ケイケイの映画日記
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ヤク中上がりのロバート・ダウニー・ジュニアが、現役及び永遠の中坊に送る(ということは、全世代の男向けだ!)夢とロマンとオタク心満載の傑作。グヴィネス・パルトロウ演じる秘書ペッパーのような、「ほんとに・・・。私がいないとどーしよーもないんだから、この人は・・・」とガミガミ言いつつ、それを受け入れている自分が好きな女の人(含む私)もどうぞ。同じアメコミ原作の「ダークナイト」、本当に良かったんですよ。私は今でも素晴らしいと思っていますが、でもやっぱ私、こっちの方が好きかも!監督はジョン・ファブロー。
天才エンジニアのトニー・スターク(ロバート・ダウニー・ジュニア)は、巨大軍事企業のスターク社の社長で、あらゆる戦争用の武器を作っています。新型機械の売り込みにアフガニスタンに赴きますが、そこで現地のテロリストの拉致されます。同じく捕虜のインセン(ジョン・トーブ)によって命を助けられたトニーですが、胸には磁気を集める装置が組み入れられてしまいます。テロリストから最終兵器を作る事を命じられたストークは、インセンを助手に、彼らの目を盗みつつ、脱出のためのロボットスーツを作り上げます。
後から考えりゃ、何をこんなまだるっこしいことを、と思うんですが、そんなもんぶっ飛ばしたいほど、面白い!まずトニーのキャラがとってもいいです。いい歳の大金持ちの中年なのに、妻も子供も持たず、女のお尻ばっかり追いかけているチャラ男です。大量に武器を売り、戦争に使われていることに良心の呵責を感じる事も全くなく、まさに米国イチの無責任男ぶりなんですが、その姿はお茶目で、絶妙にチャーミングです。
アフガンで自分の作った武器で、たくさんの人々が死ぬのを目の当たりにしたトニーは、命からがらアメリカに帰国後、一転して今度は、一切の武器販売を止めると言い出します。もうね、大企業の社長とあろうものが、屈託なくそんなこと言っていいんかい?という問題です。それほどショックだったんですね。トニーの性格は要約すると、「こども」なのです。トニーの良い意味で大人になれない少年っぽさが現れています。
少年ぽさと言えば、ロボットスーツ!男の子は小さい時から、アニメやらおもちゃやらで、ロボットはお友達のようなもんです。自分で操作したいな、いや中に入りたいな、自在に設計したいなと、超合金のおもちゃのロボットを手に、そんな夢を抱いた人も多いでしょう。それを目の当たりにするんですから、そりゃーもう心ワクワク胸いっぱいですよ。
スーツは1号目は廃材中心なので、垢抜けなくてゴツゴツしているんですが、これはこれで味があるのだね。「独り鉄人21号」の趣です。2号目3号目と次第に垢抜けてゆき、最終的にはクールで華やかなカッコ良さです。練習場面がまた楽しい!武道やスポーツの練習に励むストイックさはなく、人工知能やロボットを相棒に、ここでもひたすらオタッキーな熱中ぶりが、微笑ましくも笑いを誘います。なので空を飛べる様になった時は、やったね!と、こっちまで嬉しくなります。
会社の重役のステイン(ジェフ・ブリッジス)の狡猾で如才ない対応、友人の軍少佐ローディ(テレンス・ハワード)の、誠実で温厚な大人ぶりも、終わってみればトニーの愛すべき大人になれないオタッキーぶりの、引き立て役だったかも?ロボットスーツは戦争終結に活躍すんのかと思いきや、派手になる一方の画とは対照的に、物語は内輪揉めっぽくどんどん矮小化へ。スケールが大きいんだか小さいんだかわかんないのですが、この反比例も面白かったです。結局オタクに世界平和の使途は、似合わないってか?
初めはアメコミヒーローに、ロバートみたいなオジサン使って、どーすんだよ?と思っていましたが、これは酸いと甘いを噛み分けられず、酸いを甘いと思いこんだ(思いたかった)ロバートだから、こんなに味わい深く観られたと思います。ジャンキーの矯正施設で過ごした彼も、トニーといっしょで、ある意味地獄からの生還者でしょう。トニーの語る「生き残ったのには、意味がある」と言うセリフは、彼の口から出ると重みが違います。
華の少ない地味さを逆手に取ったグヴィネスも、とっても良かった!こんな手のかかる男に惚れたのが運の尽き、女として見られる事よりも、掛替えの無い母ちゃんのような存在に甘んじることは、彼女のプライドでもあるんでしょう。寝る相手になって飽きられるより、恋する人の傍に長くいたいと言ういじらしい女心に、私なんかぐっと来ました。ずっと地味だったので、一度だけ見せるシックで艶やかな姿は目に焼き付くほど美しかったです。
ラストの全く大人になれない(いや、なりたくないのか?)オチには、本当に大受けしました。いや〜、やっぱり男って可愛いわ。と素直に思わせてくれる作品です。昨今のヒーローものは、作品に厚みを増すためか、ヒーローの孤独感や葛藤を織り込んだものが多く、それはそれで良いのですが、この作品のように派手にドンパチやりながら、自分の正義感にぶれない主人公も、清々しくてやっぱりいいなぁと、心から感じました。
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