ケイケイの映画日記
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2011年03月06日(日) 「悪魔を見た」





イ・ビョンホン一世一代のアイドル映画
。いや多分彼のキャリアからしたら、もっといい作品には巡り合えると思うけど、この作品のビョンホンは、猟奇場面と対を張るほどカッコいいの。一世一代はちょっと大げさですが、こんな鬼畜映画でアイドルしてた彼に敬意を表して、書いておきます。監督はキム・ジウン。

国家情報員捜査官スヒョン(イ・ビョンホン)の婚約者が殺され、バラバラ死体となって発見されます。重犯罪課の刑事だった婚約者の父親の協力によって、捜査線上に浮かんだのは4人。復讐を誓うスヒョンは、犯人は塾の送迎車の運転手ギョンチョル(チェ・ミンシク)であることを突き止めます。

冒頭から鬼畜猟奇場面が炸裂。以降も断続的に18禁の血みどろで凄惨な場面がこれでもかと繰り返されます。この手の作品は普段は男性が多いのですが、この作品に限りビョンホンお目当ての女性ファンが多かったです。こりゃ何人も退場するわと思っていたのですが、誰もせず。この手を見慣れた私と違い、韓流マダム達には相当きつかったはず。偉いわ、私見直しちゃった。

それもそのはず。この作品のビョンホンは素晴らしくカッコいい!国家のエリートが、愛する婚約者のため地位も名誉も捨て、復讐の鬼と化すわけです。愛のために地獄に堕ちてもいいわけね。鬼畜映画のくせに純愛まっしぐら。ビョンホンの魅力の一つは、身体能力が優れていること。なので身のこなしが鮮やかで、アクション場面にキレがあります。数多い韓流スターの中で、彼が頭一つ抜けているのは、このおかげだと思います。色々使える俳優だと思います。

演技の方も、婚約者の訃報に号泣せず、一筋涙を垂らしながら嗚咽するのが、また決まってね。男が愛する人を思って咽び泣くって素敵よね(←完全に魅入られております)。ギョンチョルも殺人を繰り返す男なんですから、相当腕は立つはずですが、スヒョンにかかると赤子の手をひねるが如く、完敗です。強いはずの敵役のギョンチョルが愚鈍にさえ見えるのも、アイドル映画の鉄則かと。不眠不休で食事も取らず、それであれだけ強いだなんて、あり得ませんが、ビョンホンが素敵だったので不問。

お話は至ってシンプル。色々付加価値を求めて描いていた「冷たい熱帯魚」の方が、手法としては洗練されていると思いますが、こちらの方は婚約者を殺された男の復讐劇なんですから、観ていてとても解りやすい。そして殺人鬼がどうしてこうなったのかなど一切描かかず、モンスターとしてだけ突起させているのが上手いです。なので、一度捕まえたギョンチョルを殺さず、何度もキャッチ&リリースさせて、「段々残酷になっていくぞ・・・」と、一つ一つ痛手を負わせるスヒョンに共感というか、同調出来るのです。被害者が皆、清楚な娘さんだったのも、単純に観客の怒りを引き出させたと思います。

このまま復讐が遂げられるのかなぁと思っていたら、ちゃんとスヒョンも返り血を浴びます。この返り血が絶望的なのも、理不尽だけど復讐の連鎖を描いていたと思います。

私はこの返り血の後のスヒョンの行動がとっても好き。男ならああでなきゃ(きっぱり)。この辺が多分日本人と韓国人の感覚が違うところじゃないかと思います。ただし最後の始末のつけ方は、もっと残忍な方が良かったと思います(←鬼畜)。

偉いのはチェ・ミンシク。ビョンホンありきの制作過程で、この内容で誰が殺人鬼をやるかで、作品のグレードはぐ〜んと違うはず。俳優として気概があるというか、何も考えていないというか、こんな役が好きなだけとか(多分全部)で、ビョンホンを食う勢いで好演。それ以上に私は、ミンシク相手に食われなかったビョンホンの事、見直しましたが。

感傷的なラストも、ビョンホンには似合います。「悪魔を見た」のは、彼自身の中だったわけですね。それにしても韓国の警察間抜けすぎ。確信犯的に描いていたので、国民感情は相当なもんなんでしょう。それを題材の映画が観たいな。

猟奇場面は味の素にするには強烈だし、色々突っ込みもあるんですが、私は途中からアイドル映画として観たので、それなりに面白く観られました。ビョンホンファンの方には是非観て欲しいけど、かなり強烈なので、熟考をお願いします。


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