ケイケイの映画日記
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2008年11月30日(日) |
「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」 |
わー、面白かった!でももっと声出して笑いたかったなぁ。いや面白さが足りなかったんじゃなくて、場内誰も笑わないの。一人で大声出して笑っていたら、バカみたいでしょ?それだけが残念です。おバカ映画の様相を呈していながら、映画好きには堪らない風刺の数々で、制作・出演も兼ねるベン・スティラー監督の才人ぶりも堪能出来ます。
鳴りもの入りで製作されている戦争映画の「トロピック・サンダー」。この作品で起死回生を狙う落ち目のアクション俳優ダグ(ベン・スティラー)、お下劣な印象が濃いヤク中コメディ俳優ジェフ(ジャック・ブラック)、オスカー受賞の演技派だけど、白人なのに皮膚を黒く整形してまで黒人役になりきるOG俳優ラザラス(ロバート・ダウニー・Jr)など、出演者は超個性的で、イギリス人監督(スティーブ・クーガン)は、まとめるのに四苦八苦。そこへ原作者のベトナム戦争経験者のフォーリーヴ(ニック・ノルティ)は、ある事を監督にそそのかします。ヘリで到着した場所を何も知らずロケ地だと思い込む出演者ですが、そこは麻薬組織が暗躍する、本物の戦場でした。
最初のフェイクの予告編からして大笑いしました。ジャック・ブラックパートは、エディ・マーフィーの「星の王子NYに行く」のパロディだぁ、とか、俳優の名前がアルパ・チーノ(ダニー・マクブライト)だとか、もうとにかくこの辺で期待が膨らむ私。
次の戦場場面では、腸が出まくるシーンでこられ切れず声を出して笑ってしまいました。いや、なんかこう書くと非常に誤解されそうなんですが、あの大げさなジェイ・バルチェルの演技は、絶対笑わせようと思ってのはず。これ「プライベート・ライアン」のこと、コケにしてないか?コレ以降も「プラトーン」、「地獄の黙示録」などなど、色々な作品のパロディが満載なんで、映画好きなら、これはあれだとニヤニヤしながら観る事必死です。 「地獄のヒーロー」も入ってた気がするけどなぁ。一時夫婦ではまって、新作が出るとレンタルで観たもんです。
単に映画のパロディだけではなく、本業は俳優であるスティラーは、日頃感じているだろうハリウッドの体質も、風刺を利かせながら面白おかしく見せてくれます。
某超大物俳優(多分もう名前が割れてるよなぁ)が演じる、出演者の生死よりもお金が大事な超拝金主義のプロデューサー。ゲイ映画が軒並み高評価を得るハリウッドだけど、現実にはゲイだと人気に陰りが出るのでカミングアウトは出来ない。白人俳優に黒人役を取られて激怒する黒人俳優。確かハリウッドでは協定があって、映画やドラマでグループで主役だと、必ず黒人を入れなきゃいけない規定があったはず。その中の主役級の黒人を白人が演じ、端役である自分の役には本物の黒人だなんて、そりゃ頭に来ますよね。ラザラスが語るオスカーを取る定義、ブルーレイが何故DVDレコーダーに勝ったのか?のお話など、為になる雑学もふんだんです。
その白人俳優ラザラスはアメリカ人ではなくオーストラリア出身で、ラッセル・クロウ、二コール・キッドマンを先頭に、オスカー受賞の花形スター俳優はOG出身者が大挙で、今彼らがいなくなったらハリウッドは成り立たず、そういう部分も思い起こさせました。エージェント(マシュー・マコノヒー)と俳優のしたたかな駆け引きも見せながら、最後には絆の深さを感じさせるのは、これはスティラーが自分のエージェントに感謝しているからかしら?
こうやって羅列していると、如何にも真面目に作ってる感じがするのですが、ふ〜ん・・・と感慨に浸っていると、必ずドカンとおバカシーンが。この間合いが絶妙で、なかなかの才知が見え隠れするのに、でもおバカ第一を貫く作りは、コメディ作りへのプライドを感じます。
戦争映画なんで、そういうシーンもあるんですが、これがなかなかに見応えのあるアクションシーンで、お金の掛け方も充分。手抜きはありません。
スティラーは好きでも嫌いでもなかったけど、今回の作品で大好きに。ロバートも役者バカ一代という役柄で、完全復活だなと感じさせます。ロバートの代わりにヤクチュウ役のブラックですが、観た瞬間「これこそ正しい金髪豚野郎・・・」と思ったのは、私だけではありますまい。いつもの暑苦しいブラックですけど、今回それ以上か同等なくらい、周りのメンツが濃かったので、濃度が薄まってちょうど良かったです。他の軍人役マクブライトとバルチェルも、素直で初々しく演じていてい、ベテラン三人に決して引けを取っていませんでした。
他にもおぉ〜〜〜!というスター俳優が大挙ゲストで出ています。スティラーって意外と人徳があるんだね。映画を時々観る人よりも、映画好きや映画通を自認する人の方が、「より」楽しめる作品かと思います。
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