ケイケイの映画日記
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2008年11月19日(水) |
「ハッピーフライト」 |
先週の土曜日に観てきました。新しい仕事先に初出勤で緊張しまくった後、どわわわわ〜んと疲れが出て、映画館で寝てしまうんじゃないかと危惧していましたが、中々面白かったので杞憂に終わりました。確かに予定調和だし小粒な作品ですが、今私、とっても精神的に大変なんでね、この手の安定したプログラムピクチャー的コメディは、すごーくありがたいです。監督は「ウォーターボーイズ」などの矢口史靖。だから安心して観に行ったんです。
飛行機に乗り込む乗客の安全を守る、たくさんの人々。操縦士、CAは元より、グランドスタッフ、整備士、果ては管制塔や航空会社の管理センターなどまで見せ、グランドホテル形式で軽やかにコメディタッチでその苦労を見せる群像劇。
最初綾瀬はるか扮する新人CAの失敗が強調されたので、懐かしの「スチュワーデス物語」風になるのかと思いきや、飛行機が飛ぶことに携わる全部の人を平等に描いています。
操縦士・CA・グランドスタッフ・整備士・管制塔・航空会社の管理センター全てに、ベテラン・中堅・新人を配置し、仕事の厳しさと忠誠心、一生懸命さが報われる瞬間ややりがいなどを描き、一見華やかな空港を舞台にしていますが、意外ときちんとした職業映画だと思いました。グランドスタッフの田畑智子が、一瞬飛行機の搭乗口に足をかけてすぐ引っ込ますシーンや、若い整備士盛岡龍が、鍵のかかった自分の工具箱からスパナがなくなったため、必死になって全員の整備士で彼のスパナを探すシーンなど、随所に航空業界の掟を描いているのが印象的です。管制塔が飛行に深く関わるのは周知のことですが、それ以外のこういった縁の下の力持ち的存在があってこそ、安全に飛行機は飛ぶのだと、改めて感じました。
他にも機長と副操縦士は、万が一に食中毒に備えて、同じお弁当は食べないなど、アメリカの大統領と副大統領は同じ飛行機に乗らないのと同じなんだと、妙に感心。民間レベルでこういう危機管理が充実しているって、知りませんでした。
転んでまでお客様の荷物を追いかけた田畑智子と、岸部一徳扮する全然パソコン音痴で、喫煙ルームで煙草吸いまくるアナクロ人間の管理センターの上司が、パソコンが落雷でダウンしてしまうと、水を得た魚のように力を発揮しまくるのが楽しかったです。笑って観てましたが、結局どんなにパソコンで管理しようと、いざとなったら自分の力以上のこともやってのけてしまう、人間の力の方がやっぱり上なんだわと、しみじみ感じました。
と、このように笑いながらかる〜く観ていた割には、色んな教訓もさりげなく心に入ってくる、上級テクニックの作りでした。
ただ一点、私が物足らなかったのは、部下の尻拭いをする上司全て、叱責と自分の処理能力を観て学べとしか描いていなかったことです。確かにそこには温かい感情も観て取れるのですが、アメリカ映画ならこう言う時、必ず直接悩んでいる相手に対し、「あなたなら出来るわ」「君なら出来る」と言う言葉が出てきます。私はこの言葉が大好きなのね。多くの人達から選ばれたあなたなんですよ、だからきっとあたなには出来るはず、という先輩からの言葉は、仕事ができなくて落ち込んでいる新人には、涙が出るほど嬉しいはず。この言葉がなかったのが、「言葉にせずとも感じ取れ」という、如何にも日本的な気質だなぁとも思いました。私はこの点に関しては、アメリカ式が好きです。
昔ゲームソフトで「パラッパラッパー」というゲームがありまして、小学生だった上の息子たちが喜々としてやっているのを、苦々しく見ていた私でありますが、このパラッパラッパー君が様々な場面で難関が出てくると、必ず「I can do it!」=「僕なら出来るさ!」と言うのですね。もう私はこの子が大好きになりまして、息子たちに「あんたら、このポジティブさを学ぶんやで!」と言ったもんです。
やる気には結果がついてくるもんですよ(と思いたい)。私の後に勤めて下さる人は、医療業界は初めてだとか。引き継ぎは金曜日から四日間ですが、「あなたなら出来ますよ」と、毎日言うつもりです。
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