ケイケイの映画日記
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2009年09月09日(水) |
「サブウェイ123 激突」 |
うんうん、面白かった!元作はジョセフ・サージェントの傑作アクション「サブウェイ・パニック」を、トニー・スコット(私は「トゥルー・ロマンス」が一番好き♪)がリメイクした作品。元作はテレビ放送時に観ておりますが、ほとんど忘れております。ツッコミどころは満載なれど、アクション娯楽作は、それを言っちゃぁおしまいよ。私的には満足出来る作品でした。
NY地下鉄運行指令室で勤務中のバーガー(デンゼル・ワシントン)。運行中急停車した、1時23分発の列車の異変に気付きます。運転手に無線で連絡するも、対応したのは見知らぬ男ライダー(ジョン・トラボルタ)。彼らは他の車両は切り離しており、一号車だけ19名の乗客とともに、ライダー以下四人の男に乗っ取られていました。市長(ジェームズ・ガンドルフィーニ)に身代金1000万ドルを用意しろというライダー。時間は一時間、交渉人にはバーガーを指名、一分遅れるごとに一人ずと殺すと宣言します。
トニー・スコット作品の特徴というと、あの目まぐるしく変わるカット割り。これが上手くいけばスタイリッシュ、悪い場合は、チャカチャカ落ち着きがなく、ええい!鬱陶しい!となります。嬉しいことに今回は前者でした。カーアクションの際のローアングルのショットなど、臨場感満点で、ほ〜と感心。ためるところはためてじっくり、スピードが必要な場面はよりスピードアップと、今回は映像派アクション映画監督の、トニー・スコットの面目躍如でした。
現金輸送にするときは、道路を閉鎖したりサイレン鳴らしたらは?それより後半に使った交通機関、あれを最初から使えば?バーガーの懺悔、あれは不問って、それでいいのか?などなど、大きく小さく、ツッコミも多数ありでしたが、それを超える演出があったので、まぁいいかな?
現金輸送の場合は、最初からアレを使っちゃうと、カ―アクションできませんのでね、スリリングさが不足するかと。最初に結果ありきですが、ドキドキして観たから、これで結構でございます。
バーガーの告白の件もね、これはもう演出というより、キャスティングで勝ったも同然です。彼の罪の重さより、告白の時のバーガーの涙、自分の立場より縁も所縁もない人を優先したこと、そしてその使い道。全てがバーガーの人柄を表わしていました。何より夫の危機が迫っている時のバーガーの妻との会話がいいです。「帰りには絶対牛乳を買ってきてよ」。この妻の言葉は、この場合「あなたを信じているわ」とイコールです。何気ない夫婦の日常の会話で、夫婦の年輪と絆を表わしていました。終わってみれば、ツッコミよりこれらの事柄の方が、強い印象を残すのです。
今回は刑事でもない普通の人ということで、「アメリカン・ギャングスター」の絶品の男っぷりは期待していませんでしたが、その代わり仕事では誠実勤勉、家庭では温厚な良き家庭人というデンゼルのイメージが、今回のバーガー役に生かされており、演出効果が倍増されておりました。リドリー&トニー兄弟は、どうやら二人ともデンゼルファンらしく、今回も敵役のトラボルタの口から、「背が高くてハンサムだ」と、デンゼルのことを言わせており、惚れ込みようは相当なもの。監督と俳優の相性も大事だということがわかります。
これはトラボルタにも言えます。早口でまくしたて、首にはタトゥー、革ジャンを着た風体は強面のチンピラのライダーですが、要所要所で、インテリで信仰心の厚い様子が伺えます。どんな役でも器用こなすトラボルタですが、一番私が好きな彼は、「シーズ・ソー・ラブリー」の、映画史に残るような可哀そうな夫役の彼です。なので観客は、ライダーの背後に、悪徳だけではない何かがあるかもと、深追いしつつ観てしまいます。それが作品への集中力を高め、一層楽しめる要因になったと思います。やっぱりアクション作の悪役は、チャーミングでなきゃね。
無線で会話するうち、段々打ち解けていく二人の様子も上手く描けていました。あの犬の話はいらなかったけどなぁ。
他に一点いただけなかったのは、車両の中でGFとチャットする少年の場面。当然犯人逮捕に一役買うかと思っていたら、全く機能していませんでした。元作からは30年以上経っており、脚本に変化をもたらす意味だったんでしょうが、もうちょっと上手く使ってほしかったです。
最後までスリリングな展開で、ドキドキが続きます。元作のウォルター・マッソーVSロバート・ショウの脚本から、上手くキャスティングに合った内容に変更してありました。リメイクとしては、十分及第点をあげてもいいかと思います。
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