ケイケイの映画日記
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2008年10月19日(日) 「僕らのミライへ逆回転」




えー、14日に観たのですが、諸々忙しくて書くのが遅れてしまいました。前評判も高く期待値マックスで観たため、ちょっと期待は割りましたが、充分面白かったです。監督は私の大好きなミシェル・ゴンドリー。

DVD全盛の時代に、取り残されたようにビデオをレンタルするフレッチャー(ダニー・グローヴァー)のビデオ店。しかし店員のマイク(モス・デフ)は、そんな時代遅れの店とフレッチャーを愛しています。街にも開発の波が押し寄せ、フレッチャーの店は立ち退きの危機に。そんな大変な時に、マイクの友人ジェリー(ジャック・ブラック)が、発電所に忍び込んだ折に強力な磁気を浴びてしまい、店のビデオを全部だめにしてしまいます。困った二人は、往年の名作の簡単なリメイク作品を作り、レンタルすることに。しかし苦肉の策であったはずが、街で大評判となるのです。

予告編でお馴染みになった、リメイク場面がすんごく面白い!これはもう、映画好きなら大爆笑の連続です。「ゴースト・バスターズ」を初め、ハリウッド王道のヒット娯楽作ばかりなのも、とっても気が効いています。「ラッシュ・アワー2」の時は、ジャッキー役に扮したジャック・ブラックが、目張りならぬ、一重目にしてたんですよぉ。せっかくジャッキーは○形で二重にしたのにね〜、西洋人にはどっちでも同じだったみたい。

無手勝流の学芸会並だった撮影風景ですが、素人芸ながら、段々と撮影の腕が磨かれて行く様子が本当に楽しい。あの手この手で知恵を絞り、少ない予算で妥協せず、如何に良い映画を作るかに二人が拘り始める様子は、きっと映画作りの先達方もこうだったのだろうと、爆笑しながら、胸が熱くもなってきます。

この街はアメリカでは底辺なのでしょう。住民の多くは黒人だったり、白人でもトレーラー暮らしのジェリーのようなプアホワイトなのでしょう。役所の人が治安の良い、時代に合った街にしようとするのは、住人のことを思うからだとは、良くわかります。でも住人はそのことを望んでいるのかしら?

それを表していたのが、ライバル店の店長さんかも。アクションとコメディで埋め尽くされた店内にはビデオはなく、DVDばっかり。DVD機器もないような人たちのため、拘りの品揃えを施すフレッチャー側にしたら、このライバル店は裏切り者でしょう。しかしマイクに愛想よく接っし、フレッチャーは元気かと聞く店長は、フレッチャーやマイクが羨ましいのではないでしょうか?生活のため信条を曲げ、役所の要求を必死で呑んでいるのでしょうね。

「ドライビング・ミスデイジー」のリメイク作を作っている時に感じる、何気なく悪気のない黒人への差別観も、上記の事と繋がっています。『恵まれた私たちが、恵まれないあなた方底辺の人々のため、一生懸命考えてあげますよ』。こう言われて、嬉しい人なんかいませんよね。フレッチャーには立ち退きの後の住居は用意されます。しかしそこではビデオ屋の営業は無理。彼の生きがいやプライドは?彼の店でレンタルするのを楽しみにしている、街の人たちの気持ちは?おバカ映画の様相に爆笑しつつ、私がずっと心に感じ続けていたのは、このすれ違いの善意です。

そのすれ違いを見事に埋めてくれたのが、ラストシーンでした。今度はリメイク作ではなく、自分たちの伝説のヒーローを描いたオリジナル作品というおまけ付きです。憐みの気持ちを吹っ飛ばすのには、やっぱりプライドを見せなくちゃ、ということで。このシーンは大昔、夏休みの小学校の校庭で観た、映画鑑賞会を思い起こさせます。例えスクリーンは白いシーツだって、みんなで観て感動を分かち合うという、劇場での鑑賞の原点を観るようでした。

ジャック・ブラックは私は好きでも嫌いでもないですが、今回はファンには堪らない「いつものジャック」でした。今回私のハートを鷲掴みは、モス・デフ君の方。私の好きな優柔不断で気弱で誠実な好青年ぶりが、とっても素敵でした。土壇場で見せる気骨や、好きな女の子のキスも出来ない奥手ぶりなども、可愛かったわー。ミア・ファローが近所の熟年女性役で出演でしたが、少女っぽさを振りまく様子がとっても愛らしくて素敵でした。

私は監督にも女優にも脚本家にも、成りたいと思ったことはないけれど、こんな形では出演してみたいなぁと思いました。そう言えば、高校の時にクラスで映画を作ったんだっけ。タイトルは「あさひが丘のバイオニック・政子」。当時放送していた、「あさひが丘の大統領」と「バイオニック・ジェミー」と「北条政子」をくっつけたモノです。上映会開いたら、著作権違反だって、シガニー・ウィーバーが来るかしら?


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