する見方は一変。彼こそ、メリエスの作品で夢をもらい、戦後は夢を見ることを止めてしまった市井の人々の象徴だったのだと思います。
楽屋裏を楽しく見せてくれたトリュフォーの「アメリカの夜」は大好きなんですけどねぇ。良い作品だと思うけど、私には心で感じる作品ではなく、頭で楽しむ作品だったのが、書く事がない作品にしてしまったようです。ちょっと残念。
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